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本作は、改造人間となった男の逃走劇を描くバイオレンスアクション。人体実験によって改造されたキサラギは、分断された「東京」の制覇をもくろむ不死身の吸血鬼集団・不滅騎士団に追われていた。さらに殺された親分の敵討ちを誓うヤクザたちも追っ手に加わり、三つどもえの大抗争へと発展していく。
イベントの冒頭、本作の完成を記念し、谷口からキサラギ役の小野に花束が手渡された。谷口から「いろいろ苦労してもらったこともあったので、ありがとうございましたの気持ちを込めて」と伝えられた小野は「役者側が受け取るのは不思議ですが、すごく光栄に思います!」と恐縮する。
アフレコから約1年半を経て公開される本作について、小野は「僕個人としても込み上げるものがありますが、監督をはじめスタッフの皆さんがそれこそ血へどを吐くような“BLOODY”な思いでここまでたどり着いたと思うので感謝をお伝えしたいです」とコメント。谷口は「途中コロナ禍もあったので、声優さんを全員まとめて収録することができなかった。でも『この人とこの人は一緒に録らないと芝居の受け渡しがやりづらいよね』といったこともあって、その差配は面倒くさかったですね」と振り返った。
本作でキサラギを演じるにあたり、アフレコ前に2日間の断食を行ったという小野。その理由について彼が「オーディションで選んでもらったんですけど、収録の直前に谷口監督から『今まで培ってきたお芝居の技術的な部分は一度忘れていただきたい』『キサラギという役は“飢え”が大切なキャラクターなので飢えてほしい』という手紙をもらったんです。“だったら飢えてやろうやないかい!”ということで物理的に飯を抜きました」と説明すると、谷口は「僕が断食しろと言ったわけではないですよ。どういう形で飢えるのかは本人が決めることですから」と飄々と述べる。しかしその効果はあったようで、谷口から「余計な力が入っていなかった」と評価された小野は安堵しつつ「普通はアフレコのときやっちゃいけないですからね。おなか鳴っちゃうんで! めちゃくちゃでかいスタジオで収録する情報をつかんでいたからこそのアプローチでした」と自身の豊富な経験から判断したことを強調していた。
お薦めのシーンを聞かれると、小野は「ワイヤーアクション」と回答。谷口も同意しつつ「有線が好きなんですよ。無線(で飛んだりすること)って描く上で楽なんですけど、線がつながっているとそこに何らかの色気が発生するんですよね」と解説する。また本作では“重心”にも力を入れていると言い、谷口は「どっちに偏っているのかまで気を付けていくのが、日本のCGアニメーションが次のステージに行くために必要な要素なんだろうと思います」とこだわりを明かした。
イベント終盤、本作に参加した声優陣に話題が及び、MCから「キャスティングはどのように決めたのか」という質問が飛ぶと、谷口は「大きなポイントは“つまらない欲が抜けた人たち”」と回答する。その真意について彼は「演じる役よりも(声優自身の)“俺が”“私が”という気持ちが上に立っちゃうときがあるんですよ。それがプラスに働くときもありますが、この作品では要らん!という思いがあったので、その段階を超えているか、欲を消化できている人たちを集めました」と語る。声の出し方でその判断はすぐにできると言い、小野がおそるおそる「僕は媚びてないですか?」と聞くと、谷口は「危なかったんで手紙を……」とこぼして会場の笑いを誘いつつ「でも小野友樹という役者の声って、どれだけ乱暴なセリフを言っても根っこに愛があるんです。それがこの作品に向いてるなと思って(キャスティングした)」と力強く口にした。
最後に小野は「キサラギの過去や今、ここからどうなっていくのかを描いているので、ぜひ愛を持ってみていただければと思います」と呼びかけ、イベントは終了した。
「BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-」は、1月5日より東京・新宿バルト9ほか全国でロードショー。
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「BLOODY ESCAPE」監督・谷口悟朗、小野友樹の声には「根っこに愛がある」(イベントレポート / 写真10枚) - 映画ナタリー https://t.co/IvKFT48L27