「バトルシティ編」の闇遊戯vs海馬で自信がついた
──ここからはアニメのエピソードを振り返りながら、具体的なお仕事について聞いていきたいと思います。彦久保さんには事前に、デュエル構成の立場から会心のエピソードを3つ挙げていただきました。まず1つ目は「DM」の第131話「激突!神(オシリス)VS神(オベリスク)」です。
「オシリス」と「オベリスク」の戦いは原作でも少しだけ描かれていますが、このエピソードはアニメオリジナルの要素が多いんですね。脚本を担当した吉田(伸)さんに「神と神の激突、もっと見たいよね」と言われ(笑)、展開を膨らませることになったんです。でもその後の展開を原作と揃えなければならないうえに、「オシリス」は手札の枚数によって攻撃力が変わるので、それも調整しなければいけない(笑)。しかも2体のバトルは描きたいけど、両方ともすぐに破壊されないようにしなくてはならず。難しかったですけど、やってみたらなんとかできたので自信がつきました。
──このエピソードは闇遊戯の手札の増減や、魔法・罠カードの応酬が激しく、とてもスリリングでした。「DM」でも指折りの印象的なエピソードです。
ここが印象に残っているという方は多いと思うのですが、実はかなりアニメオリジナル要素が多いということは意外と言われていなくて。僕と吉田さんは内心密かにガッツポーズしています(笑)。
──2つ目に挙げてくださったエピソードは「GX」の第140話「空前絶後・超融合発動!」ですね。
ここを選んだ理由は、エピソードもそうですが「超融合」というカードへの思い入れが強いからですね。「GX」では「融合って魅力的なカードだよね」ということを表現したかったのですが、「超融合」はいわばその集大成と言えるカードで。
──ほかにも「GX」ではそれこそジムが使う「化石融合-フォッシル・フュージョン」や、亮が使う「パワー・ボンド」など印象に残る融合カードが数多く登場しますが、そのあたりも融合召喚の幅を広げるために考案したということですね。
そうですね。
──彦久保さんの脚本回でもありますが、ジムのデッキテーマでもある「化石」に絡めて、化石を発掘することと十代の心の奥に迫っていくことが重ね合わされているのが印象的でした。
僕はカードの名前やテキストとキャラクターの思いが重なるような展開が好きなんです。だから自分で脚本を書くときは、そういう展開にするために最初に作っていたデュエルを脚本に合わせて変えちゃったりしますね。またほかの脚本家さんと仕事をするときは、例えばデュエルが一方的な展開になると負けている側に強気なセリフを言わせづらかったりして、ドラマの起伏も作りづらくなるので、デュエルとドラマのバランスについては「こうしたらどうですか」と提案させていただくことがあります。
──確かに「遊☆戯☆王」シリーズのセリフ劇はデュエルの二転三転する展開に合わせて作られているものが多いですね。さて3つ目に選んでいただいたエピソードは、「
このエピソードは“インフェルニティ”という新しいテーマを提案できたのがよかったんです。
──鬼柳が使うインフェルニティデッキは、手札が0枚のときに強力な効果を発揮する“ハンドレスコンボ”が特徴ですね。
実は僕は、正直カードゲームの魅力は、原作の「遊☆戯☆王」が一通り表現し尽くしていると思っているんです。例えばデッキ破壊とか、特殊勝利とか。こちらは原作がやったことをちょっとずつアレンジさせてもらっているだけで、あんまりそこにオリジナリティはないと思っていたんですよ。その点で、インフェルニティは唯一「俺が考えた」と言えるテーマなんです。そこが気に入っています。
──インフェルニティのギミックはどのように思いついたのでしょうか。
遊星やその仲間たちってゴリゴリに強いじゃないですか。そこにかつて遊星、ジャック、クロウをチームリーダーとして率いていたほどの奴が出てくるとなったら、なんかカッコつけなきゃいけないなっていう気持ちがあって。そこで必殺コンボを持っているほうがいいよねと、インフェルニティを考え出しました。今でも「カードゲームで手札0枚が強いなんて、普通は思い付かないだろう」って思いますね。
──確かに、普通カードゲームでは「手札=アドバンテージ」という思い込みがありますよね。その点では、遊星が「奇跡の軌跡(ミラクルルーカス)」という罠カードを使う第35話のシーンも印象的です。相手が1枚ドローするという効果は手札を与えてしまうので本来デメリットのはずだけど、それを逆手にとって鬼柳のハンドレスコンボを封じるという展開には驚きました。
ありがとうございます(笑)。視聴者をどう驚かせるかということは常に考えていますね。「そんなことするんだ!」って展開はやっぱりエンタメになると思うので。
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