「心と体と」I・エニェディ来日、大九明子が質問「鹿に演出をしたんですか?」

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ハンガリー映画「心と体と」のイルディコー・エニェディと「勝手にふるえてろ」の大九明子が講師を務めるマスタークラスが1月31日、東京のアテネ・フランセ文化センターにて開催された。

左からイルディコー・エニェディ、大九明子。

左からイルディコー・エニェディ、大九明子。

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イルディコー・エニェディ

イルディコー・エニェディ

大九明子

大九明子

これは、「心と体と」日本最速上映の企画として行われたもので、映画美学校の生徒を中心に若い観客が集まった。第67回ベルリン国際映画祭で金熊賞など4冠を獲得し、第90回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた本作は、孤独な男女の姿を描くラブストーリー。ブダペスト郊外の食肉処理場で働くも職場になじめない若い女性マーリアと、片手の不自由な上司の中年男性エンドレが、同じ“鹿”の夢を見たことから急接近していく。ブダペスト演劇映画大学で教鞭を執っているエニェディは「たくさんの方に来ていただいてとてもうれしいです。2人の映画監督がおりますので、私たちから何か伝えられることがあるかと思います」と挨拶した。

左からイルディコー・エニェディ、大九明子。

左からイルディコー・エニェディ、大九明子。

本作には映画を撮るときにやっていたことがすべて詰まっているという大九は「女性ならではの性の描き方であったり、いち監督としてうんうんうん!と共感しながら観ました」と感想を伝え、「これからも偉大な女性監督の背中を追って行けることにワクワクしています」とエニェディを称える。「とても優しいのね」と照れた様子で返答したエニェディは、「勝手にふるえてろ」について「ユーモアと同時に深さもあり、パワフルで素晴らしかったです。自分の中ではさわやかな風のような作品でした」と語り、両監督はお互いの作品を称え合った。また、「心と体と」のマーリアと「勝手にふるえてろ」のヨシカには孤独でコミュニケーション下手という共通点があるのではないかと問われたエニェディは、「人の内面というのは少ししか表に出てこないもの。この2人のヒロインだけではなく、誰しも持っている問題ではないかと思います」と自身の考えを述べた。

続いて、本作に登場する鹿について話が及ぶと、大九は「鹿に演出をしたんですか?」と興味深そうに尋ねる。エニェディは「主演の男女に似ている鹿を慎重に選んだんです。どちらも人間に慣れていない野生の鹿だったので、数カ月かけてトレーニングして、最終的にすごく近くで撮影することができました」と振り返る。また、鹿を人間と同じように見てほしかったと話すエニェディは「とても細かく意識して、人間に見えるように撮影しているんです」と明かした。

講義の最後には観客との質疑応答も。撮影中の楽しかったことを聞かれたエニェディは「撮影チームは皆この作品を深く理解してくれましたが、美術担当のメンバーたちはマーリアの使う塩と胡椒の瓶までもキャスティングを行ったんです。11個のうちどれにしようか延々と議論するくらい、ディテールにわたって話し合ってくれました」と裏話を明かすと、大九も「わかる!」と表明し会場の笑いを誘う。映画作りの根底にあるものを尋ねられると、大九は「私は何を作りたいんだろうと右往左往した挙句、映画という手段にたどり着いた。最初は必死でしたが、この5年くらいでやっと私の作るものは映画以外ありえないと思うようになりました」と答える。エニェディは「私にとって映画は一番効率のいい、そして唯一のコミュニケーションの方法なのです。私はマーリアのように人と交流するのが苦手ですが、今日は皆さんと映画を通じて語り合えてとてもうれしかったです」と観客へ向けて感謝を述べた。

「心と体と」は4月14日より東京・新宿シネマカリテ、池袋シネマ・ロサほか全国でロードショー。

※記事初出時、イベント開催場所に誤りがありました。お詫びして訂正します。

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