bokula.インタビュー|多彩なアレンジが光るEPの制作秘話、CDとサブスクの狭間世代にとってCDとは

bokula.のメジャー1st EP「涙 滲むのは心の本音です.」がリリースされた。

昨年12月に配信シングル「最愛のゆくえ.」でメジャーデビューしてから、約4カ月が経過したbokula.。彼らにとってメジャー初となるEP「涙 滲むのは心の本音です.」にはアッパーなロックチューン「不完ロマンス」やトリッキーな歌詞が印象的な「怪火」、CD限定のボーナストラック「高鳴り」など全6曲が収録されている。

今回のインタビューでは、「CD世代とサブスク世代の狭間」だと語るbokula.に、CDへの思い入れやライブに対するこだわり、故郷・広島への思いなどを聞いた。

取材・文 / 西廣智一撮影 / 堀内彩香

メジャーデビュー発表はあまり大げさにしたくなかった

──bokula.は昨年12月4日のワンマンライブでメジャーデビューを発表し、翌5日には「最愛のゆくえ.」を配信するというスピード感で、ファンの皆さんもびっくりしたと思います(参照:bokula.「最愛のゆくえ.」インタビュー|赤裸々なメジャーデビュー曲で踏み出す、未来への大きな一歩)。えいさんは当日、どういう気持ちで発表したんですか?

えい(G, Vo) 僕らの音楽を生きる糧にしてくれている人たちにはちゃんとお知らせすべきことだと思ったけど、あまり大げさにしすぎたくないという気持ちもあったので、さらっとMCで言うくらいがいいのかなって。通過点的な感覚で伝えました(参照:bokula.、メジャーデビュー発表の夜に示した信念「これからもライブハウスに居続けます」)。

bokula.

bokula.

──しゅんすけさんはステージの後ろから全体の様子が見えていたと思います。

ふじいしゅんすけ(Dr) もちろん、ちょっと感情的にはなっていましたけど、それよりどのタイミングで次の曲に入るのがベストか、見極めることに意識が行ってました。

さとぴー(B) あのMC中に「しゅんすけ、今どんな顔しとるんやろう?」って振り返ったら、めちゃくちゃ真剣な表情で(笑)。「これ、どういう感情なんやろ?」っていう、めちゃくちゃ頭を使ってる顔をしてました。

ふじい メジャーデビューを発表することって一生に一度しかないと思うので、その瞬間を目に焼き付けたいと噛み締めながらも、どうすればこのバンドとして一番カッコいい曲の入り方になるだろうと考えましたね。

かじ(G) 自分はわりといつも通りにやっていて。発表する瞬間はもちろん自分も「ああ、本当に発表したんだな」って感覚がありました。

えい 嘘だと思った?(笑)

一同 (笑)。

かじ 「ああ、ほんまにメジャーデビューするんだ」って実感もありつつ、ライブの集中力も切らしちゃダメだから、しゅんすけのドラムのカウントは絶対に聴き逃しちゃならんって思いで、感情的な部分と冷静な部分が半々ぐらいでいられた気がします。

ふじい それ、俺とまったく同じ意見を言っただけだからな(笑)。

かじ 言い方は変えたけどね(笑)。

ライブがすべての中心、ライブに生かされてる

──そこから、この取材時点で3カ月が経ちました。いろんな場面でメジャーデビューに対するリアクションに直面してきたかと思います。

えい でも、実はそんなに変化は感じていなくて。言うなら、まさに今さっき撮影のために衣装を着て実感しました。

さとぴー 確かに。いい服着させてもらって。

えい 申し訳ないなって気持ちが強くて、いまだに慣れないです。

さとぴー そこも含めて、僕たちの音楽を届けることに協力してくれる仲間が増えたというか。

えい もちろん、メジャーに移籍して合う部分、合わないと感じる部分も両方あるんですけど、それ以上に自分たちにとって得られるもののほうが多いから、おこがましいかもしれないですけどすごく満足しています。

ふじい 彼はすごく捻くれているんですよ。人を信じるまでに通常の人の10倍ぐらい時間がかかるので(笑)。

──もちろん、自分たちだけでやっていた頃と比べたら制約もあるかもしれませんが、そことどう折り合いをつけながら活動していくかも醍醐味かもしれませんし。

ふじい そうですね。信頼関係を築いていく中で、自分たちも変わっていくだろうし、レーベルからも任せてもらえる部分も増えるだろうし。これからですね。

ふじいしゅんすけ(Dr)

ふじいしゅんすけ(Dr)

──bokula.の楽曲はTikTokなどSNSを通じて広まっている印象もあります。そういう形で、皆さんの楽曲が世間に届いているという実感はありますか?

えい SNS的なものに関しては特にはなくて。それよりも、やっぱりライブを通じてのほうが強いですね。

さとぴー そうだね。

えい 先日もちょうど「ツタロックフェス2024」があって。去年クロージングアクトとして出させていただいたときはフロアの後ろ半分が入ってたか入ってないかくらいの感じだったんです。でも、今年は後ろまでギチギチに入っていたので、期待してくれている人たちが増えたんだなと実感しました。そういう意味でも、自分たちはライブ中心に生かされているんだなと思います。

ふじい 例えば、SNSを通じて「ライブを観てみたい」と自分で一歩行動を起こすことにつながったんだったら、SNSでの拡散もよかったと感じるし。結局はライブがすべての中心にある感じですね。

もっとCDを買ったらいいのに

──EP「涙 滲むのは心の本音です.」はメジャー移籍後、初のフィジカル作品です。配信とCDで重みの違いを感じることはありますか?

えい 第一には、CDオンリーの曲(「高鳴り」)があるってことかな。でも、はっきり言っちゃえば、そこまで大きな違いはないのかもしれないです。自分はサブスクがなかった時代に育ってきて、ショップに足を運んでCDを買って、家に持ち帰るまでのあの時間が大事だったんですよね。だからその価値は何倍にも感じているんですけど、今の人たちにとってはどうなんだろう……と考えることもあるかな。

えい(G, Vo)

えい(G, Vo)

──皆さん、比較的に若い世代かと思いますが。

ふじい でも、俺らはちょうどCD世代とサブスク世代の狭間じゃないですかね。

えい 今の高校生とか、みんなサブスクに入ってるもんね。そこの違いはだいぶ大きいと思います。という意味では、今の世代の価値観はわからないに近いです。だから、今回もCDに懸ける思いに関しては今まで通り、自分たちのCDは大事ですよっていう。今後もボーナストラックとして、CDオンリーの曲は入れ続けていきたいですね。

──CDならではの付加価値があると、物を手にしたときの喜びが違いますものね。

えい サブスクと違って形がありますからね。最近、俺はフィギュアを集めることに凝っているんですけど、CDに関しても感覚が近くて、自分が好きなものをどんどん集めるのが楽しいんですよ。そういうふうに、みんなももっとCDを買ったらいいのになって思いますね。

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