「禅と骨」記憶や時間をテーマに森達也、生物学者・福岡伸一らが独自の視点でトーク

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禅と骨」の公開直前カウントダウン上映会が、東京・ユーロライブで8月24日に行われ、監督を務めた中村高寛と、ゲストとして生物学者の福岡伸一、映画監督・作家の森達也が上映後のシンポジウムに登壇した。

「禅と骨」シンポジウムにて、左から森達也、中村高寛、福岡伸一。

「禅と骨」シンポジウムにて、左から森達也、中村高寛、福岡伸一。

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「禅と骨」ポスタービジュアル

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本作は、1918年に生まれた日系アメリカ人の禅僧ヘンリ・ミトワを追ったドキュメンタリー。80歳を目前にしてヘンリが映画制作に乗り出す姿を、ドキュメンタリーパートに加え、ウエンツ瑛士主演によるドラマパートと今日マチ子がキャラクター原案を担当したアニメパートを織り交ぜながら描き出す。

森達也

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イベントでは、福岡が映画制作を細胞研究になぞらえて解説するなど、独特な視点による分析が繰り広げられた。森もドキュメンタリー撮影を化学の実験に当てはめ、「被写体をフラスコに入れて熱したり冷やしたり刺激を与え、どう反応するかじっと見る。その反応の中から自分の中の何かに触れたものを編集していく。逆に自分が刺激されることもあるし、相互作用によってドキュメンタリーは作られていくんです」と説明。そして「ただカメラを回しているだけでは、ただの映像にしかならない。僕が今ここで撮るなら、皆さんを驚かせたり怒ったりして反応を待ってみる。そういうのがドキュメンタリーの演出というもの」と続ける。

中村高寛

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400時間ほどある素材を1本の作品にまとめ上げたという中村に対し、福岡から「カット割りが細かいのはなぜか?」と質問が。中村は「この映画はヘンリの全人生を描いているので、それなりにテンポよく見せたかった」と明かし、さらに「(編集は)時系列に沿っていない。この映画の世界における時間軸を作らなければいけないから、あえて分断することで時間を感じさせている。記憶と時間に関してはドキュメンタリーを撮るうえで必ずぶち当たる命題だけど、いかに自覚的に向き合えるかが大事ですね」と持論を述べた。

「禅と骨」シンポジウムの様子。左から森達也、福岡伸一、中村高寛。

「禅と骨」シンポジウムの様子。左から森達也、福岡伸一、中村高寛。[拡大]

“記憶”に関する話題が上がったところで、今度は中村が福岡に「本作における“骨”の扱いをどのように捉えたか」と尋ねる。福岡は「人は死んだら何が残りますか?」と会場に問いかけ、「骨にはカルシウムが含まれているので、焼けば実体としてそこに残っているように見えます。でも実際に残っているのは、生命体の残骸なんです」と解説。「死んだら人はどこに行くのか? 体は二酸化炭素や水になって空気中に流れ、骨も地中に長く埋められればほかの生物に再利用され、生命の大巡回に巻き込まれていく。そしてもっとも大事な“記憶”。これは残された者たちの記憶の中に溶け込んでいくのです」と続け、「みんなが象徴的に大切にしている“骨”ですが、ある意味では流れ流れていくものだと思っています」と結んだ。

「禅と骨」は9月2日より東京・ポレポレ東中野ほか全国で順次公開される。

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