「クローズアップ現代『封じられてきた声 映画界の性暴力~被害をなくすために~』」

NHK「クローズアップ現代」が迫る、映画界の性暴力の実態

6月14日の放送を前に制作陣へインタビュー

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「クローズアップ現代『封じられてきた声 映画界の性暴力~被害をなくすために~』」が、6月14日19時30分よりNHK総合で放送される。今年の3月から性加害・性暴力の告発が相次いでいる映画界。映画監督の白石和彌、相模女子大学大学院特任教授の白河桃子がスタジオゲストとして参加する番組では、業界の構造的問題や被害の実態、そして性暴力を防ぐための対策に迫っていく。

映画ナタリーでは放送を前に、取材を進める制作陣へインタビュー。企画の発端や目的について話を聞いた。

取材・/ 小澤康平

「問題を一過性のものとして終わらせてほしくない」という被害者の声

2019年から性暴力に関する取材を継続的に行っているクローズアップ現代。運営するサイト・みんなでプラスには、「性暴力を考える」と題して170本以上の記事が掲載されている。3月から性加害・性暴力の告発が続いている映画界にも切り込んでいくこととなった。

今回の番組を担当するチーフプロデューサーの天野直幸氏は「記者、ディレクターが映画界の性暴力の実態について証言を集めてきました。取材を続けていく中で、被害者の方の多くが『問題を一過性のものとして終わらせてほしくない』『取材で話したことを何かを変えるきっかけにしてほしい』という思いを持っていることがわかってきた。そういった状況において、私たちにできることを考え始めたのがきっかけです」と企画の起点に触れる。

報道局取材センター、科学・文化部記者の信藤敦子氏は「被害者をはじめ多くの方々に話を聞く中で、被害が起きている現状が事実であるならば、スキャンダルで終わらせていいことではないと感じ、さらに取材を進めてきました。性被害の問題は社会全体の問題だと考えていますが、映画界特有の構造が性被害のリスクを高めることにつながっていないか、現状をしっかりと認識できるような番組を目指しています」と続ける。

「クローズアップ現代『封じられてきた声 映画界の性暴力~被害をなくすために~』」

「クローズアップ現代『封じられてきた声 映画界の性暴力~被害をなくすために~』」

ハラスメントを許容する文化、相談できる窓口の欠如…

映画界特有の構造とはなんなのか? 天野氏は、それが性暴力が見過ごされてきた要因であると述べ「放送に向けて専門家、業界団体とともに分析を続けている最中なので、確定的なことは言えないのですが、大きな問題は2つあると考えています。1つはハラスメントを許容する文化になってしまっていないかということ。もう1つは、被害に遭ったときに、例えば匿名にするとか、身分を保証するといった形で、安心して相談できる窓口が十分に用意されていないのではないかということです。俳優さんを含め、特にフリーランスの方々は立場的に声を上げづらいという問題もあります。この構造については、放送でより詳しい情報を示せたらと思います」と説明する。

これまでに映画界以外の性暴力に関する取材も行ってきた信藤氏は「日本社会が被害を訴えやすい環境かと言えば、まだまだそうではないと思います。特に俳優さんは、人前に出て活動することが多いなど仕事の性質上、一般の方以上に被害について話しづらいのではないかなと。ときには被害を訴えた側が悪意の標的にされてしまうこともあります」と日本社会の風潮に言及した。

番組では現状の問題点を取り上げるだけでなく対策も紹介。例えば海外には、被害者を支援する機関の設置やハラスメント防止教育の義務化など、業界を挙げての取り組みが進んでいる国もある。天野氏は「放送では、韓国で実施されている性暴力を防ぐ取り組みを紹介します。日本の映画界をよくしていくヒントはどこにあるのか、皆さんと一緒に考える番組にできればと思います」と胸中を語った。

「クローズアップ現代『封じられてきた声 映画界の性暴力~被害をなくすために~』」

「クローズアップ現代『封じられてきた声 映画界の性暴力~被害をなくすために~』」

当たり前に問題であることを、当たり前に解決していく方法を探る

性暴力は映画界以外でも起こっているため、問題を自分事として捉えてほしいと話す制作陣。天野氏は「今現在、身の回りにそういった問題がなかったとしても、実際には地続きで職場・学校・家庭などあらゆるところで起こり得ます。対岸の火事として考えるのではなく、『自分にも関係のある問題だったんだ』と思っていただけるよう制作を続けています」と主目的を伝える。

報道局取材センター、科学・文化部デスクの藤原淳登氏は「不可能なことを可能にしようとしているわけではなく、当たり前に問題であることを、当たり前に解決していく方法を探るということだと思うんです。問題があるということをみんなで認識して、対策を考えれば、きっと状況をよくしていける。今回の放送に限らず、そこは地道に実践していきたいと考えています」と番組制作にあたっての信念を明かした。

最後に、作品と作り手の関係についての意見を聞いてみた。加害行為が発覚した映画監督・俳優が関わっている作品と、私たちはどう向き合っていけばいいのか。藤原氏は「非常に難しい問題ですが、例えば、経済の分野ではコーヒー豆やカカオなどフェアトレードの概念が広がってきています。もし『強制労働や子供の違法労働によって生産された製品は使いません』という態度を消費者が示して、それが生産現場を適正化することにつながっているとしたら、芸術文化の世界でも同じような考え方ができないかと考えることは何もおかしいことではないと感じます。最終的には1人ひとりが判断することだと思いますが、議論は続けていかなければいけないと、私個人は考えています」と見解を示した。

クローズアップ現代「封じられてきた声 映画界の性暴力~被害をなくすために~」

NHK総合 2022年6月14日(火)19:30~19:57
NHK BS1 2022年6月15日(水)17:30~17:57
※NHKプラスで2022年6月21日(火)まで見逃し配信

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(写真提供:NHK)

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