「まるさんかくしかく」1巻

このマンガ、もう読んだ?

「まるさんかくしかく」知らんことばっかり、それが面白い! 激烈な引力を持つ、東村アキコの半自伝コメディ

PR東村アキコ「まるさんかくしかく」

1985年、宮崎で暮らす小学4年生のアキコはどうでもいいことに毎日一生懸命だった。ビッグコミックオリジナル(小学館)で連載中の「まるさんかくしかく」は、東村の小学生時代を綴る半自伝コメディ。食べ物や文化などの“宮崎あるある”を交えながら、毎日が大事件のアキコによる日常が愉快に描かれていく。

/ 的場容子

はっきり言って知らんことばっかり、それが面白い!

ようやく3巻が出た! てっげやべー!!!

「まるさんかくしかく」ファンの筆者に宛てて「3巻出るからレビューよろしく」という依頼が来たのはいいが、規定の1500字という文字数に収まるか今から不安で仕方ない。それくらい、魅力ではちきれんばかりの作品なのだ!

本作は、東村アキコの記憶をベースに、東村のふるさとである宮崎の豆知識やあるあるを詰め込んだ「昭和宮崎子どもマンガ」。昭和50年生まれの東村が小学4年生の頃の宮崎を舞台に、小学校で毎日起こる“大事件”や、家族間の一大事を中心に繰り広げられるお話だ。もちろん陽気でお騒がせな父・健一氏も大活躍しているので、「ひまわりっ ~健一レジェンド~」以来の健一ファンにも垂涎の内容となっている。

「まるさんかくしかく」には「ひまわりっ ~健一レジェンド~」でもおなじみの父・健一が登場する。

「まるさんかくしかく」には「ひまわりっ ~健一レジェンド~」でもおなじみの父・健一が登場する。

ここで注意が必要だ。宮崎の「あるある」といっても、他県出身者にとっては「ないない」。当時の宮崎のローカルネタは、はっきり言って知らんことばっかりで大変面白い! 昭和60年当時の日本は、インターネットがないのでまだまだ文化や習慣が平坦化しておらず、地域ごとにものすごく特色があったことを思い知る。シリーズを通して、食べ物ではおびてん、へべす、鯨ようかん、破れまんじゅう、ねったくり、かからん団子、長饅頭、パッチン、魚寿司、ブラックモンブラン、これがし、ふくれ、いこもち……文化や風俗では、田の神さぁ、半ぴどん、せんぐまき、土キッとステーション、いもがらぼくと、岩切章太郎……といった他県出身者にはまったく馴染みのない風物が登場。宮崎から全国へ羽ばたいたチキン南蛮やブラックモンブランはもちろん、宮崎県民の“大好物”がこれでもかとお目見えする。

読む人の子供時代をも喚起させるような、激烈な引力

3巻でもそんな宮崎らしさをちりばめながら、権田原小学校、通称“ゴン小”では大事件が次から次へとぼっ発する! 特に筆者が大好きなのは、アッコの通うクラスに、大衆演劇「とんび座」一座の未来を担う“チビ龍”こと須田龍之介くんが転校してくる「新しい仲間事件!」。龍之介くんは、宮崎のおかずがすべて“甘い”ことに気づいてしまうなど、独特すぎる宮崎の文化に戸惑いながらも、アッコや斉藤くんたちと“おぐら”のチキン南蛮を食べたり、こっくりさんをしたり、コツコツトンネルで肝試しをしたり……。とんび座一座のスターとして宮崎の女性たちを虜にしながら、小学生らしいひとときを過ごすのだ。

「まるさんかくしかく」3巻より。

「まるさんかくしかく」3巻より。

それから、「地獄の合作漫画事件」。学校のクラブ活動に参加することになったアッコは、どんなことを教えてもらえるのかとワクワクしながらマンガクラブに入部。そこで見たのは、大人っぽくて美人なのに、ガンダム風マンガの背景をしもべの男子部員たちに描かせている小6のオタクお姉さんだった! 衝撃的な光景をよそに、アッコたちは4年生女子部員たちと5人で「合作マンガ」を制作させられる。責任感が強くマンガについては一歩リードしているアッコは、マンガ素人である顧問の無茶振りや、個性豊か(勝手きまま)な部員たちに翻弄されつつ、なんとか「探偵ぷっつん物語」15枚を仕上げるが──?

「かくかくしかじか」でも語られた、東村の原点(?)である伝説のマンガができるまでの顛末が、小4のアッコちゃんのリアルな視点でコミカルに語られている。

「まるさんかくしかく」3巻より。

「まるさんかくしかく」3巻より。

正直、どのエピソードも抱腹絶倒、大変味わい深いものである。それにしても、本作では「昨日起こった事件かな?」と思わせるくらい、微に入り細を穿つ、東村氏のみずみずしい記憶が冴え渡っている。今でこそ「小学生なんて親が用意したご飯食べて服着て学校通ってりゃいいんだから楽だったわ~」なんて思うこともあるが、「まるさんかくしかく」を読むと、実際には小学生なりの微妙な社交や親への忖度、先生への気遣いなど、いろいろと大変なことがあったことをありありと思い出すのだ。そして、それを吹き飛ばす圧倒的な楽しさが溢れていたことも。

東村の「かくかくしかじか」などの自伝ものや、さくらももこの「ちびまる子ちゃん」が大好きな人は必読である。年代を問わず、読む人の子供時代をも喚起させるような激烈な引力を持つ「まるさんかくしかく」。嘘偽りなく、これから初めて読む人を羨ましく思う作品なので、ぜひ読んでほしい!

東村アキコ「まるさんかくしかく」3巻
東村アキコ「まるさんかくしかく」3巻
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