“新しい人 広い場所”目指し「フェスティバル/トーキョー17」全演目発表

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「フェスティバル/トーキョー17」の全プログラム発表記者会見が本日7月18日に行われた。

「フェスティバル/トーキョー17」の全プログラム発表記者会見より。

「フェスティバル/トーキョー17」の全プログラム発表記者会見より。

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市村作知雄

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会見冒頭では、ディレクターの市村作知雄が挨拶。「今回の『新しい人 広い場所へ』というコピー通り、アジアシリーズの中国特集やまちなかパフォーマンスに新しい顔ぶれが入ってきています。今年は海外作品がすべてアジアのアーティストによるものなんです」と語り、「これまではメインプログラムとなる作品はヨーロッパから持ってきていましたが、アジアのレベルは私の想像以上のスピード感で、素晴らしいものがたくさんあります。そこでヨーロッパの作品をメインにするのをやめました。また、財政的な事情もあります」と説明。また新たな試みとして千葉・松戸のアーティストインレジデンス、PARADISE AIRと組むことや、イスラエル・ユダヤ人演出家がパレスチナ問題をパレスチナ・アラブ人の目線から描いた「パレスチナ、イヤーゼロ」を急遽プログラムに加えたことなどを明かした。さらに挨拶の最後で「F/Tが終わるんじゃないかという噂もありますが、終わりません。……と僕が発言することで起き得る事態がありますが、そこへの対処も覚悟している、ということだけ、今はお伝えしておきます」と覚悟を述べた。

続けて副ディレクターの河合千佳が登壇し、国内外のアーティストによる14演目の主催プログラムと、関連企画などを紹介。さらに海外アーティストによるビデオメッセージが紹介された。

柴幸男

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その後、参加アーティストの数名が会見場に姿を現した。東京の劇場で新作を上演するのは3年ぶりとなるままごと柴幸男は、「距離をテーマにした作品を作りたいとずっと思っていました」と語り、その動機として東日本大震災のときに自身が東海にいて震災に対する“体感”に溝があったこと、また自身の活動が多地域に及んでいること、距離的には遠い海外のニュースもすぐ、身近に感じられるようになったことなどを挙げる。「すごく遠くにあることなのに、情報の距離感としては目の前にあるように伝えられたりする。人間のサイズは変わらないのに情報の速度が上がって偽りの距離感が詰まっていくことがずっと気になっていて。演劇的な作業として、時間や距離的に遠くにあることと向き合う作品ができないかと思っていたんです。その中で、隣り合ってはいるけれど間には壁が存在する2つの劇場(東京芸術劇場 シアターイースト、シアターウエスト)で、同じ作品を同時に上演することになりました。台湾のアーティストと一緒に作るようになったのは偶然ですが、島国という点で共通点を感じます。来年、台湾でも同じように隣り合った2つの劇場で上演して、その次の夢としては、台湾と東京で上演できないかと思っています」と野望を語った。

松田正隆

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昨年2016年の「F/T」でも同タイトル「福島を上演する」を上演したのはマレビトの会松田正隆。福島市を取材した複数の作家による戯曲を上演する、というコンセプトは今年も変わらない。「昨年は4日間4ステージでしたが、今年は12回。すべて違う内容の作品になると思います。断片的なエピソードやスケッチ、コンテを集積したものを、上演回12回の中に配置し直し、福島の人たちの情動のリストを作っていくということになると思います。“当事者の信憑性を問う”という形だけではない問いが指し示せることが、演劇ではないかと思います」と思いを述べた。

なお、松田は「実験と対話の劇場ー新しい人 / 出来事の演劇ー」ではキュレーターも務める。会見場には参加アーティストも出席しており、司会者によって演劇計画・ふらっと、シラカン、関田育子、玉城大祐が紹介された。松田は「若い人を評価するとか発掘するとかではなくて、作品が創作できる場所を提供し、検証するってことができたらいいなと思っていて。そこでマニフェストとして『出来事の演劇』を掲げたんですが、1回起きた出来事や事件を再現する表象としての演劇ではなく、既存の意味ではない、新たな感覚を生み出すような、見えるものと言葉の組み合わせが変わるような、ある意味、無意味で非有機的なことが起きれば」と意気込みを述べた。

チェン・ティエンジュオ

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アジアシリーズに参加するチェン・ティエンジュオは、大胆な絵柄とデザインが目を引く衣装で登場。「僕が日本で作品を上演するのは初めてです。皆さんにとっては謎のアーティストだと思いますが、ここではあえて、その“謎のアーティスト”として終わりたいと思います。乞うご期待ください」と挨拶し、会場から笑いを誘う。

「最初は池袋でカレル・チャペックの作品をやろうと思っていたのですが、急遽松戸でどう?と声をかけてもらって、『ぜひ松戸に行かせてください』と思いました」と語ったのは中野成樹。葛飾辺りで生まれ、川の向こうに県境を感じながら、江戸川の土手で遊んで育ったという中野は、これまでも常に“東京”について考えながら創作してきたと言い、「松戸と言われて、東京を川の向こうから考えるいいきっかけだなと思いました」と述べる。作品については「半七って2分の7ですから整数で割り切れないんですけど、半八は割り切れる。割り切れることと割り切れないこと、というようなことを考えていきたい」と意気込みを語った。

中野成樹

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「アドベンチャーBINGO!!」を担当する中野成樹+フランケンズ福田毅は、「お客さんとコミュニケーションをもっとダイレクトにとりたいなと思って」、ビンゴゲームを取り入れた作品を作り上げる。観客は自分のビンゴカードを手に、福田が創作したエピソードの番号を選択しながら、ビンゴゲームを楽しみつつ、その場そのとき限りのパフォーマンスを体験する。「物欲につられてビンゴするもよし、作品のタイトルで面白そうなものを選んでもよし。僕もどのような作品になるのか未知数ですが、それも含めて楽しいクリエーションができれば」と笑顔で話す。

俳優、美術家の遠藤真衣は、2015年に制作した「アイ・アム・フェミニスト!」の続編を発表。今回、自身の夫と“フェミニストとして”契約結婚をする。「フェミニストが恋人にプロポーズされてから、それをどう受けていれていくのか、というプロセスをやりたいと思います。その中心が契約書の作成ですが、ゲーテ・インスティトゥートに10月から夫と1カ月滞在製作し、契約書を作成します。そのプロセスを映像で見せるほか、別の空間では結婚式をやりたいと思っています。結婚にまつわる女性の抑圧はフェミニスト的にはNGですが、私自身は結婚して2年になるので、その矛盾も明らかにしたいです」と明かす。

左から北川陽子、山崎皓司。

左から北川陽子、山崎皓司。[拡大]

写真家の森栄喜は、家族をテーマにした映像作品を創作、展示を行う。「今回のパフォーマンスでは僕自身も被写体といいますか、僕と男性と子供、3人のユニットというか家族のような集団を結成しまして、街中の人々に家族のポートレートみたいなものを撮影してもらい、そのやりとりの中で僕たち3人が、家族のように認識されていく、肯定されていく記録を収めた作品を作りたいと思っています」と構想を述べる。タイトルについては直訳すると『家族の回復、家族を取り戻す』ってことになりますが、作品を通して改めて家族についてとか、未来像について考えていけたら」と構想を述べた。

最後は「F/T09秋」にも登場したGORILLA(山崎皓司)が登場。俳優がGORILLAを演じることにより「人間とは何か」に迫る本作について、“通訳”として同席した演出の北川陽子は、「ミュージシャンの音楽に合わせて踊る私の姿を見に来てください」と、大きなリアクション付きの“ゴリラ語”を同時通訳した。さらに司会者が、「人間とはなんでしょうか」と問いかけると、「ウッ(人間とは)」、「ホッ(演じる生き物です)」とGORILLAから含蓄ある返答があり、会見は締めくくられた。先行割引チケットは8月23日10:00から26日19:00まで受け付け、一般前売りは8月27日10:00に開始する。

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「フェスティバル/トーキョー17」

2017年9月30日(土)~11月12日(日)
東京都 東京芸術劇場、あうるすぽっと、PARADISE AIR ほか

「Toky Toki Saru(トキ トキ サル)」

2017年9月30日(土)・10月1日(日)
東京都 南池袋公園 ほか
コンセプト・演出:ピチェ・クランチェン

「わたしが悲しくないのはあなたが遠いから」

2017年10月7日(土)~15日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターイースト、シアターウエスト
作・演出:柴幸男

マレビトの会「福島を上演する」

2017年10月7日(土)~15日(日)
東京都 シアターグリーン BASE THEATER
作・演出:マレビトの会

「パレスチナ、イヤーゼロ」

2017年10月27日(金)~29日(日)
東京都 あうるすぽっと
作・演出:イナト・ヴァイツマン
出演:ジョージ・イブラヒム

アジアシリーズvol.4 中国特集「チャイナ・ニューパワー ー中国ミレニアル世代ー」

「刀利天」
2017年11月10日(金)・11日(土)
東京都 あうるすぽっと
構成・演出・美術:チェン・ティエンジュオ
※「刀」はりっしんべん付きが正式表記

「恋の骨折り損ー空愛(1)場ー」
2017年10月28日(土)・29日(日)
東京都 SuperDeluxe
作・演出:スン・シャオシン

「秋音之夜」
2017年11月3日(金・祝)・4日(土)
東京都 SuperDeluxe
出演:リー・ダイグオ、シャオ・イエンペン、ワン・モン、ノヴァハート

トーク:写真、ユースカルチャー、音楽、ファッション
「中国写真の世界ーミレニアルズの写真家と自費出版の現状」
スピーカー:イエン・ヨウ
「インディビジュアライゼーション:チャイナ・ユースカルチャーの流れ」
スピーカー:チャン・アンディン
「ミレニアルズの音楽家ー彼らは世界に何をもたらすのか?」
スピーカー:シェン・リーホイ
「中国ファッション界とミレニアルズのデザイナーの現状ー彼らの想いとは?ー」
スピーカー:リュウ・シンシャー

まちなかパフォーマンス

中野成樹+フランケンズ「半七半八(はんしちきどり)」

2017年10月6日(金)~9日(月・祝)
千葉県 PARADISE AIR、FNACLUB(受付) ほか
原案:岡本綺堂「半七捕物帳」より
作・演出:中野成樹

「アドベンチャーBINGO!!」
2017年10月14日(土)~11月11日(土)
東京都 東京芸術劇場 アトリエウエスト、あうるすぽっと ホワイエ
作・演出・出演:福田毅

「アイ・アム・ノット・フェミニスト」

2017年10月26日(木)~29日(日)
東京都 ゲーテ・インスティトゥート 東京ドイツ文化センター
作・演出・出演:遠藤麻衣

「Family Regained : ThePicnic」
2017年11月3日(金・祝)~
東京都 あうるすぽっと 会議室B、池袋西口公園
構成・演出・出演:森栄喜

快快「GORILLA~人間とは何か~」
2017年11月12日(日)
東京都 池袋西口公園
演出:北川陽子

「十字軍芝居ー三部作」

2017年10月14日(土)~16日(月)
東京都 池袋HUMAXシネマズ
監督:ワエル・シャウキー

「実験と対話の劇場ー新しい人 / 出来事の演劇ー」

2017年11月3日(金・祝)~5日(日)
東京都 あうるすぽっと
キュレーション:松田正隆
参加アーティスト:演劇計画・ふらっと、シラカン、関田育子、玉城大祐

アートプロジェクト・シンポジウム・その他

F/Tキャンパス

2017年10月6日(金)~9日(月・祝)

※そのほか連携プログラムあり

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松戸市 にぎわい創造課 @matsudo_kankou

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