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「マンガは素敵なものだと、母に認めてもらいたかった」一条ゆかりが語る自身のルーツ

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一条ゆかりのトークショー「一条ゆかりのトークナイト!」第1夜が、去る10月20日に東京・弥生美術館にて行われた。

弥生美術館では現在、一条の原画展「集英社デビュー50周年記念 一条ゆかり展 ~ドラマチック!ゴージャス!ハードボイルド!~」を開催中。トークショーはこれと連動して、全3回にわたって実施されるもので、第1夜では「デザイナー」「砂の城」を中心に、一条がデビューから人気作家になるまでのエピソードが語られた。

会場には応募総数252名の中から選ばれた、約60名のファンが集結。大きな拍手で迎えられた一条は、「今日は営業スタイルで、私がよく描く女子がしていそうな格好で来ました」と挨拶し、ゴージャスなドレス姿を披露した。

トークは一条がりぼん(集英社)でデビューを飾ったきっかけとなる話からスタート。「最初、別マでデビューするつもりだったんです」と語り出した彼女は、「私『リボンの騎士』が好きだったので、どちらかというとなかよし(講談社)派で。りぼんは普段手に取らない雑誌だったんです。でも投稿作を郵便局に持って行く途中、立ち寄った貸本屋でりぼんに大好きな水野英子さんの名前があるのが目に入った。水野さん目当てでりぼんをめくっていたら、マンガ賞の募集ページに賞金20万円って書いてあるのを見つけて。別マの賞金は10万円だったんです。それで、お金に目がくらんで(笑)」と心変わりしたことを明かす。

また一条は「超貧乏だったんです」と子供時代を振り返り、「そのうえ親がマンガを嫌っていて、成績が悪かったり手伝いをしなかったりすると、なんでもマンガのせいにするんです。自由にマンガを描きたくて、学生時代は早く家を出たいとばかり考えていた」と回想。特に母親については「見かけはいいけど、感じの悪い人だった」と紹介し、「こういう人にはならないようにしようといつも思っていた」と吐露する。

この日のため、自分が描きたいものを見つめ直してきたという一条は、それが年の差恋愛、同性愛といった要素に代表される“障害があるもの”だと表現。一条は「人が『してはいけない』ということを、どうしたらやれるか。もっと簡単に言うと、母が嫌うものを描いて『ざまあみろ』と言いたかった」と続けるが、話しながらその気持ちの奥に「私が命よりも愛しているマンガを馬鹿にした女(母)が許せない」「マンガがとても素敵なものだと認めてもらいたかった」という思いがあったことを明かす。「『マンガに謝れ!』という気持ちだったんでしょうね。これは今、話していて初めて気付きました」と感慨深げに話した。

「デザイナー」について語るパートからは、来場者の質問に答える形式でトークを展開。当初ストーリーはどこまで考えていたのかという質問には「第1話だけです。私の場合はだいたいそうで、物語を決めておいても主人公の性格がそれに当てはまらなくなってきたりする。だから幸せになるか、ならないかの2択くらい」と、キャラクターにモデルはいるのかという質問には「いないと思ったけど、鳳麗香は母かもしれません。『私がなりたいのは常にトップよ。それ以外なら最低も同じだわ』という亜美のセリフも、母によく言われていた言葉でした」と回答した。

「シリアスとラブコメでは、どちらが描きやすい?」という質問からは、脱線して「有閑倶楽部」の話に。一条は「シリアスのほうが描きやすいです。ストーリーに没頭できるから。反対にギャグはテクニックが必要で、だから『有閑倶楽部』は苦労しました」と述べ、 「“こういうマンガを描く人”とくくられるのが嫌で、当時は『こんなこともできるのよ』と隠し芸のようなつもりで(『有閑倶楽部』を)描いたんです。そうしたら一番長く描くことになって、とうとうそっちが主流みたいになってしまって……。最近なんて『恋愛ものも描くんですよ?』なんて人に言ってる(笑)」と話して会場を笑わせた。

普段、自分の作品を読み返すことは少ないという一条だが、「砂の城」は10年前の転居時にたまたま読み返したという。「『大人っぽい!』と我ながらびっくりして、このときは非常に頭でっかちだったんだなと思いました。ずっと危機迫る感じで、余裕がまったくない。ただ、その余裕のなさが作品とシンクロしていい感じなんだけれども」とコメントし、「今だったらこんなふうに描かない。一息入れるシーンをきっと入れると思う。『砂の城』はあの当時描くのによかった作品なんだろうな」と思い返す。またミッシェルとエレーヌがお気に入りのキャラで、だから2人を結婚させたのだとも語った。

参加者からの質問で一番多かったのは「今ハマっていることは?」という内容。一条は「ピアノと語学と園芸」と答え、特に家庭菜園には凝っているのだそうで、「うちのトマトは甘くて美味しいんですけど、それは雑な証拠なんです。トマトって水分ギリギリで雑に扱えば扱うほど、『枯れてなるものか!』と糖度を溜め込んで美味しくなるので(笑)」と説明。ただ先日の台風で自慢の家庭菜園がなぎ倒されてしまったそうで、「恐ろしいことになっていて、見なかったことにしました。連載をお休みしているので、ストレスフリーな生活を送っているんですけど、一番のストレスは台風です」と話す。

酒好きとして知られる一条だが、緑内障の影響もあり、現在は断酒していると明かす。「もう一生ぶん飲んだから、いいかなと思って。家にあると飲みたくなっちゃうから、持っていたロマネ・コンティ2本、高いワインなどを誕生日パーティーで全部空けてしまった」と豪快なエピソードを披露し、「今の仕事は健康になること」とコメント。最後には「久しぶりに表舞台に出て、こんな生活をしてたんだなと他人事のようにびっくりしました」とチャーミングな笑顔を見せ、約90分のトークショーを締めくくった。

なお「一条ゆかりのトークナイト!」第2夜は、11月17日に開催。「有閑倶楽部」「正しい恋愛のススメ」を中心に、大ヒット作の誕生秘話に迫る。参加は事前予約制。弥生美術館では10月31日まで、メールと往復はがきで応募を受け付けている。

集英社デビュー50周年記念 一条ゆかり展 ~ドラマチック!ゴージャス!ハードボイルド!~

会期:2018年9月29日(土)~12月24日(月・祝)※月曜休館、祝日の場合は翌火曜休館
時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
料金:一般900円、大・高生800円、中・小生400円

一条ゆかりのトークナイト!第2夜

日時:2018年11月17日(土)17:30~18:40予定(約70分)
会場:弥生美術館2F展示室内
料金:一般2000円、大・高生1900円(いずれも入館料込、学生は要学生証持参)

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