A24製作のダークファンタジー「
全身が草木に覆われた緑の騎士から、クリスマスの“遊びごと“として首切りのゲームを持ちかけられた男の旅路を描いた本作。「ホテル・ムンバイ」のデヴ・パテルが主人公ガウェインを演じ、「さらば愛しきアウトロー」の
石井は本作で本国版のティザービジュアルやポスターとはデザインが異なる日本オリジナルのポスターを制作。顔の右半分が影に覆われたガウェインのキャラクターポスターを土台にしながら、緑の騎士が影を侵食するようなビジュアルを生み出した。石井は「映画の主題はガウェインの深い闇。そこに脚光を当てたかった」と回想。緑の騎士の素材は映画のコマから抜き出して画像として使用したが、あごひげの部分だけポスターに耐え得る解像度ではなかったそうで「急遽うちのマンションの管理人室にある使い古したモップを借りて(笑)。その画像をひげのようにスタイリングしてます。これはつい先日まで配給会社の方にも秘密にしてました。ビジュアルを見てモップと思われてしまうと微妙なので」と意外な事実を明かした。
タイトルロゴも本国版を引用せずに、オリジナルのロゴを一から作成。アルファベットの書体はブラックレターと呼ばれるフォントを現代風にブラッシュアップし、カタカナはブラックレター風のものを制作したそう。大島は「ブラックレターをカタカナに変換するのは意外とやりやすい。でも雰囲気が硬くならずに、艶めかしく色っぽい感じに調整されているのがさすがだと思います」と称賛。フォントに関する話題では、大島が「時計じかけのオレンジ」「ランボー」「ダイ・ハード」など数多くの映画広告を手がけた檜垣紀六の仕事を紹介し「英語の書体のルールで日本語に変換すると、英語だとクールだったものがかわいくなったりポップになったり、印象が変わってしまうことも多い。それでも檜垣さんはロゴを本国に寄せる。例えばキューブリックの映画は、どんな言語でもオリジナルのロゴに合わせるルールがあったから。あの仕事を見ると強引にでも本国の書体に寄せないといけないな、と考えるようになりました」と語る場面もあった。
「グリーン・ナイト」と同じく、これまでにトランスフォーマーが配給したA24作品のビジュアル制作について話題も。石井が担当した「
トークでは2人が映画宣伝におけるチラシの重要性にも触れる。大島は「グラフィックデザイナーにとってポスターの制作は昔から花形。でも劇場で掲出される場がどんどん減っている。生で見られる機会が多いのはチラシだと思います」と説きつつ、石井も「いかに小さいB5のサイズで文字を読まずとも、その映画の世界観を伝えるか。どういうふうにフックを生んで持って帰ってもらうか考えてますね」と表裏一体のクリエイティブであるチラシ制作の醍醐味に言及。2人とも実際に劇場からチラシを持って帰る機会も多いそうで、大島は「一瞬で『これいいね』と何を選ぶかが重要で。デザインだけじゃなくキャストや監督の情報も含めて、自分でどれを一番早く取るかな?を試してます。そして帰ってから、なぜこれを選んだのか考えてますね」と話す。近年、サムネイルやアイコンなどスマホの小さい画面で見られても映えるビジュアルを求められる機会が増えているそうで、石井は「大きいポスターと小さいサムネ、両方を考慮したメインビジュアルを作るのはけっこう難題なんです」と実作者の視点で語った。
続いてポスターやチラシではなく、石井がデザインした「
終盤には2人が手がけた日本映画のポスターにも話が及んだ。夏の日差しに照らされた一家が縁側で笑みを見せる写真が印象的な「
観客からは、大島がデザインした「
大島は宣伝で用いられる公式ポスターだけでなく、よりアート性の高いオルタナティブポスターを手がけることも多い。権利の関係上、販売のハードルが高いそうだが、ヒグチユウコとともに手がけた「ミッドサマー」は本国のA24からの要望で販売が実現したという。大島は2022年公開作だけでも「X エックス」「LAMB/ラム」「マイ・ブロークン・マリコ」でオルタナティブポスターを作成。自ら配給サイドに提案することもあるそうで「メインのポスタービジュアルはいろんな人の意見が入る。自分だけで自由に作りたい気持ちは別にないんですけど、僕なりの批評や答えを提示したい思いはあって。そもそも映画はひとくくりでは言い表せないもの。見る人にとっても、いろんなレイヤーがあるほうがいいかなと思ってます」と話した。
「グリーン・ナイト」は11月25日より東京・TOHOシネマズ シャンテほか全国でロードショー。
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SYO @SyoCinema
昨日のA24『グリーン・ナイト』イベントの素晴らしいレポート記事です🦊
(MCって写真からカットされることが多いのでとても嬉しいです。映画ナタリーさんに感謝…)
緑の騎士のひげはモップを加工?A24常連デザイナーがビジュアル制作をめぐって対談
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