「オーガクラフト」1巻

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「オーガクラフト」引きこもり女子が秋田でクラフトビール造り!大変だけど楽しい、ビール醸造の工程をリアルに描く

PR岩見修三郎「オーガクラフト」

両親の離婚をきっかけに、東京から母の地元・秋田に引っ越してきた無職の羽立姫子(はだちひめこ)。あてもなく近所を散策していたところ、古い蔵を改装したクラフトビールの醸造所・オーガクラフトを偶然見つける。そこで働く二田(ふただ)のどかの勧めで、クラフトビールを一口呑んでみた姫子は、その芳醇な味わいの虜になって……。ヤングガンガン(スクウェア・エニックス)で連載中。

/ 小林聖

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岩見修三郎「オーガクラフト」1巻
岩見修三郎「オーガクラフト」1巻
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引きこもり女子が秋田でクラフトビール造り!

高身長で何かとボリューミーな女子や褐色ギャルとともに、欲望ダダ漏れの引きこもり系女子が地方でクラフトビール造りに挑戦する。スローライフライクな雰囲気に、個性豊かな女の子たちを組み合わせた「オーガクラフト」は、サッと説明するなら日常系の流れを汲むお仕事女子マンガということになるだろう。

だが、読み終わって感じるのは、フィクションだけどただの絵空事ではない、クラフトビールカルチャーらしさだ。

本作の主人公・羽立姫子は、両親の離婚を機に、母親の故郷である秋田へ引っ越してきた21歳。引きこもり気味で新天地でもゲームばかりしていたが、母に促されて街を散策する中で、古民家カフェのような佇まいの店を見つける。怪しげな物が並ぶその建物は、実はクラフトビール“オーガクラフト”の醸造所。そこで出会った若く大きなブルワー・二田のどかに誘われ、姫子はビール造りの仕事に関わることになる。

「オーガクラフト」第1話より。苦手だったビールに初めて旨みを感じた姫子は、のどかからクラフトビール造りに誘われる。

「オーガクラフト」第1話より。苦手だったビールに初めて旨みを感じた姫子は、のどかからクラフトビール造りに誘われる。 [高画質で見る]

迫るのどかに「いい匂い~っ♡」と反応する姫子や、鼻水まで垂らしながら泣いたり笑ったりするのどか、しっかり者だけど娘同様、意外と欲望が漏れがちな姫子の母など、いろんな女子たちのかけあいが楽しい本作だが、そんな中にビールの造り方や法律といったクラフトビールのうんちくがちりばめられている。

クラフトビールカルチャーの持つワクワク感まで詰め込まれた作品

そして、何より「らしいな」と思うのがその空気感だ。例えば、オーガクラフトの醸造所。一見すると何のお店かわからないこの感じが、まずブルワリーあるあるだったりする。

「オーガクラフト」第1話より。散歩中に「OGRE CRAFT」という看板を見つけた姫子。

「オーガクラフト」第1話より。散歩中に「OGRE CRAFT」という看板を見つけた姫子。 [高画質で見る]

ビール・発泡酒は、1994年の酒税法改正による地ビールブームやその後のクラフトビールブームを受け、今では全国に900近い製造場が存在する(令和7年国税庁調査)。全国どこにでも地元のクラフトビールがあると言ってもいいくらいだ。

私の住む地域周辺にもいくつかのブルワリーがあり、取材にもたびたび行かせてもらった。もちろんクラフトビールのブルワリーもさまざまで、比較的規模の大きいところもあれば、日本酒などの酒蔵がビールも手がけるようになったようなパターンもあり、そういうところは施設も立派だ。だが、本作で描かれるような小規模の新興ブルワリーは、本当に町外れにぽつんと建っている。直売も行っていないようなところの場合、知らなければここでビールが造られているなんて思いもしないような雰囲気だったりする。

「オーガクラフト」第1話より。小道を進んでいくと、古民家カフェのような見た目の建物が現れるが、そこはクラフトビールの醸造所だった。

「オーガクラフト」第1話より。小道を進んでいくと、古民家カフェのような見た目の建物が現れるが、そこはクラフトビールの醸造所だった。 [高画質で見る]

そして、そういう規模のブルワリーは、どこかオーガクラフトの醸造所と似た空気を持っている。なんだかワクワクするような空気だ。

姫子は半ば勢い(と二田のどかのかわいさ)に押し切られる形でオーガクラフトで働くことを決める。誘ったのどかも勢い任せという感じだし、ビール造りも経営もまだまだ手探りだ。そんな彼女たちのブルワリーライフは、どことなくサークル的な楽しさに満ちている。

大変だけど楽しい、ビール醸造の試行錯誤をリアルに表現

もちろんビール造りは遊びではない。本作でも描かれるように、造るだけでなく経理や税務もあるし、出荷などの作業もあれば、酒税法との関係もある。言うまでもなく売れ行きや資金繰りなどシビアな現実にも向き合わなければならない。本作でも、のどかが不良在庫に悩まされた経験を思い出したり、税金の申告書提出を忘れて怒られたりする姿や、できあがった瓶ビールをチェックして運び出す作業など、地道で大変な部分も描かれている。

だが、それでも作品全体としては楽しさが全面に出ている。それは現実のクラフトビールのブルワリーでも感じる雰囲気だ。

例えば、のどかができあがったビールを姫子の母に飲んでもらうシーン。ここには、繊細なビールの味を再現するために、試行錯誤する楽しさが表現されている。ビール醸造のいいところは、比較的早く完成するところ。オーガクラフトの造る「OGヴァイツェン」なら仕込みから完成まで3週間ほどなので、のどかのように造っては「今回はこうだ」「こうかもしれない」という試行錯誤を短いサイクルで何度も行える。しかも、自分の造ったビールを飲みながらだ。私が見てきたクラフトビールのブルワーたちは、そういう試行錯誤や新しいことを始めるこの面白さに魅せられていると感じることが多い。

「オーガクラフト」第4話より。姫子の母にクラフトビールを呑んでもらったのどかだが、さらに改善するにはどうすればいいかと試行錯誤する。

「オーガクラフト」第4話より。姫子の母にクラフトビールを呑んでもらったのどかだが、さらに改善するにはどうすればいいかと試行錯誤する。 [高画質で見る]

そしてそのシーンの姫子の表情にも注目だ。そこに描かれているのは、自分の作品を誰かに見せる瞬間に近い、自慢したいような、不安なような気持ち。それらには、ある種の造り手の気持ちがよく出ていると感じる。クラフトビールの“クラフト”は作中で「手作り・少量生産」という意味だと説明されているが、「工芸」「職人技」といった意味もある。小規模ブルワリーは、創業した人が直接ビールを造っていることが多く、経営者であり、職人、もっと言えば作家のような雰囲気のことさえある。このシーンには、初めてビール醸造に携わりながらも、職人的な楽しさを見出した姫子の様子が印象的だ。

「オーガクラフト」第1話より。初めてのどかのクラフトビールを呑んだときの姫子は、広大なりんご畑を思い起こす。

「オーガクラフト」第1話より。初めてのどかのクラフトビールを呑んだときの姫子は、広大なりんご畑を思い起こす。 [高画質で見る]

まったく知らないビールの世界に姫子が思わず飛び込んだとき、景色に開放感を感じる場面がある。それは人生が動き出す予感というだけでなく、クラフトビールのブルワーたちがまとっている気分でもあるように思える。「オーガクラフト」には知識やうんちくだけでなく、クラフトビールカルチャーの持つ何か自由で楽しいことが始まりそうな空気が描き込まれているのだ。

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