
このマンガ、もう読んだ?
「beautiful place」美少女×暴力描写が魅力を引き立て合い、抜け出せなくなる ひと味違う“萌えミリ”マンガ
2025年3月28日 18:30 PR松本次郎「beautiful place」
とある女子校に転校してきた花沢シモンは、学校で行われている“挺身活動”に参加することに。彼女の教官役を務めるのはクセの強すぎる同級生・高阪モモコで……。主に女子校のみで形成されている、完全独立した武装自治組織・全女子高群武装自治会連合に所属する少女たちを描く物語だ。
文
甘い×しょっぱい=無限の法則
唐突だが、チョコレートとポテトチップスの組み合わせが比類なき好相性を誇ることは、おそらく誰もが知るところだろう。チョコレートの甘みで満たされた口腔内にポテトチップスを投入することで塩気が引き立ち、なおかつ甘みのリセットが行われることによってさらなるチョコレートの摂取が促される(その逆もしかり)という、永久機関さながらのメカニズムを実現するゴールデンコンビだ。誰しも一度はその快楽に身を委ねた経験があるのではないだろうか。
それと同じような現象が、“美少女×ミリタリー”をモチーフとする創作ジャンルにおいても発生していると考えられる。
Webマンガサイト・コミプレ-Comiplex-にて連載中の松本次郎「beautiful place」は、内戦状態にある日本を舞台に、制服姿の女子高生たちが銃火器類を駆使して“挺身活動”なる軍事行動に従事する物語。主人公・花沢シモンをはじめとする美少女キャラクターたちをチョコレートとするならば、ハードかつワイルドなミリタリー&暴力描写はポテトチップスに相当する。一見正反対にも思える要素同士が融合することによって互いの臭みを打ち消し合い、魅力を引き立て合うという寸法だ。その結果、いつまででも食べ続けられてしまうという一種の魔力のようなものが発現するのである。
“萌えミリ”の系譜
ちなみに“美少女×ミリタリー”を描くジャンルは俗に“萌えミリ”などと呼ばれ、一般的には「ストライクウィッチーズ」のヒットによって広く認知され、「ガールズ&パンツァー」や「艦隊これくしょん -艦これ-」などによって定着したジャンルと考えられている。近年でも「リコリス・リコイル」や「ブルーアーカイブ -Blue Archive-」といったヒット作がコンスタントに生み出されているほか、ジャンルとして確立する以前にも「セーラー服と機関銃」などの例も点在したことから、常に一定数の需要を抱える定番モチーフであると考えていい。
「beautiful place」に果たして“萌え”要素が含有されるのかどうかについては大いに議論の余地があるものの、基本的には本作も“萌えミリ”の系譜に含まれるものと位置づけて問題ないはずだ。よって、同ジャンルの愛好家諸氏にはぜひとも一度お試しいただきたいところである。一般的な“萌えミリ”作品とはひと味もふた味も違う、新たな喜びがきっと得られることだろう。
炸裂する松本次郎ワールド
本作を読む際の注意点としては、物語序盤において世界観についての説明があまりなされないまま問答無用でストーリーが進行していく点が挙げられる。それゆえに取っつきづらさを感じる読者もいるかもしれないが、「よくわからないうちにどんどん物語に引き込まれていく」という特殊な快感を味わえるので心配は無用である。
アクションシーンにおける特徴的な描写についても特記しておきたい。“素早い動き”を表現するラフなタッチはあたかもカメラがブレているかのような躍動感を生んでおり、ある種の映像的なイメージとして鮮烈に飛び込んでくる。
また、シモンの教官役を務めるツインテールの少女・高阪モモコを筆頭に、登場するキャラクターの多くが性格破綻者であることも非常にユニークなポイントだ。彼女たちの言動にはエキセントリックなものが多い一方で、なぜか生々しい説得力に満ちており、それが不思議な実存感と納得感につながっている。
ほかにも、緻密に構築された世界観設定や銃火器類の丁寧な描き込み、先の読めないスリリングな展開など、本作には“松本次郎ワールド”としか言いようのない要素が満載である。一度足を踏み入れたが最後、その唯一無二の魅力から抜け出せなくなることだろう。ぜひともチョコレートとポテトチップスを交互に頬張りながら、じっくりと読み進めてみてほしい。
関連記事
松本次郎のほかの記事
関連商品