神奈川・KAAT神奈川芸術劇場が本日2月28日に2022年度のラインナップを発表。
1948年に公開された「夜の女たち」は、戦後間もない大阪の飛田釜ヶ崎を舞台に、街娼となった戦争未亡人の姉と、その妹がたどる壮絶な人生を描いた群像劇。久板栄二郎の小説「女性祭」を
同作ではKAATの芸術監督を務める
1957年に公開された「蜘蛛巣城」は、
同作は
長塚、齋藤、赤堀によるコメントは下記に掲載した。いずれの作品もキャストは明らかになっていない。そのほかのラインナップはKAATの公式サイトで確認してほしい。
長塚圭史 コメント
「夜の女たち」は溝口健二監督の1948年の映画です。戦後間もない飛田釜ヶ崎を舞台に、貧しさの中、必死に生き抜く女性たちを描いていました。この映画はまだ占領下にあった実際のその時その場所で撮影しているんですね。だからドキュメンタリーフィルムのようです。占領下。敗戦で日本が逆さまになった時代です。いつかの勝利のために分け合っていたご飯を、今日からは自分が生きるためにと奪い取るものもありました。信じてきたものがひっくり返ったことで呆然としているもの、やっと終わったと大喜びしているもの、戦争孤児、身寄りが誰一人いなくなって生きる術がなくなったものもいる。そういう中でアメリカ兵が、占領軍、進駐軍って言いますけど、押し寄せてくる。禁止されていた音楽がなだれ込んでくる。敵性音楽が自由の象徴として聞こえてくる。価値観が根本からひっくり返った、我々がほとんど忘れてしまった占領下のあの時代を描いておきたいと。目を背けたくなるような時代をミュージカルにしたいなと。鬱屈としている人物たちもミュージカルなら心の内を歌い出すでしょう。初めてのミュージカルですが音楽の荻野清子さん、振付の康本雅子さんらとスリリングな作品を作り上げていきたいと思います。
齋藤雅文 コメント
「蜘蛛巣城」上演にあたって
黒澤監督の「蜘蛛巣城」は、「マクベス」を日本の戦国時代に翻案し、能の手法、美意識を大胆に取り入れた映像美溢れる傑作です。大劇場の舞台用に脚色するにあたって私は、映画的スペクタクルではなく、日本人の精神性ということを強く意識しました。たとえば神仏が混交し唯一絶対神のいない宗教観。主語を省き、曖昧さを武器にし、敬語を複雑に駆使して生まれる関係性。曖昧な「予言」に翻弄され、あらゆることが曖昧なまま、登場人物たちは「確かな何か」求めて必死に足掻き続けます。その湿度の高い主従関係、夫婦の愛情を描くには歌舞伎の科白など、いわゆる「時代劇の手法」が相応しく思われました。この台本は、「マクベス」を「本歌取り」しつつ、普遍を求めながら独自性に固執する日本人の「業(ごう)」の物語だと思っております。赤堀さんの独自の視点から、KAAT発の新たなる「蜘蛛巣城」が生まれることを楽しみに致しております。
赤堀雅秋 コメント
KAATは長塚さんが芸術監督ということで、ものづくりに真摯な劇場と聞いております。一生懸命やらせていただきます。作品の構想については、今のところないと言ってしまえばないんですが、とにかく泥臭い作品にしたいなということと、「蜘蛛巣城」といえば黒澤明監督の映画が有名ですが、今回はそれを踏襲するということではなくて、もうちょっと「若さゆえの何か」というものを自分の中の視点として、作品ができたらいいなと思っています。はじめての時代劇なので難しい部分もあるかもしれませんが、とにかく生々しい人間像を描けたらなと思っています。よろしくお願いいたします。
溝口健二の映画作品
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なお @nanocha
蜘蛛巣城、地元の劇場で上演予定という情報が。まだまだ先の話だけど、これは観たいなあ。
黒澤明「蜘蛛巣城」が舞台化、溝口健二「夜の女たち」はミュージカルに(コメントあり) https://t.co/54DMeNKP1x