THE BAWDIES「POPCORN」インタビュー|4人がロックンロールし続ける理由

2024年1月1日に結成20周年を迎えたTHE BAWDIESが、ニューアルバム「POPCORN」をリリースした。

メジャーデビュー15周年記念日である4月22日に届けられた本作は、THE BAWDIESの真骨頂であるシンプルなロックンロールサウンドをこれでもかと凝縮した1枚。デビュー当時を想起させる“王道のTHE BAWDIES”を堪能できる快作に仕上がっている。

アルバムのリリースを記念して、音楽ナタリーではTHE BAWDIESの特集を展開。結成20周年、デビュー15周年という節目を迎えた4人に話を聞いた。

取材・文 / 西廣智一撮影 / YOSHIHITO KOBA

始まりはガレージパンク全開の「FREAKS IN THE GARAGE-EP」

──ニューアルバム、大変素晴らしかったです!

一同 ありがとうございます!

──ここ数作のアルバムではジャンルの幅を広げながら、どうバンドのカラフルさを見せていくかを意識していたと思いますが、今作は完全に1つの方向に舵を振り切って「これぞTHE BAWDIES」という王道感がしっかり伝わる。延々とリピートできる1枚だと思いました。

ROY(Vo, B) うわあ、うれしいです。前作「BLAST OFF!」(2021年9月発売)をリリースしたあとに、「FREAKS IN THE GARAGE-EP」(2022年5月発売)というEPを制作したんですが、そこで自分たちが影響を受けたガレージパンクを真正面から全力でやってみたんです。もちろん、これまでも自分たちの根底にはガレージパンクがありましたけど、今まではその魅力を現代の人たちにもわかりやすいように変換して、進化させて伝えることに自分たちの存在価値があったと思うんです。でも、振り返ってみたら意外とガレージパンクをストレートにやったことがなかったので、自分たちが好きな音楽をそのまんまの状態で渡すということもやってみたかった。で、いざ作ってみたらすごく手応えがあって、聴いてくれた皆さんの反応もよかったので、この方向でアルバムも作りたいと思ったんです。

──なるほど。

ROY そのEPができたあとにアルバム6曲目の「GET OUT OF MY WAY」が完成して。これはファズ全開で、本当にEPの流れをそのまま汲んでアルバムに向けて発信した1曲でした。それと同時期ぐらいに、コロナ禍が収まってきて、以前のようなライブの空間が戻ってきた。実際にライブをしながら、「みんなで歌いたい。大声でみんなに歌ってほしい」という思いが芽生えてきて、一緒に歌えるサビを意識するようになっていったんです。ただ、僕らの好きなガレージパンクというジャンルはあまりサビらしいサビがないんですよ。そこで、ガレージパンクに日本人好みのサビを乗せてみたら、それがパワーポップ的に響いた。パワーポップを狙ったわけではなかったんだけど、自分たちが新たに意識したことがそこにつながっていったことで、今回のアルバムの大きなテーマができたのかなと思います。

THE BAWDIES

THE BAWDIES

──パワーポップというキーワード、すごくしっくりきました。と同時に、「POPCORN」はガレージパンクとそのルーツにある50's、60'sのポップスやR&Bとの折衷のようでもあって。最初に聴いたときはインディーズから発表された1stアルバム「YESTERDAY AND TODAY」(2006年3月発売)を今の感覚でやるとこうなるのかな、と感じました。

ROY ありがとうございます! その意見はうれしいなあ。「YESTERDAY AND TODAY」の話をしてくれる人なんて、なかなかいないですよ(笑)。

JIM(G) でも、今言ってくださったことはまさにその通りだなと思って。僕の中では「FREAKS IN THE GARAGE-EP」で初期衝動を取り返すかのように、もともと自分たち持っていたものを再認識した。そしてこの作品を持って出たツアーがめちゃめちゃ楽しかったんですよ。ライブハウスでガレージサウンドを鳴らすことの喜びとか、そのときのバンドのムードが結成当初のキラキラ感と重なるところがあって。なので、おっしゃることはまさにその通りだと思いますし、こういうアルバムを結成20周年の節目に作れたのは、今バンドがすごくいい状態であることを示す証拠にもなると思います。

MARCY(Dr) 僕も、「THE BAWDIESって“こういうこと”だよな」ということを改めて実感できた制作期間でした。デビューしてから「BLAST OFF!」ぐらいまではレコーディングでクリックを使うことも多かったけど、「FREAKS IN THE GARAGE-EP」や今回のアルバムでは全部クリックなしで叩いていて。アルバムから伝わるフレッシュな感じは、そういう影響もあるのかなと思います。

TAXMAN(G, Vo) 僕らって「そんなに演奏がうまくない」という状態がずっと続いていて。例えば好きなアーティストが最初は荒削りだったけど、どんどん演奏力が向上して、昔の曲をひさびさに演奏したら、なんかうまくなっちゃっていたときの残念な感じってあるじゃないですか。でも、僕らはいいことなのか悪いことなのかわからないですけど、そういうのがあまりなくて。それって珍しいことだと思うんです。もちろん20年間続けてきたことによって、この4人にしか出せないグルーヴ感はどんどん生まれているけど、「せーの!」で演奏して誰かがミスっても「それでいいじゃん」と思える空気がTHE BAWDIESにはあって。50年代、60年代のレコードを聴いていても、ギターが間違えていたりとかリズムが怪しかったりするところがあるわけです。でも、全体を通してグルーヴがあればまったく気にならない。むしろ、そのミスが味になってカッコよく聞こえることさえあるし。さっきおっしゃった「YESTERDAY AND TODAY」の頃は、まさにそういう感覚が強かったし、今回のアルバムではそういう姿勢がまた戻ってきたのかなという気がします。

ROY(Vo, B)

ROY(Vo, B)

TAXMAN(G, Vo)

TAXMAN(G, Vo)

プレイヤーとしてのそれぞれのこだわりは

──グルーヴは演奏技術とはまた違って、この4人でずっと続けてきたからこそ出せるものですし、その感覚がより極まってきたからこそ今まで以上に気持ちよく聴けるロックンロールアルバムに仕上がったのかなと。それに、この生々しい音の質感も気持ちよさの要因の1つだと思います。

ROY アルバムのスタート地点が「FREAKS IN THE GARAGE-EP」だったので、原点回帰というのが根底にあって、生々しい音にはこだわってますね。ただ、レコーディング後半になるとあまり意識しすぎないように自然体でやっていた気がします。ボーカルに関しても、以前は「THE BAWDIESと言ったらこの感じ!」という色をしっかり打ち出していたところがあったんですけど、今回は楽曲のタイプに合わせて質感を微調整するだけにとどめました。

TAXMAN 僕は昔からビンテージのギター、アンプ、ペダルを使うことにこだわってるんですけど、今回も自然と「こういう曲ならこれだよな」という年代のものを使いました。

JIM 僕も基本的にはいつもと変わらなくて。アンプはVOXとHiwattというビンテージものを使って、曲のイメージからどちらを使うか選んでいたかな。で、まず鳴らしてみて、ちょっと違ったなと思ったら竿(ギター)を変えてみたり。ただ、ザラついた感触を出すうえでは、Bizarre Guitarが多めでしたね。

MARCY ドラムはほぼ1台で、スネアを2つくらい変えて使ったくらいですね。あとは「こういうイメージの音」というのを僕とエンジニアさんとでチューニングして、みんなに聴いてもらって決めました。バスドラの中に毛布をどれだけ入れるかとかそのレベルで音作りをしたので、1stアルバムの頃のレコーディングに近かったです。

JIM(G)

JIM(G)

MARCY(Dr)

MARCY(Dr)

──勢いのある「DO THE BOP!」や「POPCORN」と、ポップさの際立つ「SUGAR PUFF」や「THIS OLD HEART OF MINE」とでは、ドラムの印象が全然違いますよね。

MARCY そうですね。「DO THE BOP!」は派手にしすぎちゃうとちょっと違うなというイメージが自分の中にあったので、どちらかというと少し抑えめな感じにしていて。その一方で、「SUGAR PUFF」では曲が一番映えるチューニングを追求しました。なので、今回は録音の際にエフェクトでいろいろやってもらうというよりは、ひたすら自分で作った音が多いです。

──そういった録音のこだわりもあってか、例えば過去数作ではいろんな“色”を取り入れてバリエーションを見せていたけど、今回は原色1つでグラデーションを付けていくような、そんな曲の聴かせ方という印象があります。

JIM そうですね、その感覚が正しいと思います。

2024年4月22日更新