「Procession Spin」とは
「Procession Spin」は、縄文時代から現代までに人間が作ってきたさまざまな美術を連ね、それらが未来へとつながる流れを表現した大型の陶板レリーフ。大友が約3年かけて描いた原画をもとに、静岡のパブリックアート制作集団・クレアーレ熱海ゆがわら工房の職人7人が約2年かけて制作した。サイズは縦2.4m、横7mと大型で、164個の陶板ピースと、ブロンズで制作された4ピースの計168個で構成。鮮やかな色を表すために290種類の釉薬をかけ合わせて使用しており、多様で複雑な色味が再現されている。左下には「AKIRA」の金田のバイクも組み込まれ、色付けは大友自らが施した。このパブリックアートは、日本交通文化協会の企画によって実現した。
制作には約5年、大友克洋「作品を愛してあげてください」
これまで3つのパブリックアートを手がけてきた大友。今回の「Procession Spin」は「非常に時間がかかって、1番苦労した作品であると思います」と話す。また見て触って楽しめる作品というところで、「皆さんに100円玉や10円玉をどっかの隙間に挟んでいただいて。それを年末に回収しに来ようかなと思っています」と冗談めかし、会場に笑いを誘う。そして「楽しんでいただければ僕らも幸せなので、作品を愛してあげてください」と伝えた。
原画のアイデアについては、さまざまな縄文の芸術から始まり、未来まで描くという流れは決めていたと明かす。苦労したポイントとして「ただ年代順に並べてもつまらないので、(作品を)スピンさせるというのを思いつくまでが大変でした」と語った。制作に際しては、基本的にクレアーレ熱海ゆがわら工房のスタッフに任せていたと回答。これまで2015年の仙台空港パブリックアート「金華童子風神雷神ヲ従エテ波濤ヲ越ユルノ図」、2020年の東京科学大学(旧東京工業大学)大岡山キャンパスのパブリックアート「ELEMENTS OF FUTURE」で制作をともにしてきたため、信頼をおいていると話す。ただ現場では悩んでいた様子もあったと話し、「パーツが多いみたいで、それを構成するのに悩んでいたみたいで。ただ平面的に並べるってものでもなく、高さもあるので。釉薬も簡単に色が出るわけではなく、鎌倉時代あたりの無力騒然とした色を出すのに苦労したみたいです。みんな、よくがんばったと思います」と振り返った。
また今後、パブリックアートがどのような存在になればいいかと問われると、「ハチ公の足みたいにツルツルになるくらい、愛されればいいかな」と回答。お気に入りの箇所は特にはないが、平安時代のポジションに描かれた渡岸寺の十一面観音像はお気に入りの作品だと話した。
関係者からの挨拶、祝辞
主催者の東京地下鉄株式会社の代表取締役社長、社長執行役員の小坂彰洋氏は、関係各社に感謝を送るとともに、「銀座駅は伝統と先端の融合をコンセプトに大規模リニューアルを進めてきました。大友先生の作品からも、伝統、先端の融合を感じられます。銀座駅、銀座エリアの顔として、多くの皆様に末永く愛され続けることを願っております」と挨拶する。協賛社のセイコーグループ株式会社代表取締役社長兼グループCEO兼CCOの服部真二氏は、「(作品の)隅にワコーが入っておりまして、非常にうれしく、喜んで協賛をさせていただきました。新しい銀座の文化として、銀座を行き交う人たちの心に響くような存在になることを心から願っております」と祝辞を述べる。
公益財団法人日本交通文化協会の理事長・滝久雄氏は、「歴史の膨大な時間的流れを視覚的に見せながら、縄文時代に始まる日本の壮大な文化が、その歴史のうねりのなかにいきいきと表現されています」と作品に対する解釈を語る。また建築家の隈研吾も参加。「東京という都市を、これだけ安全で活力のある都市にしてきた象徴が銀座であり、そこに大友先生の作品が来るというのは、世界に日本の文化を発信する最高の場所に最高の作品が来たと思います」と伝えた。
東京藝術大学学長の日比野克彦氏は、美術品は最初から美術館に作品があったわけではなく、歴史的にはパブリックの中にアートがあったことが先であると述べる。そしてパブリックアートが長い間色褪せることのない技術を用いた陶板作品であることに触れ、「500年、1000年先と、時間を飛び越えて伝わっていく作品だと思います」と語った。最後に、公益財団法人メトロ文化財団代表理事会長の本田勝氏は、「これからこの作品を鑑賞される皆様が、その前でふと立ち止まったり近づいたり離れたりしながら、それぞれにさまざまなことを感じていただければ大変嬉しく存じます」と述べた。
大友克洋のほかの記事
タグ
関連人物
Football by Gutsy @Gutsy16114011
@comic_natalie 銀座に大友克洋の新作パブリックアート登場!縄文から未来までの美術の流れが圧巻✨