主人公アディが“沈黙”の終わりを願う、「ルック・オブ・サイレンス」座談会

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本日6月3日、「ルック・オブ・サイレンス」のパネルディスカッションが東京・早稲田大学小野記念講堂にて行われ、監督のジョシュア・オッペンハイマー、主人公のアディ・ルクン、慶応大学名誉教授の倉沢愛子、学生パネラー2名が登壇した。

「ルック・オブ・サイレンス」パネルディスカッションの様子。左から二重作和代さん、野間千晶さん、ジョシュア・オッペンハイマー、アディ・ルクン、倉沢愛子。

「ルック・オブ・サイレンス」パネルディスカッションの様子。左から二重作和代さん、野間千晶さん、ジョシュア・オッペンハイマー、アディ・ルクン、倉沢愛子。

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ジョシュア・オッペンハイマー

ジョシュア・オッペンハイマー[拡大]

「ルック・オブ・サイレンス」は、1960年代のインドネシアで行われた100万人規模の大虐殺を、加害者たちに再び演じさせた記録映画「アクト・オブ・キリング」の第2章。同事件を被害者側から見つめ直したドキュメンタリーで、兄を虐殺された青年のアディが、ジョシュアと共に加害者のもとを訪れ事件の核心に迫る質問を投げかけていく。

アディ・ルクン

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制作の動機を聞かれたジョシュアは、初めてインドネシアを訪れた2003年にアディに出会っていたことを説明。「人権団体の依頼で被害者への取材を始めて3週間くらい経つと、軍の脅迫を受けるようになりました。そんなときアディから『被害者が難しいなら加害者側を撮ってください』とお願いを受けたんです」と前作の制作秘話を明かした。続けて加害者側が権力者になっている社会で被害者の証言を撮ることの難しさを感じたと言うジョシュアは、「それでも罪を問われず、権力者の地位に留まり続けている加害者と、沈黙と不安を抱えて生きてきた被害者の両方を撮りたいと考えていました」と同作に込めた思いを述べる。

「ルック・オブ・サイレンス」パネルディスカッションの様子。

「ルック・オブ・サイレンス」パネルディスカッションの様子。[拡大]

第71回ヴェネツィア国際映画祭の審査員大賞をはじめ、世界の映画祭で30以上の賞に輝いている同作。アディは、「インドネシアでも3000回に及ぶ上映会が開かれ、事件を知らない多くの若者が会場に訪れてくれたんです。その姿に胸が熱くなりました」と本国での状況を伝える。また加害者たちと直接対峙することに恐怖はなかったかと問われると「すごく怖かったです。でもそれ以上に沈黙を守り続けることを終わりにしたかった」と撮影時を振り返った。

2つの作品はあくまでも現代の話であることを熱く訴えるジョシュアは、「今までは英雄視されていた加害者たちの行動を、インドネシアの主要なメディアが『虐殺』と言えるようになりました」と作品が社会に与えた影響を解説。続けてアディは「以前は、村落社会においてこの事件について話すことは不可能でした。でも2つの作品によって誰もが事件について話すことができるようになったんです」とその事実を噛み締めるように言葉を重ねた。

「ルック・オブ・サイレンス」は、7月4日より東京のシアター・イメージフォーラムほかにて全国ロードショー。

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河村書店 @consaba

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