「カリスマ」2ndシーズンを追体験、2ndアルバム「カリスマジャンボリー」の魅力をライターが解説

2次元キャラクターコンテンツ「超人的シェアハウスストーリー『カリスマ』」の2ndアルバム「カリスマジャンボリー」が4月24日にリリースされた。

「カリスマ」はYouTubeで配信される音声ドラマを中心にストーリーが展開するプロジェクト。音声ドラマでは“カリスマハウス”で共同生活を送る個性豊かな“七人のカリスマ”が、“真のカリスマ”を目指す物語が描かれている。

「カリスマジャンボリー」には「カリスマ」2ndシーズンのテーマソング「カリスマピクニック」や各キャラクターによるソロ歌唱曲、七人のカリスマ全員での歌唱曲、既存のメロディラインを再構築した新曲「カリスマ・イン・ダ・ハウス」「カリスマジャンボリー」など全11曲が収録されている。「カリスマ」の2ndシーズンを追体験できるような内容になっている本作の発売を記念して、音楽ナタリーではアルバムの聴きどころや各収録曲の魅力を紹介する。

文 / ナカニシキュウ

2ndシーズン総集編のようなアルバム

ニューアルバム「カリスマジャンボリー」は、「カリスマ」2ndシーズンのテーマソング「カリスマピクニック」で幕を開ける。続いて各カリスマの新たなブレイク曲(ソロ曲)が発表順に時系列で畳みかけられ、2ndシーズンを締めくくる新アンセムとして発表された「みんながカリスマ」へと着地。そののち満を持して2曲の新曲へとなだれ込み、大団円を迎える流れだ。すなわち、これ1枚で「カリスマ」2ndシーズン全体を一気に追体験できるという意味では、総集編のようなアルバムと言うことができる。

「カリスマジャンボリー」ジャケット写真

「カリスマジャンボリー」ジャケット写真

「カリスマ」楽曲の傾向として、「全体曲は朗らかでコミカルな方向性が主軸となるのに対し、ソロ曲ではエッジの効いた先鋭的な音楽性が採用されることが多い」というものがある。そのコントラストの妙が大きな魅力の1つであることは「カリスマ ワールド」の特集(参照:「カリスマ」特集|EVIL LINE RECORDSが手がけるプロジェクト初のアルバムの魅力をレビューで紐解く)でも述べたが、今作でもその持ち味は変わっていない。全体曲ではしばしば小学校唱歌などの牧歌的な元ネタが仕込まれるが、今回の「カリスマピクニック」でもその美学は着実に受け継がれ、童謡「ピクニック」が下敷きに。これに対し、各ソロ曲ではラウドロックやロックンロール歌謡、エレクトロ、ヒップホップ、ミュージカル歌謡、ヒーローソング、ムード歌謡など、実にさまざまなジャンルの音楽性が取り入れられている。

特筆すべきは、さりげなくそのテイストに寄せるのではなく、極端なまでに突き抜けたサウンドメイキングを徹底している点だ。それはソロ曲のみならず全体曲でも同様で、中でも作詞に松井五郎、作曲に馬飼野康二という昭和平成の歌謡界を席巻したレジェンドコンビを起用した「みんながカリスマ」などは、作家の人選の時点ですでに突き抜け切っていると言ってもいいだろう。その結果、アルバム「カリスマジャンボリー」はポジティブな意味で統一感のまるでない、1曲1曲がまったく異なる音世界を叩き付けてくるカオティックな音楽作品として結実した。どういう気分のときに聴くべきアルバムなのかを断定しづらいがゆえに、逆にどんな気分のときにでも聴けてしまう──これも「カリスマ」ならではの、ほかではなかなか味わえない特質のひとつだ。

ある意味ヒップホップ的なアプローチ

アルバムのために書き下ろされた2つの新曲は、いずれも前述した「カリスマピクニック」と同様の手法によって生み出されたもの。すなわち、童謡など万人にとって耳馴染みのある既存のメロディラインを現代的な解釈で再構築し、「カリスマ」の世界観を落とし込んだ歌詞を乗せることによって新たな楽曲として生まれ変わらせるという、ある意味ではヒップホップ的なサンプリング精神に富んだアプローチである。

このうち「カリスマ・イン・ダ・ハウス」は、日本ではフォークダンス曲として広く親しまれているアメリカ民謡「藁の中の七面鳥」をベースにしている。ちなみに、この民謡は一般的に「オクラホマミキサー」の名で知られる曲だが、本来これは曲名ではなくダンスの名称であるため注意が必要だ。この親しみやすさ抜群のメロディラインに加え、各カリスマの個性を爆発させたソロパートおよびラップパートが「カリスマ・イン・ダ・ハウス」の最大の聴きどころとなっている。約5分半とアルバム中で最も尺の長い1曲だが、カリスマごとにラップトラックのテイストが千変万化の様相を呈することもあり、一向に飽きることがない。逆に、聴き終わる頃にはもっと聴いていたい気持ちにさせられるはずだ。

一方の「カリスマジャンボリー」は、サビでアメリカ民謡「幸せなら手をたたこう」のメロディラインを大々的にフィーチャー。歌詞も非常に秀逸であり、「1.2. Sun Sun Sun ビヨ~ンヨ~ンヨ~ンヨ~ン GOGOGO!」や「カリスマならジャンボリー」「カリスマならみんなでタリラリラ~」のような、意味合いとしては特に何も言っていないが響きとリズムがとことん気持ちいいフレーズが印象的かつ効果的にちりばめられている。これは想像に過ぎないが、例えば幼児向けのお遊戯曲に採用したら大いに喜ばれるのではないだろうか。そう思わせるほどにフィジカルかつプリミティブな音楽の喜びが詰まった1曲であり、ライブ現場でもその場にいる全員が底抜けにハッピーを感じられるキラーチューンとなることに疑いの余地はない。

そんな2つの痛快な新曲で華やかに締めくくられる本作だが、CDではさらにおまけトラック「セクシービューティペアのテーマ」「セクシー野球拳」「理解体操」「ふみやと大瀬のデスゲーム」の4曲が待ち受けている。いずれも「カリスマ」らしい遊び心に満ちあふれたショートナンバーで、一聴すれば腰が砕け、全身の力がみるみる抜けていくことだろう。このおまけトラックは配信リリース版には含まれず、CDでしか聴くことができないので要注意だ。

初のフェス出演も

アルバムリリース後の5月4日には、所属レーベルであるEVIL LINE RECORDSの設立10周年を記念したイベント「EVIL LINE RECORDS 10th Anniversary FES. "EVIL A LIVE" 2024」が東京・東京ガーデンシアターにて行われる。ももいろクローバーZやDivision Leaders from ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-といった所属アーティストが多数出演する同イベントに、カリスマも登場。彼らにとってはこれが初のフェス出演となる。

「EVIL LINE RECORDS 10th Anniversary FES. "EVIL A LIVE" 2024」キービジュアル

「EVIL LINE RECORDS 10th Anniversary FES. "EVIL A LIVE" 2024」キービジュアル

当日カリスマは月蝕會議、小林私との3組でコラボ曲「14人のオトナ」を披露するほか、ヒプマイとのバトルパフォーマンスにも臨むことになっている。このうちヒプマイとはレーベルメイトであるのみならず、音楽を軸とした2次元コンテンツであること、リアルステージには担当声優が立つことなど共通点も多い。その意味では必然的なコラボにも思えるが、ファンの間ではコンテンツとしてのテイストの違いを鑑みてのことか、「この2組がバトルをしたところで果たして噛み合うのか?」などと心配の声も上がっている。さまざまな意味で見逃せない一夜となりそうだ。

なお、会場では「14人のオトナ」をはじめとしたコラボ楽曲を収録したCDが来場特典として配布される予定となっている。「14人のオトナ」に関しては配信でも楽しめるが、「ヒプマイ」とのバトル曲「ヒプマイvsカリスマ Battle Anthem -EVIL A LIVE 2024-」は配信リリースされず来場特典CDのみで聴くことができる楽曲のため、くれぐれも忘れずにゲットしておきたい。

イベント情報

EVIL LINE RECORDS 10th Anniversary FES. "EVIL A LIVE" 2024

  • 2024年5月4日(土・祝)東京都 東京ガーデンシアター
    <出演者>
    イヤホンズ / ODDLORE / 月蝕會議 / 小林私 / サイプレス上野とロベルト吉野 / 七人のカリスマ声優 / 高岩遼 / Division Leaders from ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- / 特撮 / ドレスコーズ / Bimi / ももいろクローバーZ

超人的シェアハウスストーリー「カリスマ」

YouTubeで配信される音声ドラマを中心にストーリーが展開するコンテンツ。「カリスマハウス」で共同生活を送る個性豊かな“七人のカリスマ”が“真のカリスマ”を目指す物語が描かれている。2022年9月にプロジェクト初となるアルバム「カリスマ ワールド」、2024年4月に2ndアルバム「カリスマジャンボリー」が発売された。5月にはEVIL LINE RECORDSの設立10周年を記念したイベント「EVIL LINE RECORDS 10th Anniversary FES. "EVIL A LIVE" 2024」にカリスマメンバーが出演する。