ロヒンギャ難民の悲劇から生まれた「マンタレイ」、タイ人監督が着想明かす

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第19回東京フィルメックスのコンペティションに出品された「マンタレイ」が、本日11月19日に東京・有楽町朝日ホールで上映。監督のプッティポン・アルンペンがQ&Aに出席した。

プッティポン・アルンペン

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「マンタレイ」

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1人の若い漁師が森の中で意識を失っている男を発見したことから物語が展開していく本作。人気歌手にちなみ「トンチャイ」と名付けられた言葉を話さない男と漁師が、奇妙な友情を築き共同生活を始めるさまが描かれる。タイ、フランス、中国の合作であり、「消失点」「孤島の葬列」の撮影監督を務めたアルンペンの長編監督デビュー作だ。第75回ヴェネツィア国際映画祭のオリゾンティ部門では最優秀作品賞を受賞した。

舞台となるのは、ロヒンギャ難民が多く溺死したミャンマーとの国境に位置するタイの漁村。アルンペンは「アイデンティティの差」に目を向け、ミャンマーのイスラム系少数民族として迫害を受けてきたロヒンギャを題材にしたと話す。「タイの入国拒否により、ロヒンギャの人々が海上で行方不明になった事件がありました。国籍、宗教の違いが悲劇を生む。そこからこの物語は生まれました」と着想を明かす。

プッティポン・アルンペン

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同じタイの作家であるアピチャッポン・ウィーラセタクンからの影響を指摘されると「彼の映画は昔から大好き。すべて観ており、尊敬しています」と公言。映画で多用される光のイメージについては、かつて旅したというミャンマーとタイの国境線となっているモエイ川でのエピソードに触れながら語る。「そこには自然の風景しかなく、国を隔てる線や建物はなく警備員もいません。川では3人の男の子が遊んでいました。2人はタイから、1人はミャンマーから。その瞬間、想像上の国境や、私たちを分かつ線はないんだと実感しました。その思いを映画的言語に落とし込んだ結果が、この作品であり光の使い方なのです」とコメント。

映画のタイトルにもなっているマンタレイに関する質問も飛んだ。ロヒンギャの人々が漂流し、亡くなったアンダマン海はダイビングスポットとしても有名な場所だという。監督自身も趣味だそうでアンダマン海を初めて泳いだときのことを述懐。そして「そのとき巨大なマンタレイに出会いました。自分のほうにゆっくりやって来て、頭上を泳いでいきました。未知なる生物なので恐ろしかったが、のちに彼らがフレンドリーであることを知りました。そういった思いがタイトルに反映されています」と明かした。

第19回東京フィルメックスは11月25日まで有楽町朝日ホール、東京・TOHOシネマズ 日比谷、有楽町スバル座で開催。

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読者の反応

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Naoya Sakagawa @sakagan

「タイ、フランス、中国の合作であり、「消失点」「孤島の葬列」の撮影監督を務めたアルンペンの長編監督デビュー作だ。第75回ヴェネツィア国際映画祭のオリゾンティ部門では最優秀作品賞を受賞した。」
https://t.co/tcl1edslU7

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