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コミティア―マンガの未来のために今できること 第3回 [バックナンバー]

コミティア作家座談会 シギサワカヤ×田中相×釣巻和×西義之

マンガが好きな人全員に関係ある話だと思ってほしい

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コミティアに出てなかったら見つけてもらえなかったかもしれない(釣巻和)

──コミティアがデビューのきっかけになる機会が増え、デビューを目指している人にとって、今コミティアは重要な存在になってきてますよね。

田中 私はまさにコミティアでデビューした人で。最初に合同誌を出したときに編集者さんから名刺を何枚かいただいて、次に個人誌を出したときに「賞に出していいですか」と言われ、そのままデビューした感じ。だから本当にコミティアがなかったらマンガ家になってなかったと思います。出張編集部には怖くていけなかったですし(笑)。もしコミティアがなかったら、今でもデザインの仕事をしてただろうなと思います。

釣巻 私も似てますね。月刊アフタヌーンに持ち込みに行ったことがあったんですが、そのときに持っていった原稿がコミティアで出した本だったんですよ。「とりあえずこれ四季賞に出しとくね」って言われて、そのときの四季賞で作品を見てくれた編集者のうちの1人が、コミティアで私の本を買ってくれていたみたいで、その人が担当になってくれたんです。「君、これコミティアで出してなかった?」って聞かれて、「出しました」って言ったら「図太いね」と言われました(笑)。

釣巻和「聖血の海獣」3巻

釣巻和「聖血の海獣」3巻

田中 全然ありでしょ(笑)。

釣巻 (笑)。でも、もしコミティアに出てなかったら見つけてもらえなかったかもしれないなって思います。

シギサワ 私も17年前に初めてコミティアに出たときに、今、楽園で担当してくださる編集さんがスペースにいらして。パラパラって見て「あなたの本いいですよ」と笑顔で名刺を渡してくださったんです。そこから何か話が広がるのかと思ったら、すごい勢いで去っていったんですけど(笑)。

田中 狩り中だったのでしょうか(笑)。

シギサワ そうだったんでしょうね(笑)。私も「白泉社を騙った何かかもしれない」と思って用心しながら帰ったんですけど、家で好きな作家さんの画集を見ながら「そう言えばこれも白泉社だったな」と思って奥付を見てたら、その名刺の編集者さんの名前が書いてあって。こりゃすごいぞと思って、名刺をもらったっていううれしさを胸にがんばろうって思ったのを覚えています(笑)。でも結果的に、巡り巡ってその編集者に今お世話になっていて、いろんなご縁ってあるんだなって感じます。

西 編集さんって貪欲ですよね。僕もコミティアでいろんな人に話しかけてもらって。「いつでもいいので描いてください」って5年間ぐらい言われ続けて、とうとう折れて描き始めて。

釣巻 5年はすごい! その編集さん、耐えましたね。

西 まあまだ原稿は終わってないんですけどね(笑)。だから新人マンガ家さんにとってはもちろん、僕みたいな中堅でいろいろ苦労しているマンガ家さんたちにもおすすめしたいです。きっと活力を得られるはずですし。

田中 私も、商業誌の仕事が途絶えたらコミティアで本を出そうと思ってます。デビューのためだけじゃなくて、ずっとあってほしいんですよ。切実に。

釣巻 本当になくなってほしくない。

コミティアは編集者と作家の関係を変えたのではないか(田中相)

──コロナの影響でコミティアの継続が難しいということが7月下旬に発表になりました。それを知ったときは、どう感じました?

田中 これは応援しなきゃと思いました。

釣巻 クラウドファンディングをやるなら、絶対に参加したいってすぐに思いました。二次創作もそうですけど、イベントってただマンガを売り買いするだけの場所じゃないから。通販では変わりにならないんですよ。

西 僕もまったく同じです。絶対に支援しようと。ご恩がすごいので。

シギサワ 「実家が大変なことに!」っていう感じでした。私の中でコミティアって実家みたいな感覚で、今は実家から出て仕事してるけどたまには帰りたいし、ちゃんと生き生きとしたコミティアでいてもらわないと困る。言い方は悪いかもしれないですけど、コミティアがなくても死なないんですよ。マンガがなくても死なないし、マンガを描かなくても死なない。でも生きていくなら私はマンガを描いていたいし、コミティアがあってくれないと嫌なんですよね。だから、とにかくコミティアには生き残ってもらって、数年後に「そういうこともあったよね」って笑ってもらわないと困るんです。

シギサワカヤ「お気に召すまま シギサワカヤ短編集」

シギサワカヤ「お気に召すまま シギサワカヤ短編集」

西 僕はコミティアを守ることはマンガ文化を守ることだと思っていて。マンガ文化は人類の歴史の中ではまだ歴史は短いけど、すごいスピードで庶民に広がってきたものだし、才能のあるマンガ家さんをたくさん生み出してきた。コミティアも、そんなマンガ家さんたちの創作する力の一端を担ってきたと思う。だからお金がないことを理由にその文化が潰えるのは、大変な未来への損失になると思うんです。

田中 マンガは読んでるけどコミティアには行ったことがない方って、けっこう多いと思うんですよ。そういう方は、きっとコミティアが自分の読んでいるマンガにどれぐらい関係があるかわからないかもしれない。でも多分、少なからず関係があるんです。それは西先生が言うような文化面も大きいですし。私はコミティアは編集者と作家の関係を変えたのではないかと思ってるんです。やっぱり自分で持ち込んで仕事をもらうのと、スカウトされて仕事をするのって、パワーバランスが違う。新人であっても、マンガ家と編集さんは対等な関係です。編集者と作家の意識を変えるという意味でも、ものすごくコミティアは大事な役割を果たしてくれていると思う。

西 確かに、僕もそのとおりだと思います。

田中 だからコミティアは「なくなっても大丈夫」っていうものではないんですよ。投稿や持ち込みに戻ればいいじゃん、っていう話では全然ない。だからコミティアを知らなくても、マンガが好きな人全員に関係ある話だと思ってほしいなって。

釣巻 最近は同人誌で出した作品がそのまま商業のコミックスになることも多いですからね。そういう作品が実はコミティアで生まれてるんだよって。

西 僕はまだコミティアに参加してから6年しか経ってないですけど、たった6年でもここは大変な場所だなと感じたので。「ハリー・ポッター」のダイアゴン横丁ぐらい大事。

釣巻 それはめっちゃ必要!(笑)

西 だから、マンガを好きな人は全員1万円ぐらい出そう(笑)。

一同 (笑)。

西 でも本当に、必要なものを残すための最低限の経費だと考えていただきたいです。

田中 マンガ好きの皆さん、よろしくお願いします!

西 なんか僕、今コミティアの空気を感じて、ものすごく感動しています。レアなお客さんが来る話とか、編集者の話とかさっきの豆本とか、もう涙ぐんでますよ(笑)。皆さん今日お会いしたばかりですけど、非常にシンパシーを感じます。あとでTwitterのアカウントをフォローさせていただきます(笑)。

一同 (笑)。

釣巻 私ずっとジャンプで西先生の作品を読んでいたので、今日弟にすごい自慢できるなって思ってます(笑)。

西 わ! うれしいな(笑)。

シギサワカヤ

関東生まれ。2004年、スニーカー文庫(角川書店)の「憐 Ren」挿絵イラストにてデビュー。2006年に白泉社より単行本「箱舟の行方」を上梓、以降数誌で連載。2009年より楽園 Le Paradis [ル パラディ](白泉社)に参加。代表作に「溺れるようにできている。」「お前は俺を殺す気か」など。現在は楽園にて「初恋ディストピア」、楽園web増刊にて「諍い▽ハーレム(▽はハートマーク)」「さみしさの音がする」を連載中。

田中相(タナカアイ)

2010年3月に創刊されたITAN(講談社)にてデビュー。同誌にて2012年より「千年万年りんごの子」を連載し、第16回文化庁メディア芸術祭にてマンガ部門新人賞を受賞。最新作「LIMBO THE KING」は全6巻が発売中。

釣巻和(ツリマキノドカ)

1987年生まれ。2006年秋に講談社のアフタヌーン四季賞に準入選。代表作に「童話迷宮」「くおんの森」「聖血の海獣」などがある。現在はSouffleにて久住昌之原案による「のの湯」を連載中。

西義之(ニシヨシユキ)

12月27日生まれ。東京都出身。赤マルジャンプ2004 SPRING(集英社)に掲載された読み切り「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」でデビュー。2004年から2008年にかけて、週刊少年ジャンプ(集英社)にて「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」を連載した。現在は「エルフ湯つからば」をモーニング・ツー(講談社)、「ライカンスロープ冒険保険」をとなりのヤングジャンプにて不定期連載中。

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