TVアニメ「遊☆戯☆王デュエルモンスターズ」ビジュアル

「遊☆戯☆王」シリーズのデュエル構成・彦久保雅博に聞く、熱き決闘の舞台裏

「お前カードゲーム好きだったよな」の一言から始まった20年超の仕事を振り返る

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「バトルシティ編」の闇遊戯vs海馬で自信がついた

──ここからはアニメのエピソードを振り返りながら、具体的なお仕事について聞いていきたいと思います。彦久保さんには事前に、デュエル構成の立場から会心のエピソードを3つ挙げていただきました。まず1つ目は「DM」の第131話「激突!神(オシリス)VS神(オベリスク)」です。

TVアニメ「遊☆戯☆王デュエルモンスターズ」第131話より。対戦者は主人公の闇遊戯と、そのライバルの海馬。闇遊戯は「オシリスの天空竜」、海馬は「オベリスクの巨神兵」という強力なモンスターカードをそれぞれ召喚しており、第131話ではこの2体をめぐる攻防戦が描かれる。

TVアニメ「遊☆戯☆王デュエルモンスターズ」第131話より。対戦者は主人公の闇遊戯と、そのライバルの海馬。闇遊戯は「オシリスの天空竜」、海馬は「オベリスクの巨神兵」という強力なモンスターカードをそれぞれ召喚しており、第131話ではこの2体をめぐる攻防戦が描かれる。

「オシリス」と「オベリスク」の戦いは原作でも少しだけ描かれていますが、このエピソードはアニメオリジナルの要素が多いんですね。脚本を担当した吉田(伸)さんに「神と神の激突、もっと見たいよね」と言われ(笑)、展開を膨らませることになったんです。でもその後の展開を原作と揃えなければならないうえに、「オシリス」は手札の枚数によって攻撃力が変わるので、それも調整しなければいけない(笑)。しかも2体のバトルは描きたいけど、両方ともすぐに破壊されないようにしなくてはならず。難しかったですけど、やってみたらなんとかできたので自信がつきました。

──このエピソードは闇遊戯の手札の増減や、魔法・罠カードの応酬が激しく、とてもスリリングでした。「DM」でも指折りの印象的なエピソードです。

ここが印象に残っているという方は多いと思うのですが、実はかなりアニメオリジナル要素が多いということは意外と言われていなくて。僕と吉田さんは内心密かにガッツポーズしています(笑)。

──2つ目に挙げてくださったエピソードは「GX」の第140話「空前絶後・超融合発動!」ですね。

ここを選んだ理由は、エピソードもそうですが「超融合」というカードへの思い入れが強いからですね。「GX」では「融合って魅力的なカードだよね」ということを表現したかったのですが、「超融合」はいわばその集大成と言えるカードで。

TVアニメ「遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX」第140話より。仲間を失ったことがきっかけになり、異世界で覇王と呼ばれる存在になってしまった主人公・十代に、彼の友人であるジムがデュエルを挑み、戦いを通じて十代を救おうとするエピソード。勝利に迫っていくジムだが、強力な魔法カード「超融合」を覇王十代が発動したことがきっかけになり敗れ去る。第140話の脚本は彦久保自身が担当した。

TVアニメ「遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX」第140話より。仲間を失ったことがきっかけになり、異世界で覇王と呼ばれる存在になってしまった主人公・十代に、彼の友人であるジムがデュエルを挑み、戦いを通じて十代を救おうとするエピソード。勝利に迫っていくジムだが、強力な魔法カード「超融合」を覇王十代が発動したことがきっかけになり敗れ去る。第140話の脚本は彦久保自身が担当した。

──ほかにも「GX」ではそれこそジムが使う「化石融合-フォッシル・フュージョン」や、亮が使う「パワー・ボンド」など印象に残る融合カードが数多く登場しますが、そのあたりも融合召喚の幅を広げるために考案したということですね。

そうですね。

──彦久保さんの脚本回でもありますが、ジムのデッキテーマでもある「化石」に絡めて、化石を発掘することと十代の心の奥に迫っていくことが重ね合わされているのが印象的でした。

OCGより、「超融合」。

OCGより、「超融合」。

僕はカードの名前やテキストとキャラクターの思いが重なるような展開が好きなんです。だから自分で脚本を書くときは、そういう展開にするために最初に作っていたデュエルを脚本に合わせて変えちゃったりしますね。またほかの脚本家さんと仕事をするときは、例えばデュエルが一方的な展開になると負けている側に強気なセリフを言わせづらかったりして、ドラマの起伏も作りづらくなるので、デュエルとドラマのバランスについては「こうしたらどうですか」と提案させていただくことがあります。

──確かに「遊☆戯☆王」シリーズのセリフ劇はデュエルの二転三転する展開に合わせて作られているものが多いですね。さて3つ目に選んでいただいたエピソードは、「遊☆戯☆王5D's」の第33話「復讐の劫火!かつての友 鬼柳京介」です。

TVアニメ「遊☆戯☆王5D's」第33話より、鬼柳京介。同エピソードでは鬼柳と主人公の遊星というかつての友人同士が命懸けのデュエルを繰り広げる。鬼柳は過去のとある出来事から遊星に復讐心を抱いている。

TVアニメ「遊☆戯☆王5D's」第33話より、鬼柳京介。同エピソードでは鬼柳と主人公の遊星というかつての友人同士が命懸けのデュエルを繰り広げる。鬼柳は過去のとある出来事から遊星に復讐心を抱いている。

このエピソードは“インフェルニティ”という新しいテーマを提案できたのがよかったんです。

──鬼柳が使うインフェルニティデッキは、手札が0枚のときに強力な効果を発揮する“ハンドレスコンボ”が特徴ですね。

実は僕は、正直カードゲームの魅力は、原作の「遊☆戯☆王」が一通り表現し尽くしていると思っているんです。例えばデッキ破壊とか、特殊勝利とか。こちらは原作がやったことをちょっとずつアレンジさせてもらっているだけで、あんまりそこにオリジナリティはないと思っていたんですよ。その点で、インフェルニティは唯一「俺が考えた」と言えるテーマなんです。そこが気に入っています。

──インフェルニティのギミックはどのように思いついたのでしょうか。

OCGより、「インフェルニティ・デーモン」。

OCGより、「インフェルニティ・デーモン」。

遊星やその仲間たちってゴリゴリに強いじゃないですか。そこにかつて遊星、ジャック、クロウをチームリーダーとして率いていたほどの奴が出てくるとなったら、なんかカッコつけなきゃいけないなっていう気持ちがあって。そこで必殺コンボを持っているほうがいいよねと、インフェルニティを考え出しました。今でも「カードゲームで手札0枚が強いなんて、普通は思い付かないだろう」って思いますね。

──確かに、普通カードゲームでは「手札=アドバンテージ」という思い込みがありますよね。その点では、遊星が「奇跡の軌跡(ミラクルルーカス)」という罠カードを使う第35話のシーンも印象的です。相手が1枚ドローするという効果は手札を与えてしまうので本来デメリットのはずだけど、それを逆手にとって鬼柳のハンドレスコンボを封じるという展開には驚きました。

ありがとうございます(笑)。視聴者をどう驚かせるかということは常に考えていますね。「そんなことするんだ!」って展開はやっぱりエンタメになると思うので。

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一番デュエル構成が難しかったのは「VRAINS」、モンスター勢揃い展開は「最初から覚悟している」
(c)スタジオ・ダイス/集英社・テレビ東京・KONAMI

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あおいまなぶ@C103日曜東ワ59b @aoimanabu

「遊☆戯☆王」シリーズのデュエル構成・彦久保雅博に聞く、熱き決闘の舞台裏
インフェルニティもS・H・Ark Knightもこの人考案だったのか…
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