〇〇の異常な愛情 Vol. 7 [バックナンバー]
榊原茜の場合:1年前にトム・ハンクスにハマったばかりのファンは、如何にしてほぼ1人でZINEまで作ってしまったのか
2022年3月18日 12:30 7
もしトム・ハンクス主演の作品が撮れるなら……
──ちなみに昨年の「Merry Xmas! トム・ハンクス映画祭」ではどの作品を上映されたんですか?
ロン・ハワード監督の「
──せっかくなので、ZINEでは取り上げていないアニメーション作品「ポーラー・エクスプレス」の感想を教えてください。
作品として特別な思い入れがあるかと聞かれたらそこまでではないんですけど、今作ではパフォーマンスキャプチャーという技術を使って俳優の表情からしぐさ、感情までを記録してCGIのキャラクター化しているんです。 その中でトムは主人公の少年はもちろん、車掌やサンタクロースなど、1人で5役を担当している。この事実を知ってから、興味深く観るようなりました。言われてみれば、全部トムの動きに見える気がするんです。
──好きな人がいろんな役で何度も登場する作品はお得感いっぱいですよね! ところで、ここまで読んでもまだトムの魅力に気付けないという読者の方たちに、トムの魅力が伝わる入門編としてオススメしたい作品は?
うーん、そうですね……。一番わかりやすくて観やすいとなると初期の代表作であるコメディ作品の「
──榊原さんは脚本を書かれたり舞台の演出もされていますが、もし
すごく迷いますが、モキュメンタリー作品を撮りたいです。日常をテーマにした作品で、トムが撮影現場に行くまでの道すがらや、脱走を図った隣家の犬を一緒に探してあげる様子だったり。そういう日々のなんでもないことをモキュメンタリーとして撮りたいです。イメージで言うとジム・ジャームッシュ監督の「パターソン」のような感じです。真面目な中にクスッとした笑いが潜んでいるような、そういう作品がいいなと思っています。
──リアリティドラマやドキュメンタリーはなく、モキュメンタリーなんですね。
はい。作り物とわかっているほうが面白いかなと思うので。
──トムのプライベートに対する興味は?
ないです。撮影現場でのドキュメンタリーには興味があってよく映像を探したりしていますが、私生活を知りたいといった欲はまったくないんです。トムのSNSはチェックしていますが、最近あまり更新していないんですよね。
──トムは以前よくTwitterで、街で見つけた「落とし物」の写真を撮影してツイートしていましたよね。
はい。トムはあの「落とし物」写真をツイートする理由を、「俳句的な感覚だ」と言っていました。例えば道端に落ちた片一方の手袋の写真は、冬の終わりを嘆く句だったり……。 その言葉を聞いたときに私は、おそらく彼は誰も傷付けない方法でみんなを楽しませたいと思っているんじゃないかと考えたんです。落とし物って基本的に人種やジェンダー、あるいは言語や経済状況の差など関係なくみんなで共有できる出来事ですよね。誰もが共有できるものの1つとして落とし物を捉えていて、そういうトピックをフォロワーの人たちに提供して楽しんでもらったり、つながってもらったりしてほしいという気持ちで投稿していたように思うんです。
──素晴らしい分析です! Twitterの投稿ひとつとっても誰も傷付けないトムの優しさが表れている……。そこまでトムのことを考えられる愛がすごいです。
ありがとうございます(笑)。
──つかぬことを伺いますが、トム以外にも好きな俳優さんはいるんですか?
最近はデンゼル・ワシントンの作品をものすごく観ているんです。
──ひょっとしてそれは「
まさにその通りです。「フィラデルフィア」はトム・ハンクスがHIV感染をした弁護士を演じてアカデミー賞主演男優賞を獲得した作品なのですが、デンゼルは劇中トムのライバルから一転、トムを弁護する側に回る役を演じているんです。 今作でデンゼルのことを知り、「こういう俳優さんもいるんだ」と思って彼の作品を追いかけていたらハマった感じです。2人とも、同じ“正義の人”を演じながら、まったく違った表現や存在にたどり着くのが観ていてとても興味深いです。
──トムがつなげてくれる縁ですね。
もしトムがいなかったらデンゼルにも出会っていなかったかもしれません。
「あなたが背負っているトム・ハンクスという看板は重たくないですか?」
──トム・ハンクスでZINE第2弾は考えていますか?
トムに関しては自分的に出し切った感があるので、トムではない俳優でやるのも面白そうかなと。「俳優のFAN BOOK」でシリーズ化するのも楽しそうだなと考えたりしています。
──シリーズ化した場合、今のところ次の候補は……?
やっぱりデンゼル・ワシントンが挙がってきますね(笑)。
──トム・ハンクスを取材する機会があったら聞いてみたいことはありますか?
彼が本音で答えてくれるという前提で、「あなたが背負っているトム・ハンクスという看板は重たくないですか?」と聞いてみたいです。
──「いやあ、重たいよ。君がなんとかしてくれないかな?」と返されたら?
本当にそう返されそうです(笑)。でもたぶんそういう感じで前向きに答えてくれそうな予感はします。その場合にはどう乗り越えてきたのかとか、そういう話も聞いてみたいです。
──善良なトム・ハンクスというキャラクターを背負っているのがちょっと重たそうに見える?
重たそうに見えますが、それは彼自身の生きがいにもつながっていて、喜びも多い重さなんじゃないかなと勝手に思っています。
──では、最後に「こんなトムを観たい!」、どんなトム?
こないだふと思ったんですけど、歳下の男性とガッツリ絡む役というのがあまりない気がするんです。Netflixオリジナル作品「この茫漠たる荒野で」では少女と旅をしていますが、若い男性俳優とタッグを組んでいる作品は意外とない。ただ、エルヴィス・プレスリーのマネージャーだったトム・パーカーを演じる次回作「エルヴィス」(7月1日公開予定)で、エルヴィス役にオースティン・バトラーという若い俳優さんが起用されている(参照:エルヴィス・プレスリーの名曲とともに半生を描く映画公開、監督はバズ・ラーマン)ので、ひょっとしたら今作でそんなトムを観られるかもしれない。そう思うと今から楽しみです!
榊原茜(サカキバラアカネ)
埼玉県出身。大学を卒業後、演劇ユニット・深海遊泳の主宰として、小劇場をメインに俳優として活動。2021年12月には「Merry Xmas! トム・ハンクス映画祭」と題したイベントを企画、運営した。「トム・ハンクス FAN BOOK」のほかにも、「役作りのための映画鑑賞」というZINEも制作しており、いずれも「深海遊泳ストア」で購入可能。
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