中村隼人
幡大介による長編時代小説を原作とした歌舞伎が誕生。江戸一の豪商の孫・卯之吉がひょんなことから同心となり、剣も振るえぬ新人見習いが難事件を他力本願で“はんなり”とスッキリ解決! この現代的なヒーローを演じるのはもちろん、テレビドラマ版でも好評を博す中村隼人だ。松本幸四郎が演出、尾上菊之丞が演出と振付を担うのも話題。「11回は早替わり予定」(幸四郎)、「ドラマのダンスも取り入れた総踊りを」(菊之丞)と心躍るプランも発表され、スピードとテンポで見せる超・娯楽時代劇が爆誕しそうだ。
中村隼人
──大人気シリーズが舞台になることへの思い、ドラマでもご共演されている幸四郎さんの演出で楽しみなことを教えてください。
このドラマは自分にとって役者人生を変えてくれた作品ですから、並々ならぬ思いがあります。しっかりと世界観を守りつつ、歌舞伎の強みを存分に生かし、原作の魅力を落とし込んでいきたいです。幸四郎のお兄さんは常にアイデアが豊富で、自分では絶対に思いつかないような演出やお芝居を考えてくださるので、お兄さんの頭の中を自分がどう表現できるのか楽しみです。
──今回は卯之吉に加え、将軍の弟・幸千代も演じます。それぞれの魅力としどころを教えてください。
卯之吉の魅力はとにかくはんなりとして、明るいところ。周囲の人たちを「卯之吉の役に立ちたい」と思わせる人間力、そして包容力と優しさが魅力です(笑)。対して幸千代は腕っぷしが強い剣豪ですが、どこか陰があります。対照的な2人ですが、卯之吉も幸千代も心の奥に寂しさを持っていて、そこが惹かれ合うところなのかもしれませんね。“瓜二つ”という設定なので化粧も変えずに2役を早替わりする予定なので(笑)、役の性根で、違う人物に見せられるようにしたいです。
──また今回は同年代の皆様とのご共演となります。メッセージをいただけますでしょうか。
いろいろな劇場で“同じ釜の飯を食べてきた”じゃないですけど、「新春浅草歌舞伎」をはじめ、ツラいことも楽しいこともすべて共有してきた人たちです。そんな同年代のみんなに、魅力的なキャラクターを演じていただけることは本当にうれしいですし、逆に支えてもらわなきゃとも思っているので……。これからも、こんな未熟な隼人をよろしくお願いします!
──2024年はどんな1年でしたか? 2025年はどんな1年にされたいですか?
とにかく2024年はもう、駆け抜けました。スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」があり、3月南座では「女殺油地獄」を勤め、11月にはひと月巡業公演もし……本当に息つく間もなく勤めさせていただきました。2025年はもっと地に足をつけて1つひとつのお役にテーマを持って取り組みたいですね。そして今年は行けなかったので、2025年こそは大好きなキャンプとダイビングに行きたいです!
プロフィール
中村隼人(ナカムラハヤト)
1993年、東京都生まれ。萬屋。中村錦之助の長男。2002年に初代中村隼人を名乗り初舞台。
中村隼人オフィシャルファンクラブ-隼会- (中村隼人オフィシャルファンクラブ-隼会-)
このコーナーでは、歌舞伎座を訪れたアーティストやクリエイターが、その観劇体験をレポート。今回は、フォトグラファーで着物インフルエンサーのさんかくが、「十二月大歌舞伎」第一部「あらしのよるに」を観劇。「あらしのよるに」の世界観と着物をリンクさせ、全身で作品を味わう。
「あらしのよるに」は2016年12月に観劇しており大好きになった演目だったので、今回の再演はとても嬉しいです。その頃はまだまだ着物歴も浅かったので「白衿に白足袋と飛び柄の小紋」というような無難なスタイルで行きましたが、そこから月日が経ち、歌舞伎観劇にも冒険してもいいかしら……と思うようになってきました。洋服が普段着でいいなら着物も普段着でいいですよね。
襲名披露や初お目見得の時はお祝いの気持ちで訪問着や付け下げで行きたいところですが、普段の観劇は小紋や紬の着物、名古屋帯や半幅帯でカジュアルに装っていいと考えています。もちろん和洋折衷コーデでも!
今回はかぶとめいが出会った嵐の夜をイメージし、着物は渦巻のマジョリカお召にしました。キラキラした渦巻が暴風や雷を思わせます。リサイクル着物で裄が短いとかおはしょりが無いというのはご愛嬌。半衿は雪山のシーンをイメージして銀糸の刺繍半衿で。
帯は宗十郎頭巾の武士や蘇利古の舞人らしき人形が描かれた玩具柄の名古屋帯。隈取の歌舞伎役者らしい絵もあるのでいつか歌舞伎座に締めていこうと考えていました。
帯留にはがぶに見立てた狼のブローチ。本当は帯留を二つにしたかったところですが、ぶつかって音が鳴りそうなものは観劇のNGマナー! ネイルにめいを忍ばせていきました。
こういった演目に合わせてコーディネートを考えるのは着物の一番楽しいところ。着物のことを考えているうちに自然と物語や登場人物への理解も深まっていきます。
そして実際に美しい舞台を観てしまうと「やっぱりフェイクファーを入れたかった」、「満月の帯にしてもいいな」、「四葉のクローバーの帯留があればいいのに」……などとまた着物へ想いを馳せてしまうのでした。
プロフィール
さんかく
秋田県生まれ東京在住。フォトグラファー、着物インフルエンサー。洋服と着物をかけ合わせたり、丈の短い着物もクールに着こなしたりと、自由な発想で着物をカッコよく楽しむ。Instagram、YouTube、TikTokなどSNSの総フォロワー数40万人。着物インフルエンサーとして、全国でのトークイベントに出演するほか、雑誌への掲載、アパレルブランドとのコラボレーションなど。Voicyのパーソナリティとして「さんかくキモノのハナシ」で着物の話を毎日放送。書籍「さんかくキモノのススメ」(主婦と生活社)が発売中。2月1日に三重・近鉄百貨店四日市、3月15日には、京都・京都市勧業館みやこめっせで行われる伝統産業の日2024・匠エキスポにてトークショーを行う。
さんかく(Sankak) (@sankak_kimono) | Instagram