「KYOTO EXPERIMENT 2025」の「Shows(上演プログラム)」には多数のプログラムがラインナップ。ここでは「Echoes Now」以外の各プログラムの情報を紹介する。さらに中間アヤカ、村川拓也、筒井潤、荒木優光、倉田翠には今回上演する作品や「KYOTO EXPERIMENT 2025」参加への思いを聞いた。
中間アヤカ「Hello, I'm Your New Neighbor./こんにちは、今日からお隣さんです。<翔んで京都編>」
2025年10月4日(土)~12日(日)
京都府 出町周辺
ダンス:中間アヤカ
中間アヤカに聞く
──“まちを見つめる歩行パフォーマンス”と銘打たれた本作の、着想を得たきっかけがあれば教えてください。
このパフォーマンスは、元々は2024年にオープンした自身のスタジオスペース「house next door」のオープニングイベントのために企画されたものです。スタジオのご近所さんへの挨拶代わりとして、また観客の皆さんにはまちの存在も含めて活動を見つめてもらうことを目的に、最寄りの新長田駅からスタジオまで徒歩10分の道のりを大幅に寄り道して1時間歩きました。
──今回は“京都出張編”とのことですが、神戸で実施された時とはどういった点が変わそうでしょうか?
スタートからゴールまでの徒歩10分程度を観客を道連れに大幅に延長させてみるという試みはそのままに、当たり前ですが場所が変わるので全く異なる景色が見えてくると思います。パフォーマンスそれ自体がメッセージを持って自立することよりも、何かと何かを繋ぐ時間や道を形作っていくことを目指しています。
──中間さんはこれまでも「KYOTO EXPERIMENT」に参加されていますが、ご自身にとって「KYOTO EXPERIMENT」とはどのような場所ですか?
その名の通り実験の場だと思っています! アーティストと観客が、実際に、共に、体験する場。
プロフィール
中間アヤカ(ナカマアヤカ)
ダンサー、ダンスアーティスト。神戸市長田区にあるパフォーマンスとミーティングのためのスペース・house next doorのオーナー。
村川拓也「舞台版『テニス』」
2025年10月9日(木)~13日(月・祝)
京都府 京都市左京東部いきいき市民活動センター
原作映画:朝日克俊「テニス」(仮編集版)
演出:村川拓也
出演:阿部瑠星、奥村海斗、佳穂、SOLA、吉野真生
村川拓也に聞く
──本作で村川さんは、村川さんのゼミ生である朝日克俊さんが監督された「テニス」を原案とした作品を上演されます。「テニス」というドキュメンタリーのどんなところに惹かれたのでしょうか?
私が観たのは、ドキュメンタリー映画「テニス」の仮編集版です。朝日さんは今年大学を卒業したのですが、現在も編集を続けています。完成した映画がどんなふうになるのかとても楽しみです。
私はこの映画を観て、衝動的にすぐに演劇にしてみたいと思ったので、どんなところに惹かれたのかあえて言葉にするのが難しいです。言えることがあるとすれば、カメラに映る登場人物はすべて朝日さんの同級生たちで、学生ならではの賑やかさや学生ならではの時間を持て余したような時間の感覚があって、そこが面白いなと思いました。そして、そこに出演者のインタビューが流れるのですが、その内容にもとても惹かれました。私が観た仮編集版では、ムスリムの話や沖縄のマブイグミの話や映画の話や自分のお母さんの話や最近彼氏ができた友達の話などが出てきました。
──映画を原作にした舞台を立ち上げるにあたって、あえて変えること / 変えないことなど意識していることがあれば教えてください。
映画をそのまま舞台にするわけではないので、「原作」としています。ですが、映像とインタビューで構成されている構造自体は使わせていただいています。映像の代わりに舞台を持ってきて、舞台を観ながらインタビューを聞いてもらうということです。また、映画で使われている音声も全てではないですが使わせていただいています。今回の出演者は、実際に映画に出演していた朝日さんの同級生たちです。今年卒業した人もいれば、現在も学生の人もいます。
──村川さんはこれまでも「KYOTO EXPERIMENT」に参加されていますが、ご自身にとって「KYOTO EXPERIMENT」とはどのような場所ですか?
KYOTO EXPERIMENTで上演される作品にはいつも刺激をもらっています。私にとってとても重要なフェスティバルです。
私が作品を上演する左京東部いきいき市民活動センターは、「KYOTO EXPERIMENT」では初めての会場となるようです。いろいろな方にご協力いただいてこの会場での本番が実現しました。この場をお借りして感謝申し上げます。
筒井潤「墓地の上演」
2025年10月9日(木)~13日(月・祝)
京都府 THEATRE E9 KYOTO
作・演出:筒井 潤
出演:片山寛都、七面鳥子、保井岳太、ワタナベモモコ
筒井潤に聞く
──本作は旧真田山陸軍基地を巡る作品です。着想を得た出来事などがあれば教えてください。
わたしが初めて旧真田山陸軍基地に足を踏み入れたときに感じた言葉にならない緊張が幾度も訪ねるにつれてほぐれていくのと、それに相反して歴史的事実が複雑に絡み合いながら重くのしかかってきた経験が、今回の演出のすべてに行き渡っていると思います。
──本作は2024年の発表時からどのようなブラッシュアップがされるご予定ですか? また、作品をより鑑賞するためのヒントになるようなキーワードとその理由を教えてください。
初演とは異なる俳優の参加など、新たなところはあります。しかしわたしとしては意図的なブラッシュアップなどは目指さず、出演者やわたし自身の成長を踏まえつつも、最大限の注意を払って初演の質の維持に努めます。旧真田山陸軍墓地は1945年以来ほぼ同じ佇まいを保っていて、その存在意義はそこを見つめるひとや取り囲む社会の側によって変化しているという実際に可能な限り応じるためです。以上のような理由から考え得るキーワードは「メディアとしての演劇」、そして「メデイアとしての旧真田山陸軍墓地」です。
──筒井さんご自身にとって「KYOTO EXPERIMENT」とはどのような場所ですか?
「KYOTO EXPERIMENT」は行く先を示してくれる灯台のような場所、存在です。わたしは「演劇計画」の京都芸術センター舞台芸術賞を2007年に受賞しました。それは光栄であっただけでなく、無我夢中で創作活動をしてきたわたし、並びにわたしが率いるdracomは、これからどうすれば良いのだろうかと客観的に考えるきっかけにもなりました。のちに「演劇計画」は先進性を保ちながら国際的なフェスティバル「KYOTO EXPERIMENT」へと発展し、そしてそれを追いかけるようにわたしも、TPAM - 国際舞台芸術ミーティング in 横浜(現 YPAM ‒ 横浜国際舞台芸術ミーティング)やF/Tへの参加を経て、国際的な視野を持つ創作を意識的におこなうようになりました。
荒木優光「ノー・ボンチ(ファストリサーチスクラッピング)」
2025年10月10日(金)~12日(日)
京都府 ロームシアター京都 ノースホール
ディレクション・コンポジション:荒木優光
出演:稲森明日香、竹岡大志
京都市立芸術大学プロジェクトメンバー:吉村衿菜、清田慧、迫間悟空、中原田彩那、浅見泰佑、小島大地、山本耀司
荒木優光に聞く
──本作は「KYOTO EXPERIMENT」のリサーチプログラム「Kansai Studies」と1970年代末のN.Y.の音楽ムーブメントから触発されたとのことですが、そこから自転車をリサーチ対象として着目したきっかけを教えてください。
今回はファストリサーチという即興的・身体的な反応を汲み取っていくやり方を採用しています。リサーチにそれほどしっかりと時間を取れない中で、短期的なリサーチを逆手にするという点において自転車が良い塩梅ではないかと。また京都はよく「自転車の街」と言われますが、それはなんでなのかな?というところからです。
──“サイクリングサウンドシアター”と銘打たれた本作について、京都に暮らす荒木さんにとって自転車とはどんな存在か、また自転車に乗っている時と乗っていない時では、サウンドにどんな違いを感じるか、教えてください。
僕は汗っかきなので、今は全く自転車に乗りません。京都の夏はとにかく暑すぎてもう絶対無理です。学生時代はガンガン乗ってました。
自転車って、誰しも1つ以上は面白い記憶やエピソードがあると思います。ならば、自身の身体感覚だけでなく、都市構造やインフラ、ストリートの形状や気候との関係性、各々が持つ数々のエピソード(撤去自転車の記憶!)、etc、それら複合的な事象が、自転車にはある。このように、自転車視点で街を改めて感じることができるんじゃないかな、と思います。
先日クリエイション中に久々に自転車に乗りました。大学校内での走行だったからか、耳で感知するサウンドスケープの移動がとても面白くて、徒歩や車とも異なるサウンドの移行連続があるな、と感じました。
場所や空間、時間帯によってもその音の響きは変わるだろうし、自転車にマイクを取り付けてフィールドレコーディングしたら面白いかも、と想像するきっかけにもなりました。
──荒木さんはこれまでも「KYOTO EXPERIMENT」に参加されていますが、ご自身にとって「KYOTO EXPERIMENT」とはどのような場所ですか?
僕にとってKYOTO EXPERIMENTは、京都に住んでいて数少ない刺激の1つ。作品観ていて、どういうことでコレができたのか全くわからん!、とか、こんなことをやる人たちが世界にいるのか、とか、海外ではこういうのが流行ってたりするのか、と感じる活動に出会えることは僕にとって非常に大事なモチベーションになります。わかりたくなるし、コレでいいんだ、と思いたい。そんなKYOTO EXPERIMENTで自分の活動を提示できることは、嫌でも真顔でテンションmaxです。
倉田翠 / akakilike「病癒えし者の着色された魚への聖なる感謝の歌」
2025年10月17日(金)~19日(日)
京都府 京都芸術劇場 春秋座
演出・構成:倉田翠
出演:飯沼英樹、植田美里、倉田翠、長沼航
倉田翠に聞く
──本作は“食自論”または、社会や自身が定義する「正しい食」を巡り身体を考察する作品とのことですが、着想を得た出来事などがあれば教えてください。
まず初めに、ディレクターの方から「教育」ということをテーマに作品を作るのはどうか、とご提案いただき、そこから考え出しました。
「教育」とは、学校教育のことだけではなく、今自分が自分として生きていることを形成してきた外圧だと捉えているので、影響を与えられたことなど記憶を辿っていたのですが、影響というのは、実はそんなに頭で整理できているものではないのではないか、というところに行きつきました。
そして、「よし、液体しか摂らないでおこう」と思いました。要するに、それで一体身体にどのような変化が起こるのか正確には予測できないことを目的を持たずに課す。「教育」とはもしかしたらそのようなことかもしれない、と思ったのが始まりです。
──本作には俳優、彫刻家、喫茶店の店主が出演します。この3者に焦点を当てようと思ったのはなぜですか?
身体へのアクセスの仕方が違う人がいいと思いました。まず、俳優とダンサーは同じ舞台の世界には居ますが、身体への意識のあり方が違うと思っています。彫刻家の飯沼さんは、長年、木を削り主に女性の身体を掘り続けている方です。これも一つ身体を扱うという行為だと思っています。喫茶店の店主は、私の行きつけのお店の店主なんです。私の身体は結構な割合でこの人が作ったものでできています。人に食事を振る舞う、ということを仕事にしている人にも興味がありました。
──倉田さんご自身にとって「KYOTO EXPERIMENT」とはどのような場所ですか?
「KYOTO EXPERIMENT」は、若い頃から身近にありましたので、実際に作品を観たり、またフェスティバルが大きくなっていく様をちょっとだけ離れて近くから見ていた感じがあります。
例えば、京都は裸とか流血とかが許されてる気がするんですが、それを表現の範疇として容認できる街にしたのは、「KYOTO EXPERIMENT」の力だな、と思っています。すごいことですね。
プロフィール
倉田翠(クラタミドリ)
演出家、振付家、ダンサー。akakilike主宰。令和5年度京都市芸術新人賞、第18回日本ダンスフォーラム賞受賞。2024年4月より長野・まつもと市民芸術館芸術監督(舞踊部門)に就任。
ターニヤ・アル゠フーリー & ズィヤード・アブー・リーシュ「電力と権力を探して」【パフォーマンス】【展示】
【パフォーマンス】2025年10月4日(土)~9日(木)
【展示】2025年10月11日(土)~11月16日(日)
京都府 京都市立芸術大学 ギャラリー@KCUA(C棟1F)
クリエイション:ターニヤ・アル=フーリー、ズィヤード・アブー・リーシュ
出演:ターニヤ・アル゠フーリー、ズィヤード・アブー・リーシュ、Petra Abousleiman
作品紹介
ライブアーティストのターニヤ・アル゠フーリーと、彼女の夫で近代中東・北アフリカ(MENA)地域の研究者であるズィヤード・アブー・リーシュがレバノンの電力問題について観客参加型のレクチャーパフォーマンスと展示を行う。
バック・トゥ・バック・シアター「いくつもの悪いこと」
2025年10月4日(土)・5日(日)
京都府 ロームシアター京都 サウスホール
共同創作・共同執筆:Bron Batten、Breanna Deleo、Natasha Jynel、Simon Laherty、Sarah Mainwaring、Ben Oakes、Scott Price、Tamara Searle、Ingrid Voorendt
演出:Tamara Searle, Ingrid Voorendt
出演:Bron Batten, Simon Laherty, Sarah Mainwaring, Scott Price
作品紹介
バック・トゥ・バック・シアターは、知的障害、またはニューロダイバーシティ(神経多様性)を持つ俳優たちが所属するオーストラリアの劇団。今作では“世界の果て”にある倉庫で働く3人の労働者と彼らを監視する1人の男をめぐる物語が展開する。
マーク・テ / ファイブ・アーツ・センター「トゥアの片影」
2025年10月4日(土)・5日(日)
京都府 ロームシアター京都 ノースホール
パフォーマンス・ミュージシャン:Faiq Syazwan Kuhiri、OJ Law、Shariman Shuhaime
演出:マーク・テ
作品紹介
マレーシアのクアラルンプールを拠点とするパフォーマンス作家、研究者、キュレーターのマーク・テが、マレーシアの英雄ハン・トゥアをテーマとした作品に挑む。歴史の中で英雄のイメージはいかに変容し、利用されてきたかを各地に残るトゥアの足跡をたどりつつ迫る。
アダム・キナー & クリストファー・ウィレス「MANUAL」
2025年10月13日(月・祝)~22日(水)
京都府 京都市立芸術大学 伊藤記念図書館(C棟3F)
クリエイション:アダム・キナー&クリストファー・ウィレス
通訳・翻訳:山口惠子
出演:アダム・キナー、クリストファー・ウィレス、Hanna Sybille Müller、今村達紀、川瀬亜衣、神林優美、瀧口翔、増田美佳、宮木亜菜、山口惠子
作品紹介
カナダを拠点とするアダム・キナー、クリストファー・ウィレスによる、図書館を舞台に、1人のパフォーマーが1人の観客のために上演するパフォーマンス作品。観客はパフォーマーと共に、本を読んだりイヤフォンからの音に耳を澄ませたりしつつ、図書館を再発見していく。なお本作は14歳以下入場不可。
「Punk and Beyond」
【上映会&トーク】2025年10月16日(木)
【ライブパフォーマンス】2025年10月18日(土)・19日(日)
京都府 CLUB METRO
(16日17:00~18:15)トークイベント「京都とパンクおよび日本のパンクの歴史」(ゲスト:マハン・マーフィー、司会:川上幸之介)
(16日18:30~21:30)上映会&トーク「東南アジアのパンクのあり方」(トークゲスト:居原田遥、高崎英樹、司会:川上幸之介)
出演:ALKDO/アルコド、MARJINAL、Radigals
作品紹介
パンクカルチャーをテーマにした映像とライブ公演の企画。上映作品は「このシーンはわたしたちのものでもある!」(原題:Ini Scene Kami Juga! / 監督:ヘラ・マリー) 、「Punk Save the Queen」(監督:久保田徹)、「Anarchy in the Philippines」(監督:ジェス・コール)、「Female Ego」(監督:ラッセ・ネヴァラ)がラインナップされた。またライブにはジャカルタを代表するパンクバンドのMARJINAL、シンガポールの女性バンドRadigals、日本のアコースティック・パンクデュオALKDO/アルコドが出演。トークイベントでは倉敷芸術科学大学芸術学部准教授の川上幸之介が司会を務める。
マルタ・ルイサ・エルナンデス・カデナス「私はユニコーンではない」
2025年10月24日(金)~26日(日)
京都府 京都芸術センター 講堂
コンセプト・出演:マルタ・ルイサ・エルナンデス・カデナス
映像:Joanna Montero
作品紹介
詩人で劇作家、パフォーマーのマルタ・ルイサ・エルナンデス・カデナスが、舞台上にユニコーンのオブジェを並べ、ひとつの世界を築いていき……。キューバで抑圧されてきた女性や性的マイノリティを、伝説の一角獣ユニコーンに重ねた作品だ。
Jang-Chi × 李銘宸(リー・ミンチェン)× ネス・ロケ × 温又柔「クルージング:旅する舌たち」
2025年10月24日(金)~26日(日)
京都府 ロームシアター京都 ノースホール
リサーチ&コンセプト:Jang-Chi、李銘宸、ネス・ロケ、温又柔
演出・脚本・出演:Jang-Chi、李銘宸、ネス・ロケ
小説:温又柔
作品紹介
舞台作家・美術家でオル太のメンバーであるJang-Chiと、台北拠点でパフォーマンスとビジュアル・アートを横断した活動を行う李銘宸、フィリピンの俳優・ドラマトゥルクのネス・ロケ、台湾生まれで日本語で小説を執筆する温又柔が“食”をテーマに、文化やアイデンティティの多層性、混交性を考える。