「ハルのレジスタ」1巻

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「ハルのレジスタ」現代サッカーでは絶滅危惧種の“レジスタ”に挑戦!熱い女子サッカーマンガ

PR槌居「ハルのレジスタ」

天才サッカー少女“ハルちゃん”と呼ばれた過去も今となっては黒歴史。女子高生・荒井華(あらいはる)は自分のことを知る者がいない地元から離れた高校へと転校し、サッカーと距離を置いた新生活を始めようとしていた。しかしそんな華の前に、“ハルちゃん”が憧れの人だという新入生・小山内皐(おさないさつき)が現れ……。夢を諦めた少女と夢を追いかける少女の女子サッカー物語、キックオフ!

/ はるのおと

「ハルのレジスタ」1巻
「ハルのレジスタ」1巻
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「ピルロが好き」「レジスタ」この言葉にピンときたら

聞けばこの作者、好きなサッカー選手はかのイタリアの名手アンドレア・ピルロだという。この情報とタイトルの「レジスタ」の文字だけで、サッカーファン、あるいは(レジスタの選手が主人公として扱われた例がおそらくない)サッカーマンガのファンなら気になって手に取りたくなるだろう。ただ、それ以外の人々にも注目いただきたいのがこの「ハルのレジスタ」。それくらいサッカーファン的には“おいしさ”を予感させられるマンガなのだ。

本作の主人公は高校2年生の荒井華。かつての彼女は“天才サッカー少女”のハルちゃんとして全国的に有名で、10歳ながら飛び級でU-15に入るほど将来を嘱望されていた。しかし彼女は膝の怪我(これが前十字靭帯断裂ってのもリアルでつらい)の影響で走れなくなりサッカーから離れてしまう。

主人公・荒井華(はる)は、かつて天才サッカー少女・ハルちゃんとして有名だった。しかし……。

主人公・荒井華(はる)は、かつて天才サッカー少女・ハルちゃんとして有名だった。しかし……。

すっかりひねくれてしまった華が御坂学園という高校に転入し、“ハルちゃん”に憧れてサッカーを始めたというドジでお人好しな小山内皐という生徒と出会ったことをきっかけに、渋々ながら再びサッカーを始める……というのが本作のあらすじとなる。

女子サッカーを題材としているのでもちろん登場キャラクターは女性ばかりだが、「ガールズ&パンツァー」や「ハイスクール・フリート」といった美少女アニメ関連のコミカライズをしてきた作者らしく女の子は当然のようにみんなかわいらしい。クールな華と天真爛漫な皐という凸凹コンビを軸に、スタメン11人の個性が1巻の範囲でもきちんと把握できるあたりは、さすが大勢のキャラクターが登場する作品を担当してきただけある達者さだ。

それも美少女キャラ的な属性だけでなく、「打倒ハルちゃん」を掲げる関西からやってきた俊足ストライカー、高校サッカーオタクなサイドの職人、寡黙な長身のアンカーなどサッカー的な個性との組み合わせによって、今後の活躍により期待を抱かされる。

物語はまだ序盤も序盤、しかし大いなるロマンの兆しはビンビン

ただ第1巻時点では、まだ本格的なサッカー描写は少ない。意地悪してくる不良を撃退する、サッカー部を潰そうとする生徒会長が現れる、廃部を回避するための練習試合に向けてメンバーを集める……といった、もはや安心するような部活ものの典型的な展開とともに華と皐の掘り下げが丁寧に進むため、第1巻の終盤でようやく初めての試合が始まる。

ただし、その間に見られる華の有り余る才能を感じさせるボールコントロールや、試合序盤で見られるサッカー描写は充分に迫力あり。これは第1巻収録後のエピソード(カドコミにて公開中の第5話)だが、左サイドにいる華からパスを受けたFWがトラップせずに直接ゴールを決める際の描写は、従来のサッカーマンガではあまり見たことないような表現でシュートの威力を感じられて感心させられた。

「ハルのレジスタ」第5話より。華からパスを受けたFWがトラップせずに直接ゴールを決めるシーン。

「ハルのレジスタ」第5話より。華からパスを受けたFWがトラップせずに直接ゴールを決めるシーン。

レジスタとはイタリア語の演出家を意味し、サッカーにおいてはフィールドの中盤の下がり目のポジションで司令塔としてゲームメイクする選手のこと。まさにピルロがその代名詞であり、日本人では遠藤保仁や柴崎岳といった例が挙げられる。ただし作中でも触れられている通り、「現代サッカーは選手全員が90分走り切るスタミナとスピードとフィジカルを重視」してアスリート化が進んでおり、ファンタジスタとともにこうした選手の需要はどんどん減っている。

本作はタイトルや設定からして、怪我で走れない華がレジスタに挑戦する話になっていくのは間違いないだろう。現代サッカーでは絶滅危惧種となりつつあるポジションで、元天才の少女が再起していく……その物語は単なる成功物語以上に大きなロマンをサッカーファン、そしてそれ以外にも抱かせる可能性がある。物語としてはまだ“前半立ち上がり”といった進行具合だが、そう感じられる序盤だった。

余談ながらサッカー女子日本代表“なでしこジャパン”がワールドカップで2011年に優勝してからすでに13年以上が経ち、日本における女子サッカーを巡る状況は大きく変わった。WEリーグが発足し、多くの選手が海外のトップクラスのチームで活躍するようになっているが、世間からの注目度はまだ決して高くない。「キャプテン翼」や「ブルーロック」といった作品がサッカーへの関心を高めたように、本作「ハルのレジスタ」が女子サッカーの盛り上がりに大きく寄与するようなファンタジーを期待したい。

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「ハルのレジスタ」第1話を読んでみよう!
©Tsuchii 2025

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