尾上菊五郎が新春公演の構想を明かす、襲名控えた尾上菊之助は巳年にかけ「大きく脱皮できるように」

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令和7年初春歌舞伎公演」が、1月5日から27日まで東京・新国立劇場 中劇場で上演される。これに向けた取材会が、昨日12月9日に東京都内で行われた。

左から中村時蔵、尾上菊之助、尾上菊五郎、坂東彦三郎。

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左から中村時蔵、尾上菊之助、尾上菊五郎、坂東彦三郎。

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「初春歌舞伎公演」は、尾上菊五郎を中心に、東京・国立劇場で行われていた新春恒例公演。昨年、国立劇場が建て替えのために閉場したあとは、新国立劇場 中劇場に場所を移し、実施されている。今回上演されるのは、通し狂言「彦山権現誓助剣」。同作の「毛谷村六助住家の場」、通称「毛谷村」は単独、またはその前の場面「豊前国彦山杉坂墓所の場」、通称「杉坂墓所」と共に上演されるが、通しで上演されるのは、東京だと約22年ぶりのこと。大詰となる敵討ちまで上演されるのは約58年ぶりとなる。取材会には、真柴大領久吉役の菊五郎、物語の主人公・毛谷村六助役の尾上菊之助、悪役・京極内匠役の坂東彦三郎、そしてヒロイン・一味斎姉娘お園役の中村時蔵が参加した。なお、いずれも初役で各役を勤める。

尾上菊五郎

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菊五郎は、かつてお園役を3回演じ、また近年は六助役を2度ほど勤めていたことを話しつつ、作品の魅力を「誠におめでたく、楽しく明るいお芝居でございます」と語る。また今回初めて勤める真柴久吉について「六助とお園に敵討ちをさせて、その上で六郎を侍大将として召し抱えるという役どころ。ただ、(久吉が登場する)大詰は国立劇場と相談しながら作っている最中で、まだ(久吉を)どうするかというのは決まっていないんです(笑)。面白くしようとは思っていますので、お楽しみに」とニヤリと笑う。記者から「話せる範囲で、その構想を教えてほしい」と乞われると、「例えば、孫たちが大勢出てくるシーンでは、それぞれに『加藤清正だ』『福島正則だ』って、それぞれカッコつけて名乗りをさせてみようかなと」と、“真柴方の若武者”役にクレジットされている尾上丑之助、尾上眞秀らの登場シーンに言及した。

尾上菊之助

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菊之助は、今年の「初春歌舞伎公演」で、見取り狂言として「梶原平三誉石切 鶴ヶ岡八幡社頭の場」「芦屋道満大内鑑 -葛の葉-」「勢獅子門出初台」の3作品が上演されたことに触れたあと「来年は、“国立劇場ならでは”の通し狂言として、『彦山権現誓助剣』を上演します。『杉坂墓所』や『毛谷村』は、見取り狂言としてもよく出ますが、通しで観ることにより、吉岡一味斎の一家の物語や、京極内匠と明智光秀の関係と因果がわかりやすく、お客様には、相関図を頭の中に浮かべながらご覧いただけるのでは」と語る。六助については「心優しく力持ちで、剣術にも長けている。いわゆる、“線が太い”、“胴が太い”と呼ばれる役どころですね。そこをどのように自分で表現できるかが、これからの課題です」と言葉に力を込め、流行語大賞に選ばれた「不適切にもほどがある!」にかけて、「とにかく彼はいい人。“いい人すぎるにもほどがある”、といった感じで演じたいですね」と茶目っ気たっぷりに述べた。

坂東彦三郎

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彦三郎は「『毛谷村』の六助は、父(坂東楽善)が彦三郎襲名のときに勤めたお役。またタイトルに“彦”が入っておりまして、皆さんが“彦山(ひこさん)”とおっしゃるたびに、ちょっと緊張しておりましたが(笑)、演目に縁を感じています」と笑顔を見せ、「父は、『杉坂墓所』『毛谷村』で京極を勤めておりましたので、父から教わりつつ、皆さんと相談しながら、役を膨らませていきたい。彼は、家族がいたり子分がいたり、師匠がいるわけでもない、たった1人の悪人。最後に殺されることで、お客様にハッピーエンドを感じていただけるような悪を作っていければ(笑)」と、“悪”を背負う覚悟を語った。

中村時蔵

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時蔵は、自身の父である中村萬壽が度々勤めていたお園を「念願の役」と表現し、その理由を「私は、父が勤める女武道のお役が大好き。また、女方で、これだけたくさん立ち回りがあって、(六郎が自身の許嫁だと気づき)愛嬌を振りまくシーンもある役は、なかなかないと思います。お芝居自体もとても朗らかで、特に私の息子(中村梅枝)の初お目見得が『毛谷村』ということもあり、演目自体にも思い入れがあります」とコメントした。「今回のように通し狂言になりますと、ほぼ出ずっぱりになりますので、さまざまなお園の姿をお見せしつつ、『毛谷村』でのお園につながるように演じていきたいです。また、彦三郎さんとの『瓢箪棚』での立ち回りで、私は武器として鎖鎌を使用するのですが、一昨日、小道具さんがその鎖鎌を(現在出演中の)新橋演舞場の楽屋に届けてくれました。『これを練習しておけ』ということだと思いますので、楽屋でぶんぶん振り回して練習しております(笑)」と話した。

なお、菊之助にとって、今回が八代目菊五郎襲名前、最後の新春歌舞伎公演となる。このことに「国立劇場でのお正月公演には、本当にいろんな思い出がございます。父が台本を一から洗い直し、現代のお客様にも楽しんでもらえるように復活狂言を手がけている姿を、間近で見て勉強させてもらいましたし、自分の引き出しの足りなさを自覚したり、古典での修業の大切さを学ばせていただきました。女方も、もちろん大事に勤めていきたいと思っていますが、今年は『石切梶原』を勤め、そして来年は六助に挑むということで、父や、播磨屋の父(中村吉右衛門)が大事にしてきた立役も、これから勉強していきたいと思っています。私も倅(丑之助)も、来年が年男でございます。(干支の巳年にかけて)大きく脱皮できるように、菊之助最後のお正月の舞台を華やかに、力いっぱい勤めたいです」と瞳を輝かせた。チケットの一般販売は、12月13日10:00にスタート。

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令和7年初春歌舞伎公演

2025年1月5日(日)〜27日(月)
東京都 新国立劇場 中劇場

スタッフ

通し狂言「彦山権現誓助剣」

作:梅野下風 / 近松保蔵
補綴:国立劇場文芸研究会

出演

通し狂言「彦山権現誓助剣」

毛谷村六助:尾上菊之助
京極内匠:坂東彦三郎
一味斎姉娘お園:中村時蔵
若党友平 / 立浪家家臣 十時伝五:中村萬太郎
立浪家家臣 向山三平:市村竹松
立浪家家臣 捨川団八:市村光
真柴方の若武者:坂東亀三郎 / 尾上丑之助 / 尾上眞秀 / 中村梅枝 / 中村種太郎
一味斎孫弥三松:中村秀乃介
一味斎妹娘お菊 / 立浪家家臣 井村六郎:上村吉太朗
若党佐五平:市村橘太郎
一味斎妻お幸:上村吉弥
早川一学 / 杣斧右衛門:片岡亀蔵
衣川弥三左衛門:河原崎権十郎
老女福栄:市村萬次郎
吉岡一味斎 / 明智光秀の亡霊:中村又五郎
立浪主膳正:坂東楽善
真柴大領久吉:尾上菊五郎

※坂東亀三郎は、体調不良のため1月5日から7日まで休演。

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吉さま参る @yumilumilu

やはり、一番充実した記事。https://t.co/tu0A3UeZrO

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