第1回
一般財団法人さいとう・たかを劇画文化財団が創設したさいとう・たかを賞は、シナリオと作画の分業により制作され、成人男女を主な読者対象する優れた作品を顕彰するマンガ賞。審査員にはさいとうのほか、
壇上には受賞したリチャード・ウーと芳崎、同作を掲載するビッグコミックオリジナルの担当編集・中山久美子氏、平井真美副編集長が登壇。さいとう・たかをの手から正賞の「ゴルゴ13像」および賞状、賞金50万円が贈呈された。
まずはやまさきが、選考委員を代表して講評を述べる。やまさきは「最終候補に残った3作品すべてが甲乙つけがたい出来だった」としつつ、受賞作を「最新の科学・脳科学の知識を十分に吸収したうえで展開される緻密なストーリーと、思い切った俯瞰構図を取り入れるなど、斬新な作画とシナリオが融合し、完成度の高い作品を生み出している。作品・質・素材、そのどれもが新しい時代のマンガを期待させるものだった」と評した。
続いて登壇したさいとうは、「まず言っておかなきゃいけないのは、えーと……名前なんだっけ? なんとかウー。私はね、これが彼のことなんだって知らなかったんですよ」と断りを入れる。“リチャード・ウー”は
挨拶に立ったリチャード・ウーは、「さいとう先生は私にとって、青年誌の師匠と呼べる存在。『ゴルゴ13』の担当をさせていただいた頃はまだ新米でしたが、先生は私の年齢やキャリアなど関係なく、同格のパートナーとして遇してくださり、それが非常にうれしかったことを覚えています」と当時を回想。「さいとう・たかを塾の出来の悪い塾生が、卒業証書をもらったような気持ちです」と喜びを語った。
リチャード・ウーとのタッグを組むのが、別名義も含めると『アブラカダブラ』で4作目となる芳崎は、彼の脚本について「映画『アマデウス』でたとえると、サリエリにとってのモーツァルトのようなもの。私がやりたいと思っていても形にできないものを、長崎さんが形にしてくださる」と述べ、「私自身、毎回『このお話、好きだな』という思いで描かせていただいています」とコメント。またさいとうが映画について語るインタビューを読んだことがあると言い、「そこに並んでいる映画のタイトルを観て、こういう作品が好きならきっと『アブラカダブラ』も気に入っていただけるだろうと感じていたんです。賞をいただけたことは、その思いが先生に伝わったようでうれしいです」と話した。
担当編集の中山氏は「編集者までもが賞をいただけるというのは、一緒に作品を作る仲間として認めていただけたような気持ちでうれしく思うのと同時に、背筋が伸びる思いです」と語り、「面白いものを作ろうと真摯に作品に向き合うお2人が賞をいただけたことは、素直にうれしい」と笑顔を見せる。また「『アブラカダブラ』3集は3月に発売されますので、そちらもよろしくお願いします」と受賞作のアピールも忘れなかった。
さいとうは最後に「私はこの世界に入ったときに、これは1人でやる仕事じゃないって思ったんですよ。ドラマを考える才能と、絵を描く才能と、それらを構成する才能は、まったく別のものですから。マンガも映画制作みたいに集団でやらないといけない。その方が完成度の高いものができる」と改めて分業制作の優位と賞設立の理由を語り、「これからはこのやり方がこの世界の本流になると思いますよ」とマンガ界の未来を見据え、イベントの幕を閉じた。
なお一般財団法人さいとう・たかを劇画文化財団の特設ページでは、選考委員による最終選考会の会議録を公開中。受賞者と選考委員のコメントも掲載されている。
関連記事
さいとう・たかをのほかの記事
関連商品
リンク
- さいとう・たかを賞|さいとう・たかを劇画文化財団
※記事公開から5年以上経過しているため、セキュリティ考慮の上、リンクをオフにしています。
岩手のニュース @iwatenews
【イベントレポート】さいとう・たかを、自身の名冠した賞の授賞式で「分業制作がマンガの本流になる」 - コミックナタリー https://t.co/t3YHxFctJb