ACIDMAN、バンドの核を露わにした2度目の武道館ライブ

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12月22日、ACIDMANが全国ツアー「ACIDMAN LIVE TOUR "A beautiful greed"」の最終公演として2回目となる日本武道館単独公演を行った。

ちなみにツアー中に一悟に仕掛けられたいたずらは、インフルエンザ予防対策のために配られた一悟専用のアルコール消毒液がローションにすり変わっているというもの。それが大木から明かされると、一悟は「どうりでいつまで経っても乾かなかったわけだよ!」と叫んだ。

ちなみにツアー中に一悟に仕掛けられたいたずらは、インフルエンザ予防対策のために配られた一悟専用のアルコール消毒液がローションにすり変わっているというもの。それが大木から明かされると、一悟は「どうりでいつまで経っても乾かなかったわけだよ!」と叫んだ。

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今回のツアーは、7月末に発表されたACIDMANの最新アルバム「A beautiful greed」を携えて全国各地で実施。そのファイナルを見届けるべく、この日会場には約8000人のファンが各地から足を運んだ。

客電が落ちるとアルバム「A beautiful greed」の冒頭を飾るインストナンバーが流れ始め、ライブの幕が厳かに上がる。そして曲がクライマックスに達したとき、メンバーが下手から登場。咆哮のような歓声に迎えられた3人は、「A beautiful greed」のジャケットで使用されていた絵柄と同じ絨毯が敷かれたステージに足を踏み入れた。

定位置についた3人がまず鳴らしたのは、「A beautiful greed」の2曲目を飾る「±0」。大木伸夫(Vo,G)の激しいギターとボーカルに共鳴するように、佐藤雅俊(B)と浦山一悟(Dr)もエネルギッシュなプレイで応える。その勢いを保ったまま「world symphony」を畳み掛けるように演奏し、武道館を自分たちのサウンドで染め上げていく。さらに激しさと切なさを同居させたサウンドが体を震わせる「Who are you?」、ジャジーなアレンジが美しい「Bright&Right」とアルバムからの楽曲を続けて演奏し、オーディエンスの熱狂を加速させた。

今やライブアンセムとなっている「FREE STAR」では、天井に吊るされた巨大なミラーボールから放たれた無数の光が宇宙空間のような景色を作り出す。オーディエンスはまばゆい光に目を細めながら、3人の紡ぎ出す優しい音に身を委ねた。

続いて1回目のMCがはじまり、一悟が「こんな年の瀬に、こんなに集まってくれてうれしいです。でもひとつだけ高望みしたいです。今まで行われた武道館のライブの中で、最も最高のライブにしませんか?」と呼びかけ8000人を煽る。オーディエンスもその思いに賛同するように力強く拳を上げた。

それに続いたのは、歌い出しから歓声が上がるほどの盛り上がりをみせた「Colors of the Wind」、軽やかなドラムのインタールードを挟み始まった「スロウレイン」、スクリーンに幻想的なオーロラの映像が映し出された「星のひとひら」などメロディアスでファンタジックなナンバーたち。映像にこだわりを持つ彼ららしく、絶妙なタイミングで差し込まれる映像や多彩な照明が楽曲の持つ世界観をより深みを与えた。「銀河の街」では、大木がアコースティックギターを手に歌い、佐藤はアップライトベース、一悟はシンバルの音色で楽曲を彩る。原曲とは異なるアコースティックアレンジがより楽曲の核を引き出しオーディエンスを惹きつけた。

ライブの中盤を彩ったのは、トリッキーなサウンドを聴かせる「ucess」、ディープでシリアスな世界を紡ぎ出す「Slow View」といったインストナンバーと、ひんやりとしたサウンドスケープが広がる「HUM」の3曲。「HUM」ではこのライブのために作られた森羅万象を描き出した映像がスクリーンに広がり、音と映像を融合させたパフォーマンスが展開された。

その後「ディープな曲の後に、なんの深みもないペラペラなMCコーナーが始まりました」という一悟の自虐的なトークで、MCコーナーが再び始まる。一悟はまず自分の名前が姓名判断でありえないほど悪い結果が出たことを説明。それを改善すべく、今回のツアーでファンにアンケートを実施し改名案を募集する企画を展開していたことを語る。

一悟は「漢字表記は今日が最後です!」と叫んだ後、「1229票でカタカナのウラヤマイチゴになります」と自分の新しい名前を高らかに宣言。祝福の拍手があちこちから沸いた。新しい名前が無事決まったところで再びライブへ、と思いきやそこですかさず大木が「2位は浦山テンピュールだったんだよな?中盤までテンピュールで、途中から裏工作したんだよな?」と真実を大暴露。場内は瞬時に沸き立ち、一悟が「(テンピュールに改名させられるかと思って)本当に怖かった……」が呟くと大きな笑いが起こった。加えて大木や佐藤を筆頭とするスタッフが、ツアー中に一悟にいたずらをしかけていたことも明かされると会場は再び爆笑に包まれ、一悟だけが呆然と立ち尽くす場面もあった。

収集のつかなくなった場を取り繕うように大木が「後でちゃんと謝るし、その他のドッキリもちゃんと説明するから。まぁ、曲行きましょう、曲!」と語り、ライブは後半戦に突入。笑いにあふれていた空気を「I stand free」で変えていき、続く「Under the rain」でライブの勢いを"動"のモードへシフトチェンジ。そのままなだれ込むように「造花が笑う」「CARVE WITH THE SENSE」「飛光」と激しいナンバーを連発し、屈強なアンサンブルで暴れ足りないオーディエンスを挑発した。

「『OVER』は終わりっていう意味があって、すべてには終わりがあって。みんないつかは終わってしまうし、消えてしまう」「だから今を生きるしかない。それがみんなの未来につながる気がして。キレイごとじゃないけど、その瞬間瞬間を生きるのが人間の生き方なんじゃないかな……」という大木の真摯な言葉の後、本編ラストを飾ったのは「A beautiful greed」のラストナンバー「OVER」。壮大な愛を歌ったこの曲では、演奏中にストリングス隊が姿を現し、ACIDMANとともに美しい音を会場いっぱいに響かせため息を誘った。

盛大なアンコールの声に導かれステージに戻ってきた3人は、「赤橙」をオーディエンスに届け会場の熱気に再び火をつける。oiコールなしでは成り立たない「ある証明」でさらに狂騒を煽ると、ライブの定番曲「Your Song」を勢いよく鳴らしアンコールのラストを彩る。そして演奏を終えた3人は笑顔でステージを去っていった。

普段のライブであれば、ここで終わりを迎えるはず。しかしこの日は違った。オーディエンスは1回目のアンコールよりも激しいテンポで拍手を上げ、誰もが貪欲にダブルアンコールを求め続ける。その声に応えるように、ステージに再び顔を出した3人は、長かったツアーをそれぞれに振り返る。大木は「来年もいっぱい曲を書いて、詞も書いて、ライブもするんで来て下さい」と語った後、「今の音楽シーンに逆行するような曲だけど、こんな曲があってもいいと思う」と口にし「廻る、巡る、その核へ」のイントロを爪弾き始めた。

10分近くにおよぶこの曲は最初こそ穏やかだが、転調後は激しい轟音が終盤まで続くACIDMANの真骨頂とも言うべき壮絶なナンバー。その音は、輪廻転生を描いた映像とシンクロしながら会場を飲み込んでいく。曲が進むほどに大木の声はかすれていったが、それが逆に楽曲の持つ生命力を増幅させACIDMANというバンドの持つ世界観を露わにしていた。最後の音を鳴らし終えた大木が「どうもありがとう。ACIDMANでした」と口にすると厳かな拍手が上がり、それは長い間鳴り止むことはなかった。

なお、この日の模様は2月12日(金)にWOWOWでオンエアされるほか、後日DVD化されることが決定。サウンドと映像のダイナミックなコラボレーションを、今度は自宅で味わってみよう。

「ACIDMAN LIVE TOUR "A beautiful greed"」2009年12月22日 日本武道館 セットリスト

SE. A beautiful greed(introduction)
01. ±0
02. world symphony
03. Who are you?
04. Bright&Right
05. FREE STAR
06. Colors of the Wind
07. スロウレイン
08. 星のひとひら
09. ファンタジア
10.銀河の街
11.ucess(inst.)
12.Slow View
13.HUM
14.I stand free
15.Under the rain
16.造花が笑う
17.CARVE WITH THE SENSE
18.飛光
19.OVER
<アンコール>
01. 赤橙
02. ある証明
03. Your Song
<ダブルアンコール>
01.廻る、巡る、その核へ

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