コ・ユンジョンに沼落ちしたい！「ムービング」で大ブレイク、「いつかは賢いレジデント生活」では多彩な表情で魅せる

文 / 前田かおり 構成 / 小宮駿貴 イラスト / 西村オコ

コ・ユンジョンとは

「ムービング」で最旬女優として大ブレイク

1996年4月22日生まれ、現在29歳のコ・ユンジョン。ソウル女子大学・現代美術科に在学中、「大学明日」という学生向け雑誌の表紙モデルとして登場。過去にはハン・ガイン（「太陽を抱く月」）やパク・ギュヨン（「セレブリティ」「イカゲーム」シーズン2)らが表紙を飾るなど、同誌は若手女優の登竜門のようなもの。コ・ユンジョンはこれを機に、大学卒業後はCMモデルとして活躍。2019年にドラマ「彼はサイコメトラー」でヒロインの幼馴染み役で俳優デビュー、さらには歌手イ・スンチョルのミュージックビデオにパク・ボゴムと出演して「あの美少女は誰？」と注目された。

2020年の「Sweet Home －俺と世界の絶望－」では惨劇の舞台になるアパートで持病を患いながらも老人を介護するヘルパー役で印象を残し、次ぐ「ロースクール」ではクラスのマドンナ的存在だが、実は恋人のDVに苦しむ法学生役を好演。可憐で清楚な印象だけでなく演技力も高く評価されるようになり、ファンタジー時代劇「還魂」シリーズでついに初のヒロイン役を射止める。パート1はほぼ序盤のみで、本格的な登場はパート2から。最強の刺客ナクスと記憶喪失の神女ブヨンの2役を演じ、観る者を壮大なファンタジーロマンスの世界へと牽引。本作で一躍、次世代ヒロインとして浮上した。2023年は「イカゲーム」シリーズで世界的スターに躍り出たイ・ジョンジェの主演＆初監督作「ハント」で映画デビューを飾り、第60回百想芸術大賞のテレビ部門で大賞を受賞した「ムービング」にも出演。押しも押されぬ最旬女優として大ブレイクする。

2025年4月12日から待望のドラマ「いつかは賢いレジデント生活」の配信がNetflixでスタート。今後は「この恋、通訳できますか？」が待機しており、同作は「還魂」を手がけたホン・ジョンウンとホン・ミラン姉妹の脚本で、キム・ソンホと共演するラブコメディだ。日本からは福士蒼汰が出演するとあって、注目を集めること間違いなし。2025年にNetflixで配信される予定だ。

魅力たっぷりに新米医師を演じた「いつかは賢いレジデント生活」

医師たちの日常を笑いと涙を交えて描いた人気シリーズ「賢い医師生活」のスピンオフ。舞台をユルジェ本院から分院の鐘路（チュンノ）ユルジェ病院に移し、産婦人科で一人前の医師になるべく経験を積んでいくレジデント（専攻医）たちの奮闘と成長の日々を描くメディカルヒューマンドラマだ。もともと2024年上半期にスタートする予定だったが、韓国で発生した医療対策に対するストライキの影響で延びに延び、ようやくNetflixで配信が始まった。

コ・ユンジョンが新米医師役……ということで意欲に燃えた明るいキャラを想像していたが、演じるオ・イヨンはイマイチ覇気がない。実は医師の仕事がイヤになり逃げた過去がある。だが多額の借金を返済するために、インターンをしていた鐘路ユルジェ病院の産婦人科でレジデントとして働くことに。イヨンは個性豊かな3人の同期とともに、さまざまな事情を抱える患者やその家族と出会い、慣れぬ仕事の山を次から次へとこなし、食事も取れず寝不足な日々を繰り返しながら試練を乗り越えていく。

コ・ユンジョンといえば、低音のハスキーボイスもチャームポイントの一つ。そのギャップある声でやる気のなさを表現したり、かと思えば大きな瞳をパチクリさせて驚きや喜びを無邪気に体現したり……。感情表現の豊かさにも定評があるだけに、当初はどこか他人事だったイヨンが命の尊さや医師としての使命感に少しずつ目覚めていく姿をどう披露してくれるのか楽しみになる。

イヨンを取り巻く家族も見ものだ。特にレジデントの教育係であるク・ドウォン（チョン・ジュンウォン）が姉の夫の弟という姻戚関係で、実は一つの屋根の下で暮らす仲。ドウォンは仕事熱心な上に後輩たちの面倒見もいいため、周囲から“神扱い”されている。そんなドウォンに対し、イヨンはあることをきっかけに惹かれていく……とはいえ、恋も新米で自分の気持ちをストレートに告白するイヨン。不器用な彼女の恋の行方がどう転ぶのか、やきもきせずにはいられない。

さらに、「賢い医師生活」ファンにとってはオリジナルメンバーの出演もうれしいポイント。第2話に産婦人科医のチュ・ミナ（アン・ウンジン）が登場し、「賢い医師生活」シーズン2でカップルとなったヤン・ソッキョン（キム・デミョン）とのその後を思わせるやり取りにはニヤリとした。別の回には胸部外科医のキム・ジュンワン（チョン・ギョンホ）、また小児外科医だったアン・ジョンウォン（ユ・ヨンソク）も登場。通称“99ズ（ククズ）”と呼ばれていた5人のその後を見られるだけでも胸アツ必至だ。

韓国ドラマ「いつかは賢いレジデント生活」予告編

「ムービング」を観たらコ・ユンジョンの沼にハマる

特殊能力を隠して生きる子どもたちと、壮絶な過去の秘密を抱えた親たちが迫りくる敵に立ち向かうSFヒーローアクション。とんかつ屋を営む母イ・ミヒョン（ハン・ヒョジュ）と暮らす男子高校生キム・ボンソク（イ・ジョンハ）は、体が宙に浮いてしまう能力に悩みながら生きていた。そんな中、超回復の能力を持つ転校生チャン・ヒス（コ・ユンジョン）と出会い、人生が一変する。

韓国版アベンジャーズとも言われる本作。壮絶なアクション、スリリングな国家間のスパイ工作、泣ける家族ドラマだったりと韓国お得意のあらゆるジャンルがミックスされたヒューマンドラマだが、その始まりを飾るのは超能力を持つ子供たちのピュアな青春模様から。ぽっちゃり体形のボンソクは、通学バスで出会った美少女ヒスに一目惚れ。ヒスは前の学校で問題を起こしたために目立たぬよう過ごしているが、ボンソクは彼女のふとした表情をきっかけに惹かれていく。

撮影当時、コ・ユンジョンは26、27歳だが制服姿は違和感ゼロで愛らしいこと。また実際にスポーツが得意な10代の少女らしく見せるため、体育大学の入試塾に通って体づくりもしたとか。ボンソクとの微笑ましい青春ラブもかわいければ、名優リュ・スンリョン演じる父ジュウォンを思う娘心に泣かされる。「ムービング」を観たらコ・ユンジョンの沼にハマること間違いなし。

韓国ドラマ「ムービング」予告編

「還魂」最強の殺し屋役が“マジ、カッコイイ！”

歴史にも地図にもない大湖（テホ）国を舞台に、他者と魂を入れ替える“還魂術”によって運命を狂わされた主人公たちが道を切り拓いていくファンタジー時代劇。強大な魔力を持ち、最強の刺客として恐れられる殺し屋ナクス（コ・ユンジョン）は、追手から逃げるため盲目の少女ムドク（チョン・ソミン）と還魂する。ムドクはひょんなことから名家の子息チャン・ウク（イ・ジェウク）と出会い、秘密裏に弟子と師匠の関係を結ぶ。しかし、ウクには隠された出自の秘密があった。やがて権力を握ろうと暗躍する者たちが、還魂術で国を混乱に陥れていく。

パート1のコ・ユンジョンは“おだんごヘアー”のナクスを好演。「自分が歩いたあとには首が転がっている。だから落首（ナクス）だ」と豪語し、すさまじい剣さばきで圧倒的な強さを見せる。マジ、カッコイイ！ だが、彼女の出番はそこまでで……。コ・ユンジョンの本格的な登場はパート2から。舞台は衝撃のラストから3年後の設定で、還魂術によって断ち切られた主人公たちの切ない愛の顛末が描かれる。その中でコ・ユンジョンは、神力を持つチン家の長女ブヨンとして登場。ウクと思いがけなく出会い、運命がまた翻弄されることに。パートの凛々しい姿とは打って変わって、闇夜に現れるブヨンはこれまた清楚で美しいこと。記憶をすべて失い、どこか浮世離れしているキャラクターを体現しており、最後まで見届けずにはいられなくなる。

韓国ドラマ「還魂」予告編

「ロースクール」脇役ながらインパクト残す美人法学生に

韓国屈指の名門ロースクールでソ・ビョンジュ教授（アン・ネサン）が殺害されるという事件が発生。その犯人として殺された教授と因縁のあったヤン・ジョンフン教授（キム・ミョンミン）が逮捕され、ジョンフンの無実を信じるハン・ジュニ（キム・ボム）やカン・ソルA（リュ・ヘヨン）ら教え子たちが真犯人を探し始める。

コ・ユンジョンが演じるのは、女子学生の中でもひときわ目立つ美人チョン・イェスル。クラスメイトが司法試験に合格するため、寝る間も忘れて猛勉強している中、彼女だけはスマホに“旦那様”の名で登録している恋人を優先し、勉強も恋愛もうまくやろうとしていた。しかしその恋人は国会議員の息子でとんでもなく卑劣。イェスルは彼から暴力を振るわれていたのだった。付き合った頃は彼との愛を信じようとするが、やがて法学生らしく正義に目覚め、仲間に支えられて凛として立ち上がる。コ・ユンジョンは同役をしなやかに演じ、脇役ながらしっかりとインパクトを残している。

韓国ドラマ「ロースクール」予告編

前田かおり（マエダカオリ）プロフィール

ライター。映画やドラマのレビュー、キャスト・スタッフへのインタビューを多数手がける。キネマ旬報ムック「韓国テレビドラマコレクション」や韓国映画「密輸 1970」「ボストン1947」の劇場用パンフレットほか、情報誌、Webで各種エンタテインメント情報を紹介。2025年現在のお気に入りは映画「ベテラン 凶悪犯罪捜査班」、ドラマ「トリガー ニュースの裏側」「恋するムービー」。