梶裕貴

梶裕貴、声優/プロデューサーとして抱く40代の展望

なぜ音声合成ソフトだったのか? 声優・梶裕貴がプロジェクト「そよぎフラクタル」に懸ける思い

今後の人生の柱は「声優」「家族」「そよぎフラクタル」

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「そよぎフラクタル」は自分の人生の柱の1つ

──“みんなで作る”ということの中に“新たな才能に光を当てる”という側面もあるわけですね。それで言うと、2月に行われた東京造形大学とコラボレーションした展覧会「梵そよぎと未来のクリエイター展」も、まさにこれから世に出る才能に光を当てる企画でした。

はい。これまでやってきた声優としての活動、そこで生まれたご縁というものがこれでもかとつながって……少し怖いくらいでした(笑)。「そよぎフラクタル」のロゴデザインを担当してくださったデザイナーの海士智也さんは、私の主演作「キズナイーバー」のタイトルロゴや、私がプロデュースしたアパレルブランド「en.365° エンサンビャクロクジュウゴド」のロゴも担当してくださっていた方なのですが、デザイナー業の傍ら、東京造形大学で教授も務められていて。打ち合わせを続ける中、プロジェクトのコンセプトを大変面白がってくださっていたんです。

──そこで造形大学とつながったんですね。

私が生み出した「梵そよぎ」を中心に、プロアマを問わずいろんな人がアクションを起こす。そしてそのリアクションを受けて、私が新しい発想でまた何かを作っていくという、クリエイティブが拡散と収縮を繰り返していくサイクルに着目してくださったんです。それは美大という教育の場にも活かせるんじゃないかと。その後、無事に開催が決まってからも、どのように参加者を募集し、どうやって展覧会を開くのかなど、海士さんと一緒に1つひとつ決めていきました。学生さんにとっても、すでに世にある何かを題材にするのではなく、プロジェクトが立ち上がっていく過程を感じながら、ゼロから一緒に制作を行えるという機会はなかなかないので、そこに価値があると考えてくださっていたようです。

「梵そよぎと未来のクリエイター展」の様子

「梵そよぎと未来のクリエイター展」の様子

──学生の作品に触れてみていかがでしたか?

参加したからといって単位がもらえる授業ではないので、あくまで有志という形だったのですが、にもかかわらずかなりの生徒さんがエントリーしてくださって驚きましたね。とてもうれしかったです。ネット上の二次創作だと、どうしてもイラストや音楽での表現が中心になってしまいがちですが、そういった枠にとどまらない作品……例えばアパレルやオブジェのような作品もたくさんあって、その可能性の幅が面白かったですね。1つのプロジェクト、1つのコンセプトに対して、ここまで自由に受け取り、形にできる才能があるんだなと感動しました。実際に私も現地に赴き、先生方と生徒さんと一緒に講評会をしたのがいい思い出です。全部で200点以上の参加作品がありましたが、その1つひとつにコメントを用意して。

──それはすごいです。

あ、別に頼まれたわけじゃなく勝手になんですけどね(笑)。全部書くのに5時間くらいかかりましたかね。でも一生懸命参加してくれた以上、私もちゃんと向き合って、直接リアクションを届けたかったので。コラボを終えた今、まさに「そよぎフラクタル」を象徴するような素敵な企画だったなと感じているので、ぜひいつかまたやりたいなと考えています。

「梵そよぎと未来のクリエイター展」で講評を行う梶裕貴

「梵そよぎと未来のクリエイター展」で講評を行う梶裕貴

──コラボカフェを開催したときも、営業中に自ら足を運んでいたそうですね。

感謝の気持ちが第一というのはもちろんのこと、コラボカフェの場合は、お客様がどんなところに興味や価値を感じてくださっているのかというリアルを肌で感じたくて、暇さえあれば立ち寄るようにしていました。何を楽しんでくださっているのか、どうすればプロジェクトの方向性が正しく伝わるのか、そういったことをお客様から直接感じ取ることに意味があるだろうと考えたんです。とても勉強になりましたね。それを踏まえたうえで、これからもっと多くの皆さんに、もっとストレートな方法で「そよぎフラクタル」を知っていただく機会を設ける必要があるなと感じたんです。

まさに。今後の自分の人生を考えたときに、絶対に揺るがない3本の柱を挙げるとすれば、1つはもちろん「声優」。もう1つは「家族」。そして、最後の1つが「そよぎフラクタル」なんです。それぐらい本プロジェクトは、自分にとって大きな存在。決して比喩表現でなく、人生を懸けて向き合っていくライフワークと断言できます。

──梶さんをそこまで「そよぎフラクタル」に向かわせるその根底にあるのはなんでしょうか? 後半は、そのあたりを聞かせてください。

梶裕貴

梶裕貴

(後編に続く)

梶裕貴(カジユウキ)

1985年9月3日生まれ、東京都出身。2004年に声優デビューし、アニメ、ゲーム、ナレーション、洋画吹き替え、舞台などで活躍。代表作にアニメ「進撃の巨人」のエレン・イェーガー役、「七つの大罪」のメリオダス役、「ワールドトリガー」の三雲修役、「僕のヒーローアカデミア」の轟焦凍役ほか多数。

藤津亮太

1968年生まれ、静岡県出身のアニメ評論家。2000年よりフリーランスとしてアニメ関係の取材や執筆活動を行う。著書に「増補改訂版 アニメ『評論家』宣言」「ぼくらがアニメを見る理由──2010年代アニメ時評」「アニメと戦争」「富野由悠季論」などがある。

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(c)梶裕貴/そよぎフラクタル

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梶裕貴 Yuki Kaji @KAJI__OFFICIAL

40代に突入する今の心境を、声優として、プロデューサーとして、お話させていただきました🗣️ https://t.co/IkvIEvc6vE https://t.co/cgukotGi2F

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