アニメスタジオクロニクル Vol.19 タツノコプロ 伊藤響

アニメスタジオクロニクル No.19 [バックナンバー]

タツノコプロ 伊藤響(代表取締役社長)

新しいアニメーションに常に挑戦していく、タツノコプロの伝統

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「ポルプリ」「キンプリ」……生み出される新たな愛される作品

伊藤氏が社長就任からの2年で特に印象に残っている作品があるという。2023年に公開された、ポールダンスを扱う「劇場版 ポールプリンセス!!」と、2024年公開の「KING OF PRISM -Dramatic PRISM.1-」だ。

「タツノコは長く続けた『プリティーシリーズ』でモーションキャプチャを利用した3DCGの技術を培ってきましたが、『ポールプリンセス!!』は、そこで責任者をやっている乙部善弘が企画したオリジナルの映画です。私が社長になる前にスタートしていた企画ですが、純粋に自慢できる出来だし、観た後すぐに『すごいね』と褒めちぎりました。

「KING OF PRISM -Dramatic PRISM.1-」キービジュアル (c)T-ARTS/syn Sophia/エイベックス・ピクチャーズ/タツノコプロ/KING OF PRISM Project

「KING OF PRISM -Dramatic PRISM.1-」キービジュアル (c)T-ARTS/syn Sophia/エイベックス・ピクチャーズ/タツノコプロ/KING OF PRISM Project

『KING OF PRISM』も『プリティーシリーズ』から生まれたキャラクターたちの映画ですが、今年3月の上映会で新作の発表をしたときに、ファンの方々が泣いていらして、予想していた以上の反響で非常に驚きましたし、それだけファンの方々が待っていてくださる作品やキャラクターが新たに生まれていると、改めて実感しました。(インタビュー後、公開された『KING OF PRISM -Dramatic PRISM.1-』は大ヒット上映中です)

「劇場版 ポールプリンセス!!」キービジュアル(c)エイベックス・ピクチャーズ / タツノコプロ / ポールプリンセス!!製作委員会

「劇場版 ポールプリンセス!!」キービジュアル(c)エイベックス・ピクチャーズ / タツノコプロ / ポールプリンセス!!製作委員会

時代とともに愛されるキャラクターはどんどん変わっていきます。ですが根底にある、観客や視聴者の方々に感動や勇気を届けたいという思いは変わらないでしょう。もちろん漫画や小説など原作のある作品もたくさん作っていきたいと思いますが、タツノコ=オリジナルというイメージもありますし、愛されるキャラクター、愛されるオリジナル作品を作っていく姿勢はこれからも大事にしたいです」

BAKKEN RECORDを中心に制作力を高めていく

タツノコプロでは社内レーベルとして「BAKKEN RECORD」が2019年に設立された。スキーのジャンプ競技用語で「そのジャンプ台での最長不倒距離」を示す言葉を冠したこのレーベルは、これまで「擾乱」や「もういっぽん!」といったTVアニメから、「パンドラとアクビ」や「僕が愛したすべての君へ」などの映画を制作してきた。現在は、ボウリング部の女子高生たちを描くTVアニメ「Turkey!」の放送を控えている。

TVアニメ「Turkey!」ティザー映像

「ファンの方々に感動を届けたいという点ではタツノコプロ名義の作品と同じ志ですが、BAKKEN RECORDは、これまでの到達点を超えるようなクオリティの実現、もしくは新しいチャレンジをすることを目的としたレーベルです。タツノコほど伝統があると、時に歴史に押しつぶされるというか……例えば、過去の作品をリメイク・リブートすることに偏ってしまったり。もちろん大事なことですが、それだけに頼ってしまうと新しい挑戦はできません。

タツノコプロ名義の作品が親近感や安心感を持って視聴者に届けるものなら、BAKKEN RECORDでは尖った方向を突き詰めて、エッジを立てて届けるくらいクオリティにこだわったものを送り出したいです。クオリティの高さで世界から認められているスタジオに我々も負けたくないし、肩を並べられるよう制作力を高めるためのBAKKEN RECORDです」

タツノコプロの様子。

タツノコプロの様子。

ここまで記してきたように伊藤氏から語られる言葉の志は高い。彼はタツノコプロの今後にどんな思いを抱いているのだろうか。

「私が就任してから仕掛けた作品はまだ世に出ていませんが、この2年でいろんな種まきをしてきたし、これからも少しずつしていきたいです。個別の作品だけではなく、やっぱり今いるプロデューサーやスタッフがやりたいものを世の中に発信して大ヒットさせるための環境を作るのが自分に課せられた使命だろうし、非常に優秀な後輩がたくさんいるので、いかに彼らにいい状況でバトンをつなぐかを考えています。そうすればきっとタツノコの代表作になり得るものが今後もたくさん出てくるんじゃないでしょうか。

タツノコプロの新しいスローガン。

タツノコプロの新しいスローガン。

タツノコプロは、2024年「甲辰の年」(勝手にタツノコの年と決めました(笑))だからこそ、創立記念日に合わせて新しいスローガンを考えました。

私たちは挑戦し続けます。ご期待ください。

伊藤響氏

伊藤響氏

伊藤響(イトウキョウ)

1987年日本テレビに入社。「それいけ!アンパンマン」「ルパン三世」「美味しんぼ」などアニメのプロデューサー、「ゴールデンボウル」「デスノート」「家売るオンナ」などドラマのプロデューサーを経て、2017年より映画事業部長として「キングダム」「今日から俺は!!劇場版」「竜とそばかすの姫」などを担当。2022年6月タツノコプロ代表取締役社長に就任、現在に至る。

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読者の反応

和田みさき @wada_misaki

https://t.co/SmIeDrYOCI
>若い人と話をしていて『タツノコ作品が好きでした』と言われて『どの作品?』と聞き返すと、2011年から始まった『プリティーシリーズ』と答える人が非常に多い。

まぁ、ああみえて、プリティーはタツノコ最長シリーズだからなぁ。

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