連続テレビ小説「
キャラクターがどんどん育っていくので、もっと書きたい
連続テレビ小説の脚本担当は2014年度前期の「花子とアン」に続いて2度目となる中園。彼女は「1作目より、朝ドラの過酷さをわかっている分、2作目のほうが大変だと思っていました」と切り出し、「けれども、朝ドラの放送が週6日から5日に変わったのがかなり大きくて。以前は土曜日に書くエピソードに苦労し、残りの1日分をなんとか絞り出すように書いていたこともあったんです。そういう懸念があまりなくなったから、恐れていたほどではなかった。でももちろん大変でしたけどね(笑)」と振り返る。現在の心境を聞くと、「キャラクターがどんどん育っていくので、もっと書きたい気持ちもあります。時間の都合で描けなかったエピソードもありますから」と惜しんだ。
執筆における苦労を問うと、中園は「嵩に関しては、もともと(モデルである)やなせたかしさんと文通していたので『大好きやなせさんのことを書けばいい』という感覚だったんですけど、のぶ(のモデルである小松暢)については『お父様を早くに亡くされていること』『“ハチキンおのぶ”と呼ばれていたこと』など5つくらいのエピソードしか情報がなかった」と説明。ただ、のぶと同世代の大正生まれの女性たちの手記を読み漁ると、きちんと教育を受けたほとんどの女性が“軍国少女”だったそうで、「私の母もそうでした。でも終戦によって180度考えが変わり、1回自分の価値観をすべて塗り潰すような体験をするんですよね。そういう人生って一体どういうことなんだろうと、ヒロイン像を構築するときに苦労しました」と明かした。
ゆで卵のシーンを全身全霊で演じてくれたことに頭が下がる
今田の印象を聞くと、中園は「豪ちゃんの戦死がわかったとき、のぶは蘭子に『立派やと言うちゃりなさい』という言葉を発しますが、セリフを書きながら『これを言う今田美桜ちゃんの心情は大丈夫かな……』と思って。私も書いていてすごくつらかったですし、きっと視聴者も『なんだ、このヒロイン』って思うだろうなと、苦しくなったんです」と打ち明ける。「でもそれが戦時中の感覚なんですよね。けなげに演じてくれた今田さんはすごくがんばったと思う」とも口にした。
一方で北村に抱くイメージを聞くと、中園は「私の知っているやなせさんは声も大きくて『人生は喜ばせごっこ』と言うくらい明るい方だったのですが、北村さんの演技を見ていると『きっと子供の私の前で見せていた顔はよそゆきの顔。本当は北村さんが演じているようなナイーブな方だったのではないか』と思うようになりました。彼の演技を見て嵩の造形も変わっていったんです」と打ち明ける。嵩のエピソードとして特に丁寧に描かれたのが、彼が経験する戦争の場面。中でも視聴者に印象を残したのは、第58回で嵩らが老婆から受け取ったゆで卵を食べるシーンだ。その場面は実際に戦地で起きたことではなく、中園が幼少期にラジオで聴いたニュースがもとになったのだそう。彼女は「空腹の人を救うアンパンマンの正義を描くためには、空腹がどんなにつらく、人をも変えてしまうものであることか、ということも伝えたいと思っていました。ト書きには“かぶりつく”しか書いていないんですが、北村さんたちは絶食してあのシーンに臨み、卵を殻ごと食べたのです。自分の肉体ギリギリで演じてくださって、本当に頭が下がる思いです。あれだけ戦争のシーンを長く詳細に描くことはすごく怖かったんですが、役者さんや現場のスタッフたちに感謝しています」と伝えた。
松嶋菜々子から背中を押され「思い切ることができた」
「放送を観て驚いたこと」に話が及ぶと、中園は
「嵩の二倍、嵩のこと好き!」に号泣、江口のりこ&浅田美代子のアドリブには興奮
お気に入りのシーンを質問されると、まず中園は、第85回でのぶが嵩の告白に対して「嵩の二倍、嵩のこと好き!」と応えるシーンをピックアップし「あの場面には私が想定していたよりも爆発力があって、観たときに号泣してしまいました」と報告。「のぶはつらい役回りでしたが、あの瞬間、やっと子供の頃の天真爛漫な自分に戻れたのです。脚本を書いているときはその変化に気付かなかったのですが、放送を観て『おめでとう』という気持ちになりました」と笑顔をのぞかせた。
次に挙げたのは、第81回で
中沢元紀には「親のようにハラハラ」、高橋文哉のコメディセンスを絶賛
本作には多くの若手俳優が出演した。嵩の弟・千尋役の
「きっとやなせさんはものすごく喜んでいらっしゃる」の言葉に救われる
終盤に「やなせさんに今、何を伝えたい?」と質問が飛ぶと、中園は少し考えたのち「やっぱり『書かせていただいてありがとうございます』という気持ちですね」と回答。代議士・薪鉄子役で「アンパンマン」の声優でもある
「あんぱん」はNHK総合ほかで放送中。
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