このマンガ、もう読んだ?
「おじさんとフィキサチーフ」疎遠だった姉妹の同居生活、微妙な関係の2人をつなげる猫の“おじさん”
2026年4月24日 11:00 PRmikumo「おじさんとフィキサチーフ」
施設で育った衣織は、5歳のときに養子として福島家に迎えられる。しかし10年後、両親が他界。1人になった衣織は親戚の家に預けられるも、どうも居心地が悪い。そんな彼女を引き取ったのが、東京で働く姉の莉子だった。幼少期からどこか距離のあった2人は、久しぶりの再会を果たすも、うまく話すことができなくて……。同作はヤングガンガン(スクウェア・エニックス)で連載中。作者の
文
微妙な関係の衣織と莉子の間を取り持ち大活躍 愛嬌も抜群のおじさん
まずは「おじさんとフィキサチーフ」の公式のあらすじ、その最初を飾る一文をどうぞ。
「実子の姉と養子の妹、おじさんを介して私たちは繋がる──。」
気になるワードだらけで、グッと引き込まれる。おじさんって誰なのか。叔父や伯父ではないのか、まさかの他人? 何者……?
その正体は、目つき鋭い猫である。にゃんたまがチャームポイント。とにかく、このおじさんが第1話から大活躍する。
第1話の冒頭、複雑な思いを抱えた“養子の妹”衣織が故郷の福島から上京し、“実子の姉”莉子と駅で久しぶりに再会するのだが、2人の目線は交わらない。会話もチグハグだ。血のつながらない姉妹、加えてしばらく疎遠だったことの影響がありありとうかがえる。莉子との距離が縮まらない寂しさと諦めがないまぜになった衣織の表情は、なかなかに切ない。そんな2人が再会後、初めてよそいきじゃない会話をするきっかけになるのが、そう、おじさんである。
莉子の住む家に着いて早々、衣織の前におじさんがぬっと現れる。衣織の匂いをスンスン嗅ぎまくる。知らない人が自分の領域に入ってきたとき、猫は匂いを嗅いで安心しようとすることがあって、おじさんの行動もそれだ。ひとしきり衣織の匂いを嗅いで落ち着いたおじさんは、彼女にすり寄り、鼻チューで挨拶。こうした猫に関わるさまざまな描写がリアルなのも、「おじさんとフィキサチーフ」の見どころの1つだ。そして、その愛らしさに「かわいい~!!!」と衣織と莉子は口を揃える。2人の間にあった目に見えない壁が、ふっと取り払われるのだ。
第1話以後もおじさんはめちゃくちゃにかわいい。要所では衣織と莉子の橋渡し役にもなる。そんなおじさんの活躍もあり、変化していく衣織と莉子の関係性、それこそがこの作品の主題である。
“疎遠になっていた姉妹の同居”という難しい題材
「おじさんとフィキサチーフ」を一言で説明するなら、「疎遠だった、血がつながっていない姉妹が再会し、もう一度家族になろうと試みる物語」だと言える。これはけっこうな難題だ。実の家族でさえ一度疎遠になると関係性は薄れるのだから、なおさらである。ゆえに衣織と莉子が歩み寄る過程の描写には相応の説得力が求められる。それだけに難しい題材だが、同作ではそこを第1話ですっきりと描いてみせた。
おじさんがきっかけで少しだけ打ち解けた衣織と莉子。2人の間にある距離をもう一歩縮めたのが、亡き母の味を受け継いだ衣織の料理だった。衣織が作った煮物を食べた瞬間に莉子はハッとし、思わずといった様子で、長らくよそよそしい態度を取っていたことを衣織に謝る。10歳離れた、しかも血のつながりがない妹とどう接したらいいのかわからなかったと正直に告白する。
そしてこれをきっかけに、ついさっきまでぎこちない会話に終始していた2人が、長年抱えていた思いを次々と打ち明けていくのだ。一朝一夕では真似できない母の味がわだかまりを溶かす決め手になるという展開はシンプルで、だからこそ得心がいく。いつの間にか2人の会話に故郷の方言である福島弁が混ざり出し、ここに至って衣織が初めて「莉子さん」と呼ぶなど、話し方の変化で距離感の変わりようを表現する演出力も光る。
第3話までがプロローグ 4話から新キャラクターも続々登場
今回紹介したのは主に第1話の内容にあたる。衣織と莉子の訳ありな関係を丁寧に描きつつ、おじさんのかわいさを存分に表現した、物語の開幕にふさわしいエピソードだ。猫、方言と人気のある要素を巧みに織り交ぜているのも特徴だろう。戸籍上は姉妹だが実際は他人である2人が共同生活を送る中で、お互いをもう一度知っていく過程にはほのかに百合の要素も感じさせる。
このようにさまざまな意味で掴みのある第1話に続く第2話では、意外な形で2人の同居生活にピンチが訪れる。第3話ではその顛末が描かれると同時に、衣織の将来にも話が及ぶ。この第3話までが「おじさんとフィキサチーフ」のプロローグと言っていい。さらに第4話では衣織が高校に入学し、以降は新キャラクターも続々と登場。序盤ということもありテンポよく話が動いていくわけだが、肝心の衣織と莉子の関係性については引き続き丁寧に描写される。
また本稿では詳しく触れられなかったが、福島銘菓・エキソンパイを思わせるエンジェルパイなど、小道具も随所で活用される(販売元の株式会社三万石から許可をもらったうえで、1巻の表紙にはエキソンパイが描かれている)。絵に興味がある衣織のスケッチブックもたびたび登場し、その後の展開につながっていく。
そしてやっぱりおじさんだ。彼が生き生きと動くことで物語も動いていく。衣織と莉子が話をしている後ろや横で気ままに振る舞うおじさんが、さりげない視線誘導を担っているところも多々ある。そうした芸の細かさも印象的だ。どのコマにも何かしら作者の意図が感じられるため、読んでいて単純に楽しい。ぜひコマの隅々にまで注目してもらいたい。
無料で第1話を読む
