ヘッダーイラスト / 旧都なぎ(ALGL)

コミティア―マンガの未来のために今できること 第3回 [バックナンバー]

コミティア作家座談会 シギサワカヤ×田中相×釣巻和×西義之

マンガが好きな人全員に関係ある話だと思ってほしい

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新型コロナウイルスの影響により、存続の危機にある自主制作同人誌展示即売会・コミティア。コミックナタリーでは、そんなコミティアの置かれている現状と抱えている問題、そしてコミティア存続のために何ができるのかをユーザーに伝えるべく本企画を始動させた。第3回では、コミティアとの縁のある作家による座談会を実施。シギサワカヤ田中相釣巻和西義之の4名に、コミティアとの関わりや作家の立場から考えるコミティア、そしてマンガ業界におけるコミティアの存在意義について語り合ってもらった。

取材 / 増田桃子 ヘッダーイラスト / 旧都なぎ(ALGL)

印刷所の人に「コミティアがいいんじゃないですか」と言われて(西義之)

──今回、コミティアに縁のある作家さんにお集まりいただきました。まずは皆さんのコミティア初参加の思い出について聞かせていただけないでしょうか。

シギサワカヤ 私は小さい頃からマンガ家になりたくて、学生時代に6回ぐらい投稿をしたんですけどずっと選外で。その後ゲーム会社に就職して、グラフィックの企画みたいな仕事をしていたんですが、そこでもとにかくリテイクばっかりで。絶望的な気持ちになって会社を辞めてしまったときに、コミティアに初参加したんです。会社員時代はマンガを一切描いてなかったので、描き方も忘れてましたし、お話もぼやけていて描ける自信がなかったんですけど、申し込んでしまえば何か描くだろうと(笑)。背水の陣で参加したような形でした。

田中相 私は10年くらいデザインの仕事をしていて、それまでマンガを描いたことはありませんでした。でもあるとき、「ずっとマンガを描いてみたくて」って友人に話したら、その方がコミティアを教えてくれたんです。二次創作のイベントは行ったことがあったんですけど、コミティアのことは知らなくて。だからその友人の友人が参加してるのを見に一般参加したのが最初でしたね。その後、その参加者の方と友達になって合同誌を出そうって話になり、そこで初めてマンガを描きました。

釣巻和 私も最初は一般参加でした。中3のとき、学校の友達に「オリジナル作品のイベントがあるよ」って教えてもらって。相さんと同じく、二次創作のイベントには行ったことがあったんですけど、オリジナルは行ったことはなかったので。

田中 中学生?

西義之 すごい早い(笑)。

釣巻 確か2月のコミティアだったんですけど、お年玉の残りで買い物しようと思って、予算5000円って決めて。ステッカーとか、あんまり商業誌や本屋さんでは買えないような、当時は知らなかったけど箔押しとか加工がすごいマンガを買って帰った覚えがあります。めちゃめちゃ楽しかった。

──サークル参加をしたのも中学生のときですか?

釣巻 いえ、当時の私にはブース代がちょっと高くて。高校生になってから、出たいって言ってた友達と一緒に参加しました。

西 皆さんコミティア歴が長いですね。僕はつい6年前までコミティアの存在も知りませんでした。二次創作の同人誌を集めるのは好きだったのでコミケは知ってたんですけど。

──何がきっかけでコミティアに参加することに?

西 ずっと商業で仕事をしてたんですが、連載がポシャっていくにつれてどんどん方向性を見失ってしまって(笑)。自分は一体何をやりたいんだろうと、本当の自分は何を描きたいんだろうって追い込まれてたときに、同人誌を出してみようと思ったんですよ。出版社からの収入もほぼ途絶えてましたし、これで駄目だったら自分はマンガ家としては終わりかなと思って。でも(入稿した)印刷所の人に「(出展する)イベントはどちらですか?」と聞かれて。「イベントって何?」って(笑)。

西義之「エルフ湯つからば」1巻

西義之「エルフ湯つからば」1巻

一同 (笑)。

西 で、印刷所の人に「コミティアがいいんじゃないですかね」と言われ、「コミティアって何?」みたいな感じ。

田中 印刷所の方にコミティアを薦められたんですね(笑)。通販で売るつもりだったんですか?

西 いや、通販できるかどうかもよくわからないのに本を刷ったんですよ(笑)。

田中 えー! すごい(笑)。

西 きっと、とらのあなとかが請け負ってくれるだろうと思って(笑)。

一同 (笑)。

西 入稿したのが10月ぐらいだったんですが、2月にイベントがあるらしいぞと。よくわからないけどじゃあ2月に出てみようかとなり、本を3冊ぐらい作ってコミティアに行ったんです。それが初参加でした。

コミティアには、本当にマンガを読みたい人と描きたい人が集ってる(シギサワカヤ)

──皆さん、それぞれ違って面白いですね。ではコミティアについてはどんな印象をお持ちでしょうか。

シギサワ コミティアは、本当にマンガを読みたい人と描きたい人が集ってるなって感じますね。

釣巻 皆さんこだわって本を作ってる感じしますよね。イラストが好きな人もいれば、無骨にマンガを出してる人もいたり。私、相さんとは以前からお友達なんですけど、知り合う前、コミティアに一般参加したときに、「かわいい絵だな」と思って立ち止まったスペースでペーパーをもらって帰ったんですよ。後日、知人を介して相さんを紹介されたときに、同人誌を見せてもらって「あのときのペーパーの人だ!」ってなって。印象に残ってます。

田中 釣巻さんとお友達になったのもコミティアがきっかけですよね。

西 私はコミティア初参加のときに、Twitterで告知をしたらファンの方がたくさん来てくださって。本当にうれしかったんですが、スペースにかなり人が集まってしまって、周りのサークルさんたちに迷惑かけちゃったんですよ。でも近隣のサークルさん、皆さん優しくて手伝ってくださるんです。我々がてんてこ舞いでわけがわからなくなってるところを「販売はこうしたらいいですよ」とか「列はこうしたほうがいいですよ」って、スタッフさんも含めて皆さんが助けてくれて。なんて優しい人たちなんだろうかと。

シギサワ 私も初参加のときイベント当日の朝まで作業してて、製本を会場でやったんですよ。一生懸命ホチキスでガチャコンガチャコンって(笑)。そしたら初参加の私に、周りの人たちが「手伝いましょうか?」って声をかけてくださって。「なんて優しいの」とハートフルな気持ちになったのを覚えてます。でもその後、初めて立ち読みの人が来てくださって舞い上がっていたら、最後まで読んで「怖いですね」って笑顔でおっしゃって、買わずに帰ってしまって……(笑)。

一同 (笑)。

田中 コミティアの一般参加者さんはじっくり買われる印象があります。

シギサワ でも私の中では「(自分のマンガに)何かを感じてくれる人がいたんだ」と思って、すごくうれしくて。買いに来てくださる方の眼力というか、楽しいものを開拓するぞっていう……。

田中 ハンター的な(笑)。

シギサワ はい(笑)。売ってる側としても、「一生懸命描いたので見てください」っていう気持ちが強いので、厳しい目も励みになるというか、刺激になります。

コミティアでしか出会えない本がある(西義之)

──今日は皆さんに「コミティアで買った同人誌でコレ!という1冊」を教えてください、とお願いしていまして。

田中 私、用意してきました。さっき言った、私の初めてのコミティア参加に合同で出てくれた友人、柳田人徳さんの本です。「たまちゃんの新刊」というタイトル。これ、コミティアのことを書いたマンガなんですよ。中村さんのインタビューにも少し似た表現があったんですけど、一般参加者が血液で、サークル参加者が肉って書いてあるんです。2009年発行の本です。

「たまちゃんの新刊」

「たまちゃんの新刊」

シギサワ RARARUというサークルの奥山に猫又さんっていう作家さんがいらっしゃるんですけど、その方の「海中展望台」という同人誌です。当時自分が読んでいた商業誌では見かけない詩的な絵と台詞と文の本で「マンガってこんな風に描いてもいいんだ」という表現の奥行を感じた同人誌で、少なからず影響を受けました。コミティア実行委員会が編集・発行した本でもあったので、コミティアを知ったきっかけでもあるので、すごい印象に残っててます。

西 僕は鈴木小波さんのパース本かな。マンガの描き方をあんなにフランクに説明してるマンガってなかなかないですから、画期的だなと思って。「ルールなんてどうだっていいんだよ」って本ですからね、商業では売ってないですよ(笑)。

田中 へー面白そう! 読んでみたい。

「感覚で描くパースと魚眼パースの本」

「感覚で描くパースと魚眼パースの本」

釣巻 私、用意してませんでした……。今、本棚見ようかな。

田中 すごい、ドキュメンタリー(笑)。

――リモートでの取材ならではですね(笑)。

釣巻 コミティアで小さい本を買うのが好きなんですよ。豆本とか。小さい本ってリボンとかついてたり、ジャバラになってたり。私が買ってるのはほとんどがコピー本なんですけど、1冊1冊手製本されてるのが好きで。だからこの1冊っていうよりは、コミティアでしか買えない豆本が好きですね。

西 ああ、佇まいが完全にコミティアですよね。コミティアでしか出会えない本。

商業誌の油断できなさと、コミティアの油断できなさってちょっと質が違う(シギサワカヤ)

──商業デビューされてからもコミティアに参加される作家さんは多いですよね。商業誌で描くのと同人誌で描くのは、やはり違いがあるんでしょうか。

西 まったく違う、とまでは言わないけれど、目的が違うというか。商業では売れないといけないっていう気持ちが強いですし、読者からの要望や雑誌のテイストに合わせたりする。でも同人誌は自分と向き合う作業ですよね。編集者と一緒に作って締め切りを守って、ブラッシュアップしていく商業誌と、イベントに向けて1人でマンガを作る同人誌ではやっぱり違うなと思います。

田中 私も違うと思います。昔、釣巻さんとティアマガ(ティアズマガジン)のインタビューを受けたとき、「商業誌でやるのも同人誌でやるのも変わらない」って答えたんですけど、今は違うなと思っていて。商業誌は編集さんがいて、その方がOKしたものが載るんですよ。これって同人誌にはないもので。同人誌は自分のOKが出るかどうか。西先生がおっしゃったように同人誌は自分と向き合う作業ですが、商業誌は他者と対話してるような感覚が強いなって思います。

田中相「LIMBO THE KING」6巻

田中相「LIMBO THE KING」6巻

西 同人誌ってマンガを作ることの大元みたいなものをたどることができると思っていて。僕は商業でやってきた時間が長いので、自分の良さを見失う時間もあった。でもコミティアで本を出したことで、自分を取り戻していったような感覚があります。

田中 コミティアって買いに来られる方もマンガ読みの方が多いですし、作家の持ち味みたいなものが強く出てる作品が好まれる傾向があるかもしれませんね。

シギサワ 商業誌の油断できなさと、コミティアの油断できなさってちょっと質が違うんですよね。商業誌は数字や人気を気にしないといけないけど、コミティアはコミティアで、目の前で本を読まれてリアクションされるっていう残酷な瞬間がある(笑)。でもどちらも必要なんですよ。買ってくださった方が目の前で楽しそうにしていると、それだけでこの先しばらく描いていけるなって思います。エネルギーを充填できる感じがあります。

釣巻 皆さんのお話に共感しかないんですが、ちょっと違う観点から話すと、商業誌ではものすごく売れないとイラスト集とかグッズって出してもらえないじゃないですか。でもコミティアだったら気軽に自分が好きなものが作れるんです。私はデビューしてからは、コミティアで本を出す機会は減ってしまったけど、商業で描けないような短い短編を描いたり、出してもらえないようなグッズを作ったり、遊びっぽい感じで活動していて。それは単純に楽しいからやってるだけなんですよね。とにかく楽しい。本を作るのって楽しい。「お店屋さんごっこ」から始まってると思います。

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コミティアに出てなかったら見つけてもらえなかったかもしれない(釣巻和)

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