Hi-Fiオーディオブランド・Technicsの完全ワイヤレスイヤホン「EAH-AZ80」と連動した春のプロモーション「忘れられない風景と音楽 プロジェクト」がスタートした。
「忘れられない風景と音楽」は、思い出の音楽を聴くことで当時の風景と記憶を再生し、自分自身の心を取り戻すというコンセプトのプロジェクト。新生活シーズンの春に第1弾として、SNSで思い出の楽曲と写真・エピソードを募集している。音楽ナタリーではこのプロモーションとのコラボインタビュー3本を掲載する。
第2弾となる本稿では佐藤千亜妃のインタビューをお届け。バンド活動を始めた大学時代によく訪れ、たくさんの音楽と出会ったという渋谷を舞台に撮影を行い、当時の音楽の思い出や、新生活にまつわるエピソードを聞いた。最後にはバンドでデビューが決まったその日に聴いていた楽曲と、そのときの心境も。ぜひ情景を思い浮かべながら読んでみてほしい。
取材・文 / 小松香里撮影 / 森好弘
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忘れられない風景と音楽 プロジェクト
Technicsの完全ワイヤレスイヤホンが4月22日に開始したプロジェクト。多くの人が疲れやストレスを感じやすい新生活シーズンの春に第1弾として、SNSで思い出の楽曲と写真、そのエピソードを募集するほか、六本木や下北沢、渋谷の駅構内でポスター広告を掲出する。また、マルチクリエイター深根がプロジェクトのために書き下ろした新曲「あの空とおく」を使用したコンセプトムービーや音声広告では、ナレーションをたかはしほのか(リーガルリリー)、歌人の木下龍也が担当している。
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Technics「EAH-AZ80」
TechnicsがHi-Fiオーディオ機器の開発で長年培われた音響技術の粋を注いだ完全ワイヤレスイヤホン。10mmドライバー×アルミニウム振動板が搭載されており、低域から高域まで再現性の高いクリアな音を楽しむことができる。ノイズキャンセリングの性能は業界最高クラス。長時間の使用でも疲れにくい“コンチャフィット形状”を採用しているほか、業界初の3台マルチポイント接続にも対応している。
喧騒の中でチェット・ベイカーを聴いて
──Technicsが4月から5月にかけて展開している「忘れられない風景と音楽 プロジェクト」にちなんで、佐藤さんにとっての思い出の場所だという渋谷で撮影をさせてもらいました。渋谷にはどんな思い出がありますか?
バンド活動を始めた大学生の頃、渋谷屋根裏っていうライブハウスでよくライブをしていて、渋谷のスタジオNOAHを利用することが多かったんです。待ち合わせをする前に、スペイン坂にあるカフェで時間を潰しながらChet Baker Quartetの曲を聴いていたことがあって。そのとき、雨が降っていたんですが、渋谷の喧騒の中でチェット・ベイカーの曲を聴くと自分だけ別の場所にワープしたような感覚がありましたね。今日の撮影も雨だったので、当時のことを思い出しました。渋谷でチェット・ベイカーを聴くことに一時期ハマってたんです。
──そうなんですね。あと、渋谷駅の高架下も思い出深い場所なんですよね。
はい。ミュージックビデオの撮影をする際、渋谷駅の高架下で待ち合わせをしてロケバスに乗り込むといういうことが何度かありました。そこから海のほうに移動したりして。朝5時集合とかなのでめちゃくちゃ眠いんですよ。そこでエリック・サティの「ジムノペディ」を聴くと、仕事をするために徐々に目を覚ますためのヒーリングミュージックとしてすごくいいんです。移動中の2時間くらい「ジムノペディ」を延々とループしたりしてました。それと渋谷はCDショップも多いので、何軒かはしごして掘り出し物を見つけてました。今もタワーレコードやHMVに行きますね。何かのプレイリストを聴きながら渋谷を歩いているとき、大学生当時に聴いていた曲がふと流れてくるとすごく懐かしい気分になります。「屋根裏に向かう道でこういう曲を聴いてたな」とか「スタジオ終わりに暇を持て余してスペイン坂あたりをうろうろしていたな」とか、音に紐付いて記憶がよみがえりますね。
たくさんの音楽と出会った場所
──確かに渋谷にはたくさんCDショップやレコード屋がありましたよね。
そうですよね。大学生時代は今と比べてお金がなかったので渋谷のTSUTAYAでよくCDをレンタルしてました。渋谷のTSUTAYAはポストロックとかエレクトロニカとかインスト系のコーナーがすごく充実していた時期があって、そういったジャンルのアーティストの作品を試聴して借りることが多かったんです。それがきっかけで日本のインストバンドにハマって、mouse on the keysの「最後の晩餐」とかdowny、toeの曲を聴いてました。あと、Sigur Rósやマイブラ(My Bloody Valentine)などの海外アーティストもよく聴いてましたね。休みの日に「今日はCDをレンタルしよう」と思って渋谷に来て、TSUTAYAに行ったあとにタワレコにも行って。レコファンにはレアなものが安い値段で売っていることがあったので、ジャケ買いしたり、メジャーなアーティストのマニアックな盤をじっくりと探したり。渋谷ではそんなことをしてましたね。
──SHIBUYA TSUTAYAで出会った、特に思い出深いアーティストはいますか?
試聴機で聴いて知ったarという日本のエレクトロユニットがいるんですが、自分の周りの人はまだ知らなかったので、自分が発見した気持ちになって、友達にオススメしたり、かなり積極的に聴いてましたね。主にバンドの曲を聴いていた時期にarに出会ったので、逆再生が入っていたり、バンドとは違う打ち込みっぽいエレクトロサウンドがすごく新鮮で、音の使い方が面白いなと思いました。今もすごく好きで、たまに自分のライブのBGMでかけてます。あと、mouse on the keysとかを聴いていく中で、自分はどうやらRadioheadやマイブラ、Sigur Rósの影響を受けている音楽が好きなんだなと気付いて、そういうアーティストの曲を芋づる式に聴いていきました。
──その頃と比べて渋谷の印象は変わりましたか?
お店もどんどん新しくなってますし、街の雰囲気がずいぶん変わりましたよね。でも、NOAHがあるあたりとか東急ハンズがあるエリアは、お店はいろいろと変わっていたとしても街並みの雰囲気がそんなに変わってない印象があります。だから、そのあたりを歩いていると懐かしさを感じますね。
──佐藤さんの楽曲の中で渋谷に紐付いた曲というと?
「夜をループ」はコロナ禍が少し明けてやっと友達と遊べるようになった状況を歌ってる曲ですが、渋谷の夜のネオンに照らされている道で若者がちょっとふざけてるようなイメージで作りました。リリックビデオには渋谷が出てきます。あと、「Summer Gate」のミュージックビデオには渋谷のスクランブル交差点のあたりから私が走って行く映像が使われています。めっちゃ走ったので疲れました(笑)。
「こういう曲だった」と思い出させてくれる音
──いい音で音楽を聴けば、思い出もより素敵なものになるのではと思います。先ほど、Technicsの完全ワイヤレスイヤホン「EAH-AZ80」でご自身の曲をはじめ、いろいろな曲を聴いていただきましたが、いかがでしたか?
音楽が鳴ってる空間の中にいる感覚になりました。最初はチェット・ベイカーの「I Fall in Love Too Easily」を聴いたんですが、耳に直接音が鳴っているというよりは、ジャズバーやジャズ喫茶とかで椅子に座って演奏を聴いているような空間を感じました。あとmouse on the keysの曲も聴いてみて、私は下の音が持ち上がってるような聞こえ方が苦手なんですが、すごくフラットにその曲を作ったミュージシャンの狙い通りの音で聞こえてる感じがしました。特にピアノの音は生感が大事。下の音が膨らんで聞こえるイヤホンだと「ぼわーん」と聞こえちゃうことが多いんですが、そうじゃなくて生々しいピアノの音としてすっと聞こえてきました。それでいてちゃんと空間の奥行きが感じられました。
──ご自身の曲を聴いてみて、いかがでしたか?
「S.S.S.」と「線香花火 feat. 幾田りら」、最近参加させてもらった蔦谷好位置さんのプロジェクト・KERENMIの新曲「おぼろ feat. 佐藤千亜妃」を聴いたんですが、歌がすごくクリアに聞こえてきてよかったです。設定をフラットにしているおかげだと思うんですが、自分が「リスナーにこういうふうに聞こえてほしいな」と思ってミックスした音が再現されていてすごく聴きやすかったです。自分的に手前で聞こえてほしい音と、奥で聞こえてほしい音というのがあるんですが、それがきれいに分離されているのに、余韻でつながっているような奥行きが感じられました。例えば、歌は耳元で歌ってるような聞こえ方だけど、シンセサイザーはちょっと奥まったところで鳴ってるような質感があって、それが奥行きとして伝わってくるのがすごい。ほかのイヤホンだと、けっこう平面に聞こえてしまうことが多いんですよね。でも、奥で鳴ってるニュアンスが繊細に伝わってきた。「この曲ってこういう曲だった」ということをちゃんと思い出させてくれる音だなと思いました。それくらい生音のように聞こえる感覚がありました。自分がミックスチェックをするときにこのイヤホンを使って最終チェックができそうなぐらいのクオリティだと思います。今はステレオでパンを振ってる音源が多いですが、ステレオではなくて昔のモノラルで録音された音源を聴いてもすごく楽しめるんじゃないかな。それくらい奥行きがすごいので。
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佐藤千亜妃が考える“いい音”