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平波の4年ぶりの長編映画となる本作は、東京に暮らす4組の男女が過ごす時間をつづった作品。音楽を作る恋人と暮らす女性の1年間、愛し合いながらも離れては思い合う女性同士の数年間、運命の相手を探す男と毎日を気ままに生きる女の1日、終電後に出会った男女の一夜が紡がれる。
本作を製作したきっかけについて、平波は「自分も歳を取っていく中で、近しい人と避けることができない死別や離別といった別れを迎えることが増えてきました。そうしたことが起こるたびに悲しみだったり、あきらめみたいな感情に支配されては、過ぎゆく時間が和らげていく、それが人生なんだなと思うようになりました。なんとなくですが、そんな映画を作りたいとぼんやりと考えていた中で、この作品の中核を担う8人の俳優と出会いました」と述懐。8人の素の魅力を生かしたエピソードを撮っていくうちに、長編映画として構築するため脚本を書き足していったという。そして「1日だったり、1年だったり、4つのストーリーはそれぞれ流れる時間軸が違うので、それらを有機的に組み合わせる編集作業はとても難航しました。自分が助監督業を抱えていたこともあり、完成するまで気がつけば3年も掛かってしまいました」と完成までの経緯を明かした。
タイトルについては「『the believers ビリーバーズ』というタイトルは、ある日ふと思いついたもので、そこから『愛するよりも信じることのほうが難しい』というセリフが生まれました」「もう少し広義的に捉えると、『現在の自分たちの暮らしや価値観、世界の在り方みたいなものになんの疑いも持っていない人たち』という位置付けにして、そこに皮肉的な意味を込めたつもりです」と説明。また、公開を控えた心境を「何もかも変わってしまった2020年にこの作品を公開できることに不思議な高揚感も抱いています」と語り、観客に向けて「当たり前だと思っていたものが、もはや当たり前じゃなくなった暮らしの中で生きる人たちに、こんな映画が届けばいいなと思っています」と願いを込めた。
自身の監督作を発表する一方、助監督として今泉力哉や山本政志の現場に参加し、商業とインディーズの垣根を越えて活動を続けている平波。日本のインディーズ映画シーンへは「作品や表現に、より多様性が求められる時代になってくると思います」と言及し、「日本製映画は没個性なものが相変わらず強いイメージがありますので、見せかけだけの技術や話題性重視の企画やキャスティング、ルーティーンまみれの映画製作などに捉われず、壁を壊していくことが課題だとずっと思っています。配信が主流になって、より表現の幅が広がっていけばいいですけどね。あと映画館文化だけはずっと絶やさぬよう守っていきたい。その点に関してインディーズ映画で何ができるのか。みんなで考えていければと思っています」と述べた。
「the believers ビリーバーズ」は、11月14日より東京の池袋シネマ・ロサでレイトショー上映。
高知県映画上映団体ネットワーク(35mm) @einee_kochi
平波亘が4年ぶりの新作「the believers」に込めた願いとは?インタビュー到着(コメントあり) https://t.co/IOvw3MKJ8T