「スパイの妻」蒼井優は「ホラーよりも怖い」、高橋一生は「ものすごいアクション」

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黒沢清が第77回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)に輝いた「スパイの妻」のQ&A生配信イベントが本日10月7日に開催。黒沢とキャストの蒼井優高橋一生が東京・ユーロライブから視聴者の質問に答えた。

「スパイの妻」Q&A生配信イベントの様子。左から黒沢清、蒼井優、高橋一生。

「スパイの妻」Q&A生配信イベントの様子。左から黒沢清、蒼井優、高橋一生。

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「スパイの妻」メインビジュアル

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太平洋戦争前夜の兵庫・神戸を舞台に、連合国のスパイと疑われる貿易商とその妻を描いた本作。高橋が満州で恐ろしい国家機密を知ってしまった福原優作、蒼井が周囲から“スパイの妻”と罵られる聡子を演じた。

銀獅子賞のトロフィー。

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同映画祭では2003年に「座頭市」で北野武が監督賞を受賞して以来、日本人としては17年ぶりに銀獅子賞受賞の快挙を果たした黒沢。受賞後初の公の場への登場となった本日、黒沢は「直後はほとんど実感がありませんでした。数日前にやっとトロフィーが届いて、何やら映画の歴史に名前が刻まれたんだなと、やや大げさですがそういう感慨がありました」と喜びを語る。蒼井と高橋から祝福されると、「監督賞と言われてますが、(審査員は)僕が監督してる現場を誰も見てない。何もせず寝てたかもしれないですからね。作品の力です。今は3人が登壇してますが、全員の力です」と言葉を返した。

蒼井優

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この日はファンから寄せられた質問に回答する形で進行。昭和初期の人物を演じるに当たって気を付けたことを聞かれた蒼井は「時代を超えて行く女性の役。あまり時代を意識したわけではありませんでした。台本がとても個性的なセリフ回し。それを楽しもうと思ってました」と振り返る。「ハッピーアワー」の濱口竜介と野原位が黒沢と共同で脚本を手がけており、高橋が「口語ではないかもしれない」と話すほど、独特なセリフ回しが展開されているという。また蒼井と高橋は「ロマンスドール」に続き夫婦役で共演。高橋は「全幅の信頼をしている。またご一緒できるのは、楽しみで仕方がなかった」と撮影前の心持ちを明かし、蒼井も「本当に尊敬している先輩。一緒に何か作れることがありがたい。一緒に歩んでくださることにすごく感謝しています。また共演したい」と信頼感を明かした。

高橋一生

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黒沢組へは「贖罪」「岸辺の旅」に続く3回目の参加となった蒼井は「本当に多くのことを学びました。いっぱい頭を使ってできあがりを想像しながら現場にいたはずなのに、完成した映画は自分が想像していた何百kmも先にある作品になっていた。力を持った強度のある映画ってこういうことなんだと感動しました」とコメント。一方、黒沢組初参加の高橋は「監督は肉体的な動きをとても演出してくださる。登場人物の内面を話し合うのではなく、行動はここからここまで、とポイントで教えてくれる。だから、ある意味心は自由。その部分は蒼井さんと一緒に作っていく作業ができた。非常に充実した時間でした」と語った。

黒沢清

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「スパイの妻」

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Q&Aではエキストラの演出に関する質問も。黒沢は「1人ひとり生活があり、画面に映っているときの人生の一部がある。急いでいる人、ゆっくりの人、何かに気を取られている人、ただボンヤリしている人。可能な限り、さまざまな人が1つのカットの中で行き交うように作りました」と回答。映画は主に1940年の神戸を舞台としており、「その時代を表現しなければいけないことが1つの大きなテーマ。エキストラだけではなく美術から小道具、衣装、髪型も含め、その時代と思わせるように慎重に作りました。不思議なもので当時の服装をして当時の荷物を持つと、例え素人の方でも自然にある時代のある人物になってくるんです」と続けた。

「スパイの妻」

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制作過程では当時を再現するため、さまざまな衣装が用意された。蒼井は「毎日違う衣装を着てました。お着物からスーツまで、ここまでいろんな衣装を着ることはなかなかない」と述べつつ、お気に入りの衣装を聞かれると「山に行くときのもんぺが好き。もんぺを着ると落ち着く」と満面の笑み。黒沢も「主要な登場人物の衣装は、体に合わせて全部作りました。生地を1つひとつ選んで形にしていく。衣装を作るという行為が、こんなに映画にとって重要なんだと初めて知りました」と話した。

続いてギタリストとして多方面で活躍し、ペトロールズのリードボーカルを務める長岡亮介が担当した音楽の話題も。長岡は本作で初めて映画音楽を手がけており、黒沢は「最初は戸惑われていた」と述懐。その原因は、初回の打ち合わせで黒沢から「戦時下が舞台のドラマなんですが、ギターってあり得るんでしょうか? 少なくともエレキギターはない……合うとしてもアコースティック。でもギターの音がこの時代に合うかどうか判断が付かないんです」と素直に相談したことだったそう。「あとで聞くと、そのとき長岡さんは『頭が真っ白になった』と(笑)。ギターが嫌なわけじゃないので弁解したんですが、長岡さんは『ギター以外でやります!』と頑なでした。結果、完成したものはクラシカルなオーケストラを主体とした、これぞ映画という音楽。本当に100%満足してます。ご本人も大変やりがいがあったと思うんですが、次やるときはぜひギターでお願いしたい」と期待を込めた。

左から黒沢清、蒼井優、高橋一生。

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Q&Aの最後は「“こういう映画”を見慣れてない友達を『スパイの妻』に誘うには」という質問。高橋は「ものすごいアクション!って言えばいいんじゃないですか。観ていただけると、確かにアクションだったと思ってくださると思います」と述べ、蒼井は「一生くん出るよ(笑)」と冗談交じりに答えつつ「人によってはホラーよりも怖い、恐ろしい映画。夫婦の話でありながらミステリー。謎がたくさんあります」と続ける。黒沢は「“スパイの妻”だと妻がスパイに従っているように思えますが、決してそうではない。だんだん妻がスパイを超えていく映画」「1940年代前半の戦時下にタイムスリップできる」とおすすめした。

「スパイの妻」は10月16日より東京・新宿ピカデリーほか全国ロードショー。

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(c)2020 NHK, NEP, Incline, C&I

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水道橋博士 @s_hakase

「スパイの妻」蒼井優は「ホラーよりも怖い」、高橋一生は「ものすごいアクション」(写真15枚) https://t.co/7ziVeNMBc9

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