ナタリードラマ倶楽部 Vol. 8 [バックナンバー]
「アンメット」綾野先生のナイスファイトに改めて感謝、二人は必ず幸せになる
ヒロインがハッピーエンドを迎えるためには、まずは当て馬が幸せにならないといけない
2024年6月28日 17:30 7
放送・配信中のドラマについて取り上げる連載「ナタリードラマ倶楽部」。Vol. 7では、ドラマウォッチャー・明日菜子が愛してやまない“当て馬キャラ”に注目し、ドラマ「
6月24日に最終回を迎えたばかりの「アンメット」は、“記憶障害の脳外科医”である川内ミヤビを中心とする医療ヒューマンドラマ。綾野はかつてミヤビに思いを寄せていた脳外科医で、物語のキーパーソンとして活躍した。「当て馬こそが“真の勝者”」と語る明日菜子が、綾野に感じる魅力とは。
文
当て馬、二番手、じゃない方 ──。ヒロインに恋をするものの、その想いは報われず、結果的にヒロインと本命の関係を後押しする存在になってしまう彼らを表す言葉はさまざまだが、リスペクトの気持ちを胸に“当て馬”と呼ばせていただこう。
“当て馬”それは、試合には負けたものの、勝負に勝った者にだけ与えられる特別な称号である。ヒロインと結ばれない彼らは、物語においては“敗者”なのかもしれない。だが、その覆せない運命を知っていながらも、我々視聴者は彼らを応援する。ときには本命を凌ぐ人気を誇り、ふと作品のことを思い出す際に、ヒロインでもその相手役でもなく、選ばれなかった彼の顔が一番に浮かぶこともある。つまり、当て馬こそが“真の勝者”といっても過言ではない……。
さて、この2024年春クールもまた、魅力的な当て馬たちが我々の前に現れ、颯爽と駆け抜けていった。センセーショナルな最期が忘れられない「虎に翼」(NHK総合)の花岡(岩田剛典)、逃した魚は大きいの典型例こと「Destiny」(テレビ朝日系)の貴志(安藤政信)、その想いに一度蓋をしたにもかかわらず当て馬レースに引き戻された「366日」(フジテレビ系)の和樹(綱啓永)……瞳を閉じれば彼らの活躍が浮かんでくる。そして今回は「アンメット ある脳外科医の日記」(カンテレ・フジテレビ系)の綾野先生について語りたい!
本作の主人公は、脳外科医として将来を嘱望されていながらも、不慮の事故で記憶障害を抱えたミヤビ(
綾野(
今年だけですでに4本のドラマに出演した岡山は、同じく春ドラマの「パーセント」(NHK総合)でも重要な役割を担っており、主人公の恋人である若手脚本家を演じた。見かけないクールはないんじゃないかと思うくらいの超売れっ子だが、綾野のような当て馬ポジションはなかなか珍しい。
若葉が頭のてっぺんから爪先まで三瓶というキャラクターを全身で作り出しているならば、岡山はその“視線”だけで綾野の全てを物語る。敵か味方か。ミヤビへの気持ちは本当に好意なのか、はたまた三瓶を牽制するための材料なのか。綾野の視線の一つ一つに我々は翻弄されつづけてきた。
その真意が明かされたのは、ミヤビたちが勤める丘陵セントラル病院で、綾野がメスを執ったときのこと。難しい手術を終えた綾野を労おうと、ミヤビが「どっちがいいですか?」と二種類の缶コーヒーを持ってくる。それは、事故に遭う前のミヤビが行っていた、彼への気遣い。彼女の日記には書かれていない、綾野だけが覚えている記憶。ミヤビへの想いが今にも溢れ出しそうな彼の瞳に、その気持ちはまぎれもなく“恋”なのだと確信した。
そんな綾野の魅力がさらに増すシチュエーションは、一見なんでも飄々とこなしそうなのに、長年想いつづけたミヤビの前だと、上手く繕えなくなってしまうシーンだと思う。例えば、ミヤビが記憶を取り戻すきっかけになればと、二人が思い出の美術館を訪れる場面。そこはかつて、綾野がミヤビにフラれた場所で、彼は“聖地巡礼”をすることに。自らフラれたソファーに案内し、3回断られたことを素直に打ち明ける姿はこれまでの綾野のイメージと異なり、なんだか可笑しい。さらにミヤビと三瓶の距離が近づいたキッカケが、綾野の猛アプローチだったことが発覚。ドラマ後半に、次々と綾野にまつわる意外なエピソードが明かされ、“読めない”と思っていた綾野の解像度がぐんぐんと上がっていった。
そんな彼を語る上で忘れてはならないのが、婚約者の麻衣(
しかし! 愛のない結婚だと思っていたのは綾野だけ。麻衣の密かな恋心が明かされたとき、それまでの世界が逆転して見えた(ミヤビと三瓶が婚約していたと判明した第2話のラストを思い出す……)。記憶が何度リセットされても三瓶のことが気になるミヤビ、そんなミヤビへの気持ちが忘れられない綾野、愛のない政略結婚だったはずなのに実は綾野のことを一途に想っていた麻衣。そう、ミヤビと三瓶がストレートに心を寄せ合う一方、綾野と麻衣が「アンメット」の恋愛パートにおける複雑さを担っていたのである……!
そんな二人の関係が春を迎えた第8話。麻衣は綾野のために、別の縁談を受けようとしていた。今まで当たり前だと思っていた麻衣との関係性を失って、彼女の大切さに初めて気づく綾野。離れて暮らす父に小まめに連絡を取ってくれていたこと、なによりも麻衣が自分に思いを向けてくれていたことを知り、これまでのもどかしさを打ち消すように、二人は一気にゴールへと駒を進める。ヒロインがハッピーエンドを迎えるためには「まずは当て馬が幸せにならないといけない」という暗黙のルールがあるが(筆者調べ)、自然と惹かれあって結ばれた綾野と麻衣を、心から祝福したい。俺にはわかる、この二人は必ず幸せになる。
「アンメット」が完結した今、ミヤビと三瓶の物語が始まるキッカケとなった綾野のナイスファイトに、改めて感謝。カンテレ・フジテレビ系月10枠で続編があった作品はまだないが、今作の人気っぷりなら放送枠初のセカンドシーズンも期待できるかも? 夏からはまた新しいドラマが始まるけれど、心がずっと覚えていると思う。また4人が楽しそうにテーブルを囲む、その日まで。
※ドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」11話(最終回)がTverで見逃し配信中。なお本作のBlu-ray / DVD BOXは11月20日に発売される。
明日菜子(アスナコ)プロフィール
毎クール20本以上のドラマを鑑賞しているドラマウォッチャー。
明日菜子(@asunako_9) | X
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明日菜子 @asunako_9
【書いた✍️】2024年春ドラマで我々の心を掻っ攫った当て馬代表として #アンメット 綾野先生のコラムを書きました🐎最終回を迎えた今、我々が真に感謝すべきはミヤビ三瓶物語の“始まり”である綾野なのでは…?!他ドラマの当て馬たちにも想いを馳せながら読んでください🫶
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