ホラーやゾンビをこよなく愛する著名人らにお薦め作品を紹介してもらうリレー連載「今宵も悪夢を」。集まった案内人たちは身の毛もよだつ恐怖、忍び寄るスリル、しびれるほどの刺激がちりばめられたホラー世界へ読者を誘っていく。
第48回は
取材・
初めて主演をやる子の演技じゃない!
この作品は「怖い、グロい」よりも「美しかった」という感想が出てくるホラーです。主人公は、学校でいじめられている女の子。いじめの延長で自分の家に火をつけられて、主人公の家族たちも燃やされてしまいます。妹は一命を取り留めたものの意識は戻っておらず、お母さんとお父さんは亡くなってしまって。今までいじめに耐えてきた主人公は、このことをきっかけに復讐を決意するんです。
復讐のスイッチが入っちゃった主人公が本当にすごい。ナイフ1本で指をパサーッと切ったり、ブサーッと刺しちゃったり。劇中の季節が冬なので、周りは一面雪景色。その中で血が飛び散るんです。すごくグロい描写だけど、すごくきれい。真っ白な雪に赤い血が映えるんです。普段グロ系を観ると、自分がやられているのを想像して痛い痛い!ってなっちゃうんですが、「ミスミソウ」はそうならなかったんですよね。うわっとはなりますが、その直後に来るきれいさが勝る感じ。最後の最後まできれいなんですよね。
この作品は序盤が長く、中盤から終盤にかけて展開が早い作品。大事な序盤で、主人公と家族との関係性がしっかりわかるようになっています。主人公のことをよく理解している素敵なご両親は、他人の私でも好きになっちゃうくらい(笑)。そういう人たちが燃やされて、こっちもいらいらしてきちゃって。ただ、事件の主犯は最後の最後までわからないんですよ。みんな人のせいにして、俺じゃねえよ、私じゃねえよって。単なるいじめ作品ではなくて、それぞれのゆがんだ愛情のゆえにこうなってしまったということがちゃんと描かれていて、すっきりはしました。
そして、主人公を演じた山田杏奈さんが本当に素晴らしくて! これが初主演映画らしいんですよ。主人公はもともといい子で明るかったのに、親が殺されたショックで声が出なくなっちゃう。だから表情や態度だけで、この子がどういう感情を抱いているか全部わかるようにしなくちゃいけない。初主演をやる子の演技じゃなくて(笑)。本当に上手で、吸い込まれました。ついつい応援したくなって、やったね!と思っちゃってる自分もいたんですよね。女の子1人で男の子2人に立ち向かうシーンなんか、女性としての強さも見えたりして主人公が魅力的すぎるなって思いました。男の子ともみくちゃになったらすごく焦るだろうし、互いに武器を持っているわけだから、自分が死ぬかもしれないって考えますよね。そんな状況に立たされているにもかかわらず、冷や汗もかかず冷静さが残っていることが怖い。それは家と家族を燃やされたという出来事が、いかに主人公にとってショックだったのかわかる描写でもあるのかな。ああいうことがあったあとでは、こんなことじゃ動じない、じゃないですけど。
作品的にはグロ寄りだから、ちゃんと切れるし、刺されるし、血が出るし、死ぬ(笑)。それが普通の道端のシーンなら「めっちゃグロかったな」という感想で、そこまで印象に残らなかったかもしれない。あの冬山の景色と、あの主人公というのがすごく印象に残った理由だったと思います。
桃月なしこ(モモツキナシコ)
1995年11月8日生まれ、愛知県出身。“可愛すぎる現役ナース”として一躍脚光を浴び、ファッション雑誌bisのレギュラーモデル、コスプレイヤーとして活躍している。サカイ引越センターのテレビCMに出演しているほか、「魔進戦隊キラメイジャー」で敵幹部ヨドンナ役に抜擢され、スピンオフ作品「ヨドンナ」シリーズ第1作から第3作で主演を務めた。東映の配信ブランド・Xstream46作品「ようこそ東映殺影所へ」にも主演。2022年放送アニメ「恋は世界征服のあとで」の乱乱役で声優デビューを果たした。テレビ東京系「おはスタ」には金曜レギュラーで出演しており、金曜のレギュラーコーナー「なしことホテイソンの!アニポケチャンネル」を担当。また出演しているMBS地上波番組「ゼロイチファミリアは褒められたい」が放送中、番組公式YouTubeチャンネル「ゼロイチTV」が配信中。
「ミスミソウ」(2017年製作)
主人公は、東京から田舎に転校してきた野咲春花。学校で壮絶ないじめを受けているが、同じように転校してきたクラスメイト・相場晄を心の支えに耐えていた。しかしクラスの女王的存在の小黒妙子とそのグループのいじめは徐々に悪化し、春花の家が激しく炎上する事件が起こる。事の真相を知った春花は、家族を奪ったいじめっ子たちに命を懸けた復讐を始める。
「ハイスコアガール」で知られる押切蓮介のマンガを、「ライチ☆光クラブ」「先生を流産させる会」の
「ミスミソウ」Blu-ray / DVD販売中
税込価格:Blu-ray 5280円 / DVD 4180円
発売元・販売元:バップ
※「ミスミソウ」はR15+指定作品
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