「
濱口が2015年に発表した「ハッピーアワー」は、兵庫・神戸を舞台に30代後半の女性4人とその周囲の男性たちの移ろいゆく日常を5時間17分という長尺で捉えた作品。即興演技ワークショップの一環で制作され、主演を務めた田中幸恵、菊池葉月、三原麻衣子、川村りらの4名は、第68回ロカルノ国際映画祭において最優秀女優賞を獲得している。
「『寝ても覚めても』公開記念 濱口竜介アーリー・ワークス Ryusuke Hamaguchi Early Works」として行われた上映には、東京藝術大学大学院映像研究科で濱口に教鞭を執っていた映画監督の黒沢が出席した。「ハッピーアワー」の特徴について、黒沢は「とても生々しく、日常とは違うが、ある種のリアルに起こっていることが積み重なっていく。しかし思い切ったフィクション、ひょっとするとファンタジーという最後が待ち受けている」とコメント。そして「そこに到達するための前段階としてゆっくりとしたリアリズムを重ねていく。ここ、という明確なところはないのですが、後半のあるときを境にレベルが違ってくる瞬間があって、それがものすごく驚きで感動的でした。素人を演技指導するのはとても難しい。その人たちに架空の人物を演じさせ、最終的にそんなことが起こるの?というフィクションにもっていくのは本当にすごかった」と称賛する。
リアルとフィクションの区別に関してその方法論を問われた濱口は、黒沢からの影響を明かす。「僕はどちらかというと日常寄りの人間だった。しかし黒沢さんのもとで2年間学んだことで、思いもよらないようなもの、まさかこんなものが出てくるなんて思わなかったというところにたどり着かなければ、映画を撮ってる甲斐がないという考えになったんです」と語る。さらに大学院時代を「黒沢さんの授業は講義とファミレスでお茶を飲みながら話すゼミの2つがありました。特にゼミでは、みんな黒沢さんのことが大好きで、作品や撮影方法について聞くことができた。黒沢さんも『あれはね……』と教えてくれ、とても親密な雰囲気でやっていましたね」と懐かしんだ。
さらに黒沢が濱口の学生時代について明かしていく。「本当に筆が立つ人で濱口の脚本はセリフが多くて読んでいて面白いんだけど、わからなかった。脚本だけ読むと本当に撮れるのか?と疑問を感じていました」と述懐。濱口が大学院の修了制作として監督した「PASSION」の脚本を読んだ際も同じことを思ったという。そして「しかし映画を観たら『こう撮る気だったのね。失礼いたしました』と反省した。それ以来、監督が撮るために書いた脚本に僕自身何も言わなくなった。撮り方もわかっていて書いているのだから、脚本の段階で色々言うのはやめた。それは濱口がそうだったから自分の考えが変わったんです。 変に人を惑わすところがあるし、才能があると思います」と続ける。これに濱口は「黒沢さんのほうが惑わす気がしますけど」と呟き、会場の笑いを誘った。
最後に濱口から最新作「
「寝ても覚めても」は9月1日より全国でロードショー。なお8月18日には濱口の監督作「親密さ」「何食わぬ顔(long version)」のオールナイト上映が東京・テアトル新宿で、9月22日から10月5日にかけて特集上映が東京・キネカ大森で行われる。
「寝ても覚めても」公開記念 濱口竜介アーリー・ワークス Ryusuke Hamaguchi Early Works
2018年8月18日(土)東京都 テアトル新宿
開場 21:30 / 開演 22:00 / 終映 翌5:00(予定)
<上映作品>
「何食わぬ顔(long version)」
「親密さ」
<トークイベント登壇者>
濱口竜介 / 小野正嗣
料金:2500円
※18歳未満は入場不可
2018年9月22日(土)~10月5日(金)東京都 キネカ大森
<上映作品>
「ハッピーアワー」
「PASSION」
「親密さ」
「THE DEPTHS」
「不気味なものの肌に触れる」
「永遠に君を愛す」
「天国はまだ遠い」
「記憶の香り」
「遊撃」
「何食わぬ顔(long version)」
「東北記録映画三部作」(「なみのおと」「なみのこえ 気仙沼」「なみのこえ 新地町」「うたうひと」)
料金:1300円均一 /「ハッピーアワー」3000円 /「親密さ」2000円
関連記事
濱口竜介の映画作品
関連商品
リンク
- 「寝ても覚めても」公式サイト
- 映画「寝ても覚めても」 (@netesame_movie) | Twitter
- 「寝ても覚めても」90秒予告編
※記事公開から5年以上経過しているため、セキュリティ考慮の上、リンクをオフにしています。
tAk @mifu75
黒沢清「寝ても覚めても」を「奇跡的な映画」と称賛、教え子・濱口竜介とトーク - 映画ナタリー https://t.co/enZhPzZpZu