TVアニメ「遊☆戯☆王デュエルモンスターズ」ビジュアル

「遊☆戯☆王」シリーズのデュエル構成・彦久保雅博に聞く、熱き決闘の舞台裏

「お前カードゲーム好きだったよな」の一言から始まった20年超の仕事を振り返る

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一番デュエル構成が難しかったのは「VRAINS」、モンスター勢揃い展開は「最初から覚悟している」

──「5D's」の後も「ZEXAL」ではエクシーズ召喚、「遊☆戯☆王ARC-V」(以下「ARC-V」)ではペンデュラム召喚、「遊☆戯☆王VRAINS」(以下「VRAINS」)ではリンク召喚と、新しい召喚方法がどんどん作られていき、デュエルも複雑化していきますよね。ついていくのも大変だったのではないでしょうか。

そうですね。「ARC-V」のペンデュラム召喚やペンデュラムモンスターの設定も大変でしたが、特に難しかったのは「VRAINS」です。OCGもこの頃にはデュエルの展開が高速化していて、できることも多くなっていましたから。「ここでこれをやらない理由がないよね」となってしまう。

──やれることは増えたけど、そのぶん最適解が強すぎて、アニメのデュエルを作る立場からすれば選択肢がなくなってきてしまったというか。

そうなんです。例えばSoulburnerの転生炎獣デッキはよく回るので「これを使うと絶対にこのルートを通って強いモンスターが出てきちゃうよね。そうすると勝っちゃうな」みたいなことがあって(笑)。勝たない展開を作るのが難しいんですよ。シリーズ構成の吉田(伸)さんに「エクストラリンクやりたいよね」と言われて作ったデュエルなんかも、エクストラリンク自体はなんとかなるけど、「なんでわざわざそんな面倒なことをするの」というドラマ上の必然性を持たせるのが大変だった。それに必殺級の強力モンスターが何体も並ぶので「これすぐ勝っちゃうよ、どうするんだよ」と(笑)。

TVアニメ「遊☆戯☆王VRAINS」第87話より、エクストラリンクの一例。

TVアニメ「遊☆戯☆王VRAINS」第87話より、エクストラリンクの一例。

──考えるのは大変だろうなと思いつつ、視聴者からするとエクストラリンクは大変見応えがありました。ほかには「ZEXALII」第141話の遊馬VSナッシュで、ナッシュとその仲間たちのエースモンスターであるオーバーハンドレッド・カオス・ナンバーズの7体が揃うくだりがありますよね。ああいう召喚の条件が厳しいモンスターを何体も並べなければならない勢揃い展開も難しいと思うのですが、どうですか?

ああ、でもああいうのは最初から覚悟してるんですよ、「どうせやるっていわれるんだろうな」って(笑)。ある程度は前もって準備しています。でも「絶対こんなことできないだろうな」って視聴者が思っているものほどやってみせたい気持ちはあって、大変ですけどやり遂げたときの喜びは大きいですね。

──彦久保さんは3つの劇場版にも携わっていらっしゃいますよね。これらの仕事もTVシリーズとは作り方がだいぶ違って苦労されたのではないかと思うのですが、劇場版ならではの工夫はありましたか?

劇場版ではなるべくデュエルが複雑にならないように気を付けていました。「遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS」のデュエルは複雑になっちゃったかなという気はするのですが、その分、何が起こっているのかが視覚的にわかるような演出にしようと桑原(智)監督と話していましたね。モンスターがパワーアップしていることなどは映像を見ればわかるようにしようと。これはTVアニメとは違う作り方でしたね。

アニメのシーンを現実で再現できるのが「遊☆戯☆王」シリーズの醍醐味

──2020年から、彦久保さんはOCGとルールが異なる「遊戯王ラッシュデュエル」(以下、ラッシュデュエル)を扱った「遊☆戯☆王SEVENS」でデュエル構成を担当されています(※取材は「SEVENS」放送中の3月下旬に行われた)。この作品では制作陣も一新されていますが、今までと大きく仕事のやり方が変わった点はありますか。

TVアニメ「遊☆戯☆王SEVENS」キービジュアル

TVアニメ「遊☆戯☆王SEVENS」キービジュアル

大きいのは、カードについて最初からKONAMIさんと擦り合わせるようになったところですね。「GX」の頃からアニメでのカードの登場と、発売のタイミングを合わせたいという野望があったんですが、理想に近い形でそれができるようになってきています。

──「遊戯王ラッシュデュエル」は通常召喚(※)の回数制限がない、手札が5枚になるようにドローできるなどスピーディーなルールが売りかと思うのですが、OCGとはいわゆる“インフレ”の仕方が違うのでしょうか。

※モンスターや魔法カードなどの効果を使わずに、手札からモンスターをフィールドに召喚またはセットすることを通常召喚という。OCGでは基本的に、通常召喚を1ターンに1回しか行うことができない。

「遊戯王ラッシュデュエル」より、「セブンスロード・マジシャン」。カードデザインもOCGと大きく異なる。

「遊戯王ラッシュデュエル」より、「セブンスロード・マジシャン」。カードデザインもOCGと大きく異なる。

そうですね、また方向性が違うと思います。今のところはいい塩梅のインフレで調整できていると感じますね。一発逆転できるようになっているし、自分で遊んでいても、デュエル構成を考えていても楽しいです。カードについて言えば「SEVENS」は作風がコミカルなので、「ZEXAL」のときに多かったようなおふざけカードをいっぱい作れていますね。

──4月から放送の「遊☆戯☆王ゴーラッシュ!!」も楽しみにしております。最後に「遊☆戯☆王」シリーズの魅力だと思う点について、お聞かせください。

やっぱり、実際のカードを使ってアニメのシーンが再現できるところですかね。ロボットアニメなんかだとなかなかロボットに乗って……というわけにはいかないですから。カードさえあればあとは想像力で補って、ごっこ遊びができることが「遊☆戯☆王」シリーズ最大の魅力なんじゃないかと思っています。

彦久保雅博(ヒコクボマサヒロ)

ゲームクリエイター、脚本家。専門学校を卒業後、ゲーム会社に就職したのちフリーに。2000年に放送スタートしたアニメ「遊☆戯☆王」シリーズのデュエル構成を担当しているほか、「NARUTO-ナルト- 疾風伝」の忍術創案も務めた。

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(c)スタジオ・ダイス/集英社・テレビ東京・KONAMI

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「遊☆戯☆王」シリーズのデュエル構成・彦久保雅博に聞く、熱き決闘の舞台裏
インフェルニティもS・H・Ark Knightもこの人考案だったのか…
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