田山花袋「蒲団」を現代に、中年脚本家の“恋”を描く…斉藤陽一郎の主演映画公開

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田山花袋が1907年に発表した私小説「蒲団」を原案にした同名映画が、5月11日に東京・K's cinemaで公開される。

「蒲団」場面写真

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蒲団」は妻子ある小説家・竹中時雄が、懇願されて弟子にした女学院生・横山芳子に恋をするが、彼女に恋人ができたことで嫉妬に狂い、破門にしたにもかかわらず強い未練を残すという物語。蒲団に残った芳子の残り香を嗅ぐ場面での「心のゆくばかりなつかしい女の匂いを嗅いだ」という一節が有名だ。

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映画「蒲団」では、舞台を明治から令和に移し、主人公・時雄の設定も小説家から脚本家に変更された。時雄を演じたのは、「Helpless」「EUREKA(ユリイカ)」「サッド ヴァケイション」など青山真治監督作の常連俳優として知られる斉藤陽一郎。本作は約20年ぶりの単独主演作となる。脚本家志望の芳子をドラマ「新空港占拠」に出演中の秋谷百音が演じ、時雄の妻・まどかに「笑いのカイブツ」「一月の声に歓びを刻め」の片岡礼子が扮した。

監督は「テイクオーバーゾーン」「なん・なんだ」の山嵜晋平。脚本は「花腐し」などで荒井晴彦と長年にわたり組んできた中野太が手がけた。山嵜と中野は、永井荷風の小説を原案にした映画「つゆのあとさき」でもタッグを組んでいる。

なお本作は、4月にイタリア・ローマで開催される映画祭Asian Film Festival 21のコンペティション部門に出品されたほか、台湾・韓国での展開も決定。斉藤、秋谷、片岡、山嵜から届いたコメントも以下に掲載している。

斉藤陽一郎 コメント

斉藤陽一郎

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旅館の押入れや蒲団部屋を発見すると思わず飛び込んでしまいたくなるのは決して子どもに限った事ではありません。大人だってそこに蒲団があれば飛び込んでしまいます。先日、酔っ払って目を覚ますと押入れの中だった私が言うのですから絶対です。そして、誰もが起ち上がる為には一旦横にならなければならないのもまた絶対です。100年以上前に書かれた田山花袋の原作が今もなお色褪せない輝きを持って読まれているのはきっとこの普遍性にあると信じ現場に臨みました。ある人はピュアなおじさんの恋愛映画ととるでしょう。或いは、中年おじさんの拗らせに嫌悪感を抱くかもしれません。恋愛は今も昔も、どこか滑稽で悲哀に満ちています。まずは、この「蒲団」に飛び込んでみて下さい。そして此処ではない何処かへ起ち上がるきっかけになってくれたらと思います。

秋谷百音 コメント

秋谷百音

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この度、映画「蒲団」にて横山芳美役を演じました秋谷百音です。
芳美はとてもリアルな現代に生きる女の子でした。色んなことを考えて好きなように動いてみる、そんな彼女を演じられることを悦ばしく思い、悩みつつ、でも、楽しみながら精一杯演じました。また、初めての挑戦もありました。
監督をはじめ、共演者の方々、スタッフの皆さんに沢山助けて頂いてやり遂げることができました。
田山花袋の小説「蒲団」を元にしたストーリーなのですが、なんだか不思議な面白い雰囲気の作品になっていると思います。試写を見ながら私はクスクス笑っていました。
これからご覧になる皆さんがどんなふうに受け取ってくださるのか楽しみにしたいです。

片岡礼子 コメント

片岡礼子 (c)Cedric Diradourian

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蒲団の中でもがく時というのは1番辛いことなのかもしれない そんな瞬間の夫(斉藤陽一郎)は1番色気があってこれもまた妻からは悩ましいことでしかない。色んな意味で。撮影時、尋常ではない熱を孕むシーンであれど過酷な気温の中であれど、山嵜晋平監督はどんな時も平常で、気がつけば皆で笑いながら撮影は進む。さらに言うと、例えば物語の残酷でしかない出来事は何故か羨ましいほどに眩しく魅せる。
愛おしき辛さ。今の私はこの映画の残り香に酔う身であります。

山嵜晋平 コメント

田山花袋さんの「蒲団」の中で主人公に芽生える「恋心」に惹かれて、自分の中で初めて「恋愛映画」を作ることを決めました。
映画の中で、主人公が恋をする相手は才能あふれる自分よりだいぶ年下の女性。
彼女は才能に溢れていて、あっという間に自分を追い抜いて行ってしまう。
結局主人公が彼女に抱いていた「恋心」は「才能」に対する憧れなのか? 肉体に対する「肉欲」なのか? それともまっすぐな「純愛」なのか?
中年男性が苦悶する先に見える“思い”を青山真治監督の作品を観て憧れていた斉藤陽一郎さんと一緒に、主人公と同じように苦悶しながら探していく作業は大変でしたが本当に貴重な時間でした。
斉藤さんという独特の瞬発力と発想力を持つ面白い役者さん、いつも全力で全てをぶつけてくる秋谷百音さん、憑依するまで芝居を練り込む片岡礼子さん、そしていつものスタッフ、そんな皆で作ったのは、最初に構想していた「恋愛映画」を超えるものでした。

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