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2017年のSXSW(サウスバイサウスウエスト)で最高位にあたる審査員大賞を獲得した本作は、アセンシオが自身の経験をもとに16mmフィルムの拡張版であるスーパー16で撮影したスリラー。米ニューヨークのマンハッタンを舞台に、不法移民の女性ルシアナが直面する恐怖を描く。これが初来日となったアセンシオは「私には2つ夢がありまして、それは日本に来ることと、自分の映画を製作することでした。今日でその2つが叶うことになり、誠にうれしく思います」と笑顔で挨拶した。
本作を撮ることになったきっかけを「もともと女優でしたが、長年活動をしていても自分が望むような役が回ってこなかった。自分に合う役を演じるため、映画製作に踏み込みました。それに本作のストーリーは今までにないもので、作るに値すると思ったんです」と振り返るアセンシオ。演出について「前半はオーガニックな方法でアドリブも入れながら、私1人が現実世界の中に入り込んでカメラで追うという方法を取った。比較的楽な方法でした。後半はほかの役者を見るために自分の面倒を見る余裕がなくなっていき、バランスを取るのが難しかったです」と説明し、「自分が裸でうつぶせになっている状況で、撮り終わった瞬間からほかのスタッフに指示をしなければいなかったので、周りの人たちはどう感じているんだろうという思いが頭をよぎりました」と吐露する。女優としての自分を監督としてどう見たかと司会者に尋ねられると、「客観的に見るのが難しかったです。監督として冷酷に判断すべきなのか、がんばった自分を生かすように判断をすべきなのか……」と迷ったことを打ち明けた。
アセンシオは本作に自身の実体験を反映させたことに触れ「前半の部分は、私が学生ビザから就労ビザに移行する期間がモデルとなっています。後半で起きることも、そのままではないですが、新聞広告で見つけたアルバイトの内容が紹介されていたものとは違ったという体験がもとになっています」と述懐。記者に「なぜスリラーを選んだのか」と質問されると、「母親にもなぜラブコメにしなかったのかと問い詰められました(笑)。人を笑わせるのも大好きでそういった作品も大好きですが、それでもスリラーを選んだのは、正直な映画を作りたいと思ったからです。スリラーのほうが社会問題や個人的体験を映し出せるし、多くの方に観ていただけると思いました。観客には、主人公の抱える不安や孤独感に共感してほしいです」と答えた。そして影響源として、初期のロマン・ポランスキーやデヴィッド・リンチの作品を挙げた。
最後にアセンシオは「移民というのはときとしてひどく扱われることがあります。この映画に出てくる女性たちは、かつての私と同じように外国の言葉もわからずお金もなく、家族とも離ればなれです。でも心は皆同じで、チャンスをつかもうとしている。彼女たちがチャンスをどのようにつかんでいくか、そういった部分も観客に受け取っていただけたらうれしいです」とメッセージを伝えた。
「モースト・ビューティフル・アイランド」は、2019年1月12日より東京・新宿シネマカリテほか全国で順次公開。
※「モースト・ビューティフル・アイランド」はR15+指定作品
アナ・アセンシオの映画作品
リンク
- 「モースト・ビューティフル・アイランド」公式サイト
- 「モースト・ビューティフル・アイランド」予告編
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椿原 敦一郎 @teamokuyama
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