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コムアイも出演、サイレント映画「サタンジャワ」の立体音響上映イベント開催

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「サタンジャワ」Photo by Erick Wirasakti

「サタンジャワ」Photo by Erick Wirasakti

サイレント映画「サタンジャワ」と立体音響コンサートを組み合わせた公演が、7月2日に東京・有楽町朝日ホールで行われる。

インドネシア人のガリン・ヌグロホが監督を務めた「サタンジャワ」は、ジャワ島に根付く神秘主義を軸に、男女、男とサタン、女とサタンの恋愛関係を描いた作品。今回の公演では森永泰弘が音楽・音響デザインを担当する。ボーカルとしてコムアイ水曜日のカンパネラ)が舞台に登場。そのほかの出演者とともに、立体音響で映画の音楽を演奏する。

前売り券はチケットぴあ、イープラス、Peatixで販売中。

「サタンジャワ」サイレント映画+立体音響コンサート

2019年7月2日(火)東京都 有楽町朝日ホール
第1回:開場 13:30 / 開演 14:00
第2回:開場 18:30 / 開演 19:00
料金(税込):前売り一般券 3000円 / 当日一般券 3500円 / 25歳以下(当日要証明書)2000円
<舞台出演者>
コムアイ / グナワン・マルヤント / ルルク・アリ・プラセティオ / ヘル・プラワント / テグー・パルマナ / 斎木アンサンブルほか

石坂健治(日本映画大学教授 / 東京国際映画祭プログラミングディレクター)コメント

映画監督のなかにはジャンルを横断・越境して創作するタイプのアーティストたちが存在する。アジアに限れば、アピチャッポン・ウィーラセタクン、キドラット・タヒミック、ツァイ・ミンリャンらは、映画と美術・演劇といった隣接分野を自在に往還して作品を生み出す。最近のアピチャッポンなら劇場空間と光を使った「フィーバー・ルーム」が印象に残る。
インドネシア映画界を牽引するガリン・ヌグロホもそうした系譜に連なる一人だ。1961年ジョグジャカルタ生まれのヌグロホは、東京国際映画祭に10回を超える入選を果たし、ストリート・チルドレンを描いた「枕の上の葉」(1998)が劇場公開されるなど、日本との縁が深い作家である。スハルト独裁体制とその終焉後のインドネシア社会を見据える一方、早くからジャンル横断的な表現を得意としてきた。新婚夫婦の諍いと融和を綴ったデビュー作「一切れのパンの愛」(1991)や、伝統舞踊の師匠と弟子の禁断の恋に踏み込んだ「そして月も踊る」(1995)では、演劇的に様式化された演技やセリフ回し、詩の朗読や踊りが劇中に組み込まれたが、やがて全篇“ガムラン・オペラ”といった趣の大作「オペラジャワ」(2006)へと発展し、近作「めくるめく愛の詩」(2015)には1970年代の流行歌がダンスを伴って効果的に挿入され、清々しい歌謡映画となっている。
2016年の初演以来、豪州や欧州での公演に続いていよいよ日本上陸の「サタンジャワ」は、軽やかにジャンルを越境するヌグロホ芸術の集大成にして新たなチャレンジともいえる注目作だ。ジャワ島の神話世界を描くモノクロ・サイレントの映像をベースに、上映=上演される国のクリエーターとタッグを組み、そのつど一期一会の劇伴を生演奏と音響設計で作りあげるという画期的なコンセプトの本作は、映像とサウンドが積算され、圧倒的な迫力で劇場全体を包み込むだろう。気鋭のサウンドデザイナー・森永泰弘が創りあげる音響空間にも期待が高まる。

ガリン・ヌグロホ コメント

「サタンジャワ」は、私にとって初めてのサイレント映画であり、2つの事柄から着想を得ています。1つは、インドネシアの伝統的な影絵芝居ワヤン・クリ。通常ガムラン演奏とともに上演されるもので、あたかも無声映画にガムラン・オーケストラの生演奏が付いているようにも見えます。2つめは、ドイツ表現主義の巨匠F・W・ムルナウ監督の「吸血鬼ノスフェラトゥ」(1922)です。サイレントは、想像が無限に広がるものであり、禅に通じるとも感じます。極めてシンプルなモノクロの世界は、私たちの想像力を働かせ、色を織り成していきます。また、私たちにとって音楽は魂です。音楽は物語であり、人々の感情を語り、想像力を与えてくれます。サイレントであり、モノクロであり、そして生演奏付きであること、これらは私が長年取り組んでいる「エクスパンデッド・シネマ(拡張映画)」において大切な意味を持つのです。

森永泰弘 コメント

「サタンジャワ」はジャワ島に根付く神秘主義を軸に男女、男とサタン、女とサタンの恋愛関係を描いた作品である。映画が音と映像、スクリーンとスピーカー、登場人物と観客を繋げていくように、モノクロームで撮られた本作は、人間、動物、オブジェクトが重層的に繋がりあっていく。これらの繋がりをまとめあげる唯一の時空間が、儀式だと僕は考えている。この唯一の時空間から生成されゆく音─儀式の音─が、本作「サタンジャワ」で試みるサウンドデザインのコンセプトにある。
ガリン・ヌグロホとは長年の友人関係であり、彼が長年耕したフィールドの地に僕は幾度も足を運び、現地の音楽家やアーティストとの交流を支えてくれたのもヌグロホであった。「サタンジャワ」のサウンド版の制作では、僕自身が見て聴いたインドネシアの音をそのまま再現するのではなく、これまでの記録・制作活動を通じて、群島国家の日本とインドネシアの異文化の繋がりを「現代」の視点から問い直すアプローチもできればと考えている。
ジャワ島に根付く音楽、神話、舞踊も、長い歴史の中で変化し、違う島に渡りながら新しい伝統として誕生してきた。本公演ではジャワに固有することなく、その周縁文化の音が映画を通じて繋がりあう瞬間を各々の視点で体験してもらいたい。

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