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「デイアンドナイト」手描き看板をシネマート新宿にて展示、制作者が注目点語る

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阿部進之介が主演、山田孝之がプロデューサーを務めた「デイアンドナイト」。本作のポスタービジュアルを手描きした看板が東京・シネマート新宿の館内に展示されている。

人間の善悪をテーマとした本作では、父親の自殺をきっかけに実家へ帰ることになった主人公・明石幸次が、次第に復讐心に駆られ裏稼業に手を染めていくさまが描かれる。阿部のほか、安藤政信清原果耶田中哲司らがキャストに名を連ねた。

看板の制作者は、秋田県大館市の劇場・御成座で絵看板制作を続ける仲谷政信氏。本職は介護士だが、2015年から同館で上映される100作品以上の絵看板を描いてきた。本作の看板では緻密さにこだわったと語り、「4人の雰囲気もそれぞれの境遇を想像しながら描き分けたつもりです。まだまだつたない表現力ですが、今まで描いてきた力量のありったけをぶつけました。少しでも映画の世界と共鳴していたと感じてもらえたら嬉しいです」とコメントする。また、仲谷氏が手がけた看板には同館で飼育されているウサギ・てっぴーが必ず描かれているのも特徴。「いわば私のサイン代わりの、皆さんとのコミュニケーション・ツールの様なものです。新宿に出没した『てっぴー』をどうぞ探して見て下さい」と呼びかけた。仲谷氏のコメント全文は下記に記載している。

藤井道人が監督を務めた「デイアンドナイト」は全国で公開中。

仲谷政信氏 コメント

今から36年前、グラフィック・デザインの勉強のため上京した秋田の少年が、一番感激したのは新宿駅東口前に並んでいた巨大な映画の手描き看板達でした。その迫力、描写力、鮮やかさなど、神業のような看板に魅了され、その後新宿に行って新作の看板を見るのが楽しみになりました。そして「いつかあんな絵が描けたらいなぁ」などと漠然と思っていたものです。それから月日は流れ、平成最後の年を迎えた今、私にとっては絵看板の聖地とも言える新宿の映画館に、自分の描いた絵看板が展示される時が来るとは思いもよらない事でしたが、何かの巡り合わせの様な気もします。今、何故絵看板を描いているのか? 少し話をしてみます。
私は秋田県の比内町(現大館市)に生まれ育ちました。子供の頃から絵を描を描いたり、映画を観るのが大好きで、大館市の映画館にもよく通ってました。そして映画のポスターを買って来て、自分の部屋の天井や壁いっぱいに貼っていたものです。特に御成座はスターウォーズやブルース・リーの映画など洋画の上映作品が多く、カッコいいポスターの世界に浸っていました。やがて高校を卒業して上京し、専門学校を経てそのまま東京で雑誌編集や広告のデザイナーとして働きながら趣味として映画を観ては映画チラシを集めるようになります。そして27歳で帰郷し、印刷の仕事などをしながら地元の映画館や、100キロほど離れた秋田市や青森市、盛岡市まで車を走らせて映画を観に行くなど、さらに映画の虜になって行ったのです。しかし地方の映画館はどんどん衰退し、大館の映画館も最後の砦となった御成座が2005年に閉館します。そして所有者が替わり、売地となっても取り壊されず、買い手もつかずその場に存在し続けます。長い間夢中になって通った場所が、どんどん廃墟のようになっていくのを見るのはとても辛いものでした。しかし2014年の7月に現オーナーの切替さんが御成座を借りて映画館として復活させました。シネコン、デジタル上映が主流の現在、昔ながらの時代遅れの劇場が受け入れられる筈がないと思いながらも、又御成座で映画を観ることが出来ることを素直に喜び、出来る限り通って映画を観る事にしました。そんな折、再開から4ヶ月ほど経って絵看板も飾りたいとの話が出て来たのです。私は30数年前の「映画の絵看板を描きたい」という夢が叶う時が来たと思い、自分にやらせて欲しいと名乗りを上げました。幸いにもレトロな佇まいで絶滅危惧種の絵看板のある御成座は、ネット社会となった現代で全国的に注目を集めだし、地元の住民以外からも来客者が訪れる様になりました。これは全く予想もしなかったことであり、その反響に正直驚きました。「何故、御成座で絵看板を描き続けているか?」との質問への答えは、私としては一番理想的な場所でひとつの夢が叶い、好きな事をさせてもらっているだけの事なのです。それが御成座の為になり、皆さんにも喜んで貰えているならば、それだけで大変光栄な事だと思っています。描き初めて今年の1月で丁度4年になりました。描いた看板も100枚を越えたようです。最初の頃よりは多少腕も上達している気もします。これからも御成座が存続する限り、絵看板も描き続けたいと思います。

看板の注目ポイント

注目ポイントは緻密さです。御成座の看板は、通常建物の正面玄関の上の二階に当たる場所に掲げるので、多少大胆に描いてもあまりアラが目立ちません(だからといって手抜きしているわけでは無くて、毎回、時間の限り頑張って描いてます)。でも、今回の看板は間近で見られる場所での展示なのでごまかしが利かない分、出来る限り緻密に、丁寧に描いたつもりです。4人の雰囲気もそれぞれの境遇を想像しながら描き分けたつもりです。まだまだつたない表現力ですが、今まで描いてきた力量のありったけをぶつけました。少しでも映画の世界と共鳴していたと感じてもらえたら嬉しいです。
又、実はお遊びで、本編とは全く関係の無いウサギが絵看板の中の何処かに隠れています。これは御成座で放し飼いされている看板ウサギの「てっぴー」ちゃんです。御成座の看板では毎回必ず「てっぴー」を描いていて、それを探すのを楽しみにしている人もいるのです。いわば私のサイン代わりの、皆さんとのコミュニケーション・ツールの様なものです。新宿に出没した「てっぴー」をどうぞ探して見て下さい。

看板の難しかったところ

これは安藤政信さんの顔です。最初、ポスターの色合いに似せて描いてみましたが、写真では青みかかった顔が、絵にするとゾンビにしか見えません。そこで再度肌色っぽく上から重ね塗りして、さらに薄く水色をコーティングするような感じて仕上げました。
他の3人と比べてちょっと違和感を感じた方がいたら、そんな事情が有りました。まだまだ未熟者であることを痛感しながらも、今後もさらに色々チャレンジしていきたいと思います。
兎に角、今回は貴重な機会を設けて下さり有り難うございました。これからも一人でも多くの人が御成座とその絵看板に関心を持って下さり、片田舎の劇場に足を運んでいただければ幸いです。

(c)「デイアンドナイト」製作委員会

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