「PLUTO」は楽しいだけの物語ではない、浦沢直樹が作品へ込めた思いを語る

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浦沢直樹原作によるアニメ「PLUTO」の世界最速ワールドプレミアが、本日10月20日に東京・虎ノ門ヒルズステーションタワーで開催された。上映前に行われたイベントには原作者の浦沢、ゲジヒト役の藤真秀、アトム役の日笠陽子、プルートゥ役の関俊彦が登壇。イベント後半にはサプライズゲストとして、内田理央が参加した。

左から内田理央、日笠陽子、浦沢直樹、藤真秀、関俊彦。

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浦沢直樹

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企画・制作から10年が経ち、ついに10月26日からアニメが放送される「PLUTO」。浦沢は「2023年に配信されることの意味を深く胸に感じています」と話す。企画が立ち上がった当初は劇場映画の2時間サイズで考えていると伝えられたことを明かし、「全8巻が入るわけもないと思い、丸山(正雄)プロデューサーと話し合いながら、今回の形に収まりました。Netflixなどのメディアの発達によってできたことだと思いますし、一番理想的な形に落ち着いたかなと」とこれまでの10年間を振り返る。

左から浦沢直樹、藤真秀、関俊彦。

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藤と日笠は配役を受けてかなりのプレッシャーがあったと告白。関は自身が演じるプルートゥについて「物語冒頭では唸り声しかないので、言葉でのアプローチというのが難しく……。ただプルートゥの持っている怒りや悲しみの憎悪を表現できるように工夫しました」と解説した。

内田理央と藤真秀。

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ここで内田がサプライズ登場。藤に花束を渡すと、会場からは拍手が起こった。また「PLUTO」の映像をいち早く観た内田は「初めて読んだ高校生のときの衝撃を再び受けたような感じでした」と語る。関は第1話で殉職してしまうロビーというロボットのエピソードが印象的だったと話し「ロビーの奥さんロボットがロビーの死を悼むという描写がすごい。この作品を読み進めていくうちに、ロボットに心があるということに疑問を抱かなくなってくるんですよ」と熱弁した。

左から内田理央、日笠陽子、浦沢直樹。

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続いて内田からの質問コーナーへ。初めて映像を観たときの感想を聞かれた浦沢は「僕の作品ってほぼモノローグを使っていなくて。(映像を観て)声優さんたちがセリフを言うときに、本当はこのキャラはこういう気持ちがあるんだなというのを演技で感じることができて大変感動しました」と述べる。日笠は「言葉と心って直結しているようでしていないところもあって。例えば、悲しいときにはただ泣いたようなお芝居をするんじゃなく、笑顔で話すというパターンも存在します。本音を隠しているんだけど、見た人に訴えかける、何かを思わせる余白みたいなものがたくさん存在していると思っています」と語った。

ロボットを演じる難しさについて問われた藤。最初は少しロボットを意識していたと言うが、「現場でディレクターやスタッフさんたちと『もうちょっと人間でいいんじゃないか』というアドバイスがあり、人間かロボットかで振り切るのではなく、なんとも言えないところでその2つの要素を泳がすことで、切なさを出せないかと探り探り演じました」と明かした。

最後に浦沢からはメッセージが送られる。「私が(『PLUTO』の原作となる)『地上最大のロボット』を読んだのは1964年。1962年にはキューバ危機があり、また『PLUTO』を描き始めた2003年にはイラク戦争がありました。いつ核戦争になるかという時代で、この何とも言い表せない感情はなんだろうと、思ったんです。そして今の世界の状況を見て、そういった気持ちになっている方も大勢いらっしゃるかと思います。『PLUTO』は決して楽しいだけの話じゃありません。手塚先生は、『人間の命とはなんだ』というとても難しいテーマをエンタメにして皆さんに届け、みんなで考えようと提示してきました。『PLUTO』を観て、その気持ちが芽生えてくれたらうれしいです。まずはエンタメとして楽しんでください」と話し、イベントは締めくくられた。

アニメ「PLUTO」は手塚治虫「鉄腕アトム」のエピソード「地上最大のロボット」を浦沢が独自の視点と解釈でリメイクした物語。1話60分の全8話で、原作8巻分の物語が描かれる。Netflixにて10月26日に独占配信開始。

「PLUTO」に浦沢直樹が込めた思いとは?「楽しいだけの物語ではない」

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Netflixシリーズ「PLUTO」

2023年10月26日(木)よりNetflixにて独占配信

スタッフ

原作:「PLUTO浦沢直樹×手塚治虫 長崎尚志プロデュース 監修 / 手塚眞 協力 / 手塚プロダクション(小学館 ビッグコミックス刊)
監督:河口俊夫
キャラクターデザイン:藤田しげる
クリエイティブアドバイザー:浦沢直樹
CGI演出・特殊撮影:宮田崇弘
撮影監督:佐藤光洋
音響監督:三間雅文
音楽:菅野祐悟
アニメーション制作:スタジオM2
制作プロデュース:ジェンコ

キャスト

ゲジヒト:藤真秀
アトム:日笠陽子
ウラン:鈴木みのり
モンブラン:安元洋貴
ノース2号:山寺宏一
ブランド:木内秀信
ヘラクレス:小山力也
エプシロン:宮野真守
プルートゥ:関俊彦
お茶の水博士:古川登志夫
天馬博士:津田英三
ヘレナ:朴ろ美
ダンカン:羽佐間道夫
アブラ―博士:山路和弘
ブラウ1589:田中秀幸
アレクサンダー大統領:堀内賢雄

※朴ろ美のろは王へんに路が正式表記。

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