本作は「台湾人生」「台湾アイデンティティー」に続く、酒井が手がけた台湾3部作の最終章。祈り、家族、命への感謝をテーマに、台湾の台東県で暮らす人々の生活を描き出す。1895年から1945年まで日本の統治下にあった台湾。その頃から生きる人々の中には、日本語を解する者も多くいるという。本作で酒井はそんな“かつて日本人だった人たち”を訪ね、彼らの生活を見つめる。
イベントでは、台湾が好きで10回ほど訪れている奈良と酒井がトークを行った。奈良は「台湾映画が好きで、つい一昨日ぐらいも『藍色夏恋』を観返しましたよ。いい青春映画ですよね」としみじみ述べる。台湾好きが多く集まった会場からは「ああ」と15年ほど前の映画を懐かしむ声も漏れた。
奈良が「台湾人生」「台湾アイデンティティー」を観たとTwitterでつぶやいたことがきっかけで実現した本日のトーク。奈良は映画で描かれていた台湾の吉野村こと吉安郷を訪れたことを明かす。「ドキュメンタリーって嘘がなくて。行けば同じ風景があるんですよ。普通の映画みたいにセットや演技がない分、すごく身近に感じるんです」と語り、「(映画に登場する)おばあちゃんにも会いたかったけど知らない人が訪ねるのも変かなあって思ってただ見て帰ってきただけなんですけど(笑)」と話し笑いを誘う。
続いて奈良が酒井へ台湾のドキュメンタリーを制作しようと思ったきっかけを問うと、酒井は「台湾映画を観たことなんです。ツァイ・ミンリャン監督の『愛情萬歳』を観て」と明かす。その映画の舞台が台北だったことから、「ミーハーな気持ちで台北に行きたい」と考え訪れたという。「そのときにたまたま日本語を話すおじいさんに話しかけられたんですけど、その方が小さい頃、日本人の先生にとってもかわいがってもらったという思い出話をしてくれて。おじいさんが『今でもその先生に会いたい!』と話してたのが私にとって強烈だったんです」と語る。奈良は「日本語を話す人がときどきいてびっくりするんですよね。俺より訛ってなくて(笑)」と話し会場は笑いに包まれていた。
また奈良が本作のタイトルを「台湾萬歳」にした理由を尋ねる一幕も。このタイトルに決めるまで紆余曲折があったという酒井。「映画に出てくる歴史の先生ブヌン族のカトゥさんが『軍国主義の天皇陛下万歳を想起した』とおっしゃていて、そのことは私自身もタイトルを付けた時点で頭によぎってたんです」と語る。しかし台湾の人々にとってプラスのイメージを持たせる“萬歳”を意図していると話す酒井は「戦前の日本統治時代、戦後の戒厳令時代を乗り越えてきた台湾の人たちに対する尊敬の気持ち、それからいろんなものを包み込む台湾の大自然への畏敬の念を込めた」と説明していた。
「台湾萬歳」は7月22日より東京・ポレポレ東中野で公開される。
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「台湾萬歳」酒井充子が奈良美智と対談、3部作発端はツァイ・ミンリャン「愛情萬歳」 - 映画ナタリー https://t.co/3Lbvx1sxPZ