長浦京の同名小説をもとにした本作は、かつて“もっとも排除すべき日本人”と呼ばれた元諜報員・小曾根百合が主人公のハードボイルドアクション。謎の男たちに襲われ、追っ手に取り囲まれて窮地に陥った少年・細見慎太の前に、S&W M1917リボルバーを握った百合が現れるところから物語が動き出していく。
本作の撮影は、2022年夏から初秋にかけて行われた。8月中旬のこの日は百合役の綾瀬、カフェー・ランブル従業員役の
同所で捉えられたのは、百合が主人を務めるランブルを陸軍が襲撃するシーン。ランブルは飲み屋を装い、ひそかに私娼を抱えて売春をする店“銘酒屋”の設定だ。セットは銃撃戦の場面で壊されることも想定したうえで、2カ月掛けて細部までこだわって作られ、周囲には本物の雑草、土、砂利などが敷き詰められていた。イメージは東京・向島にあった私娼街・玉の井。時代設定は関東大震災が起きた翌年・1924年のため、意図的に“作りかけ”のようにした箇所もあるとのことだ。
ランブルのそばには、土手や小さな橋が架かった川が。その周辺に40人ほどの陸軍兵たちが控えており、陸軍中尉の「撃て!」という叫びを合図に一斉に小銃が撃たれ、それらを百合が俊敏にかわす場面が切り取られた。繊細な飾りが付いた華やかなワンピースに黒のブーツ、ももの部分にリボルバーを隠し持った綾瀬は、アクション部のスタッフと所作を細かく確認しながらハードなシーンに向き合っていく。練習には1カ月以上の時間を掛け、撮影期間もトレーニングに励んでいたという。彼女と対峙する役どころのジェシーは、合間に銃の扱い方の自主練習を重ねながら撮影に臨んだ。
行定は“大正時代を描く”ことそのものに大変さを感じたそうで、「この時代があまり映画化されない意味がよくわかる」と笑う。彼は現存しない風景を作るために、2001年公開の監督作「GO」以来の絵コンテを描き、議論を重ねていった。アクションにはもともと関心が薄かったようだが、「非現実の中にリアリティを見つけ出す作業が非常に楽しい」と制作が進むにつれて生まれた心境の変化を明かした。
本作で“史上最強のダークヒロイン”を演じた綾瀬とは、2002年に公開されたショートフィルム集「Jam Films」の一編「JUSTICE」でもタッグを組んだ。行定は「瑞々しさや透明感に惹かれてキャスティングした」と当時を振り返り、現在の綾瀬を「すごく的確なアプローチをしてくれる」「身体能力が高くて、アクションシーンもほぼ吹替(スタント)なしでやれる」と評する。そして、慎太役を担った子役出身の
本作の企画・プロデュースは「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」「孤狼の血」「シン・仮面ライダー」などで知られる紀伊宗之が担当した。紀伊は「カメラも照明も美術も素晴らしい。『こんな映画になるといいな』というイメージを、各パートがことごとく超えてくれる」と手応えを伝える。
東映が原作の映画化権を獲得したのは、撮影の3年前。「レクサス(トヨタ自動車が手がける高級車のブランド)のような、世界で戦える国産の映画を作りたい」との思いから、邦画の実写作品としては巨額の製作費を投じてプロジェクトが進められている。紀伊は「そのくらい振り切らないとそういうところにはたどりつけない」「映画そのものが、ぶら下がっている産業全体を活性化する。チャレンジをしないと次につながっていけないので、僕らの挑戦が映画業界を志す人たちにとってのチャンスになればいいなと思います。これからの日本映画のために応援してほしいです」と語った。
「リボルバー・リリー」は8月11日に全国で公開。
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