新しいことへの挑戦=旅行みたいな気持ち
──局アナ時代を経て、2019年にフリーアナウンサーに転身されましたが、最終的にその選択の決め手になったことはありますか?
積み重ねなのでこれっていうものはないんですが、その1年前ぐらいに朝の番組担当からほかの時間帯の仕事に変わったんです。その期間に、書くお仕事やバラエティの仕事をいただいたり、雑誌の撮影に呼んでいただいたりと、今までは勤務時間的に無理だったお仕事がどんどん幅広くできるようになり、もっとなんでもやってみたい!という衝動が抑えきれなくなったのはあると思います。あと、私は好きなものについて話すのが好きですが、会社員としてはここまでしか言えない、というラインがちょっと息苦しかったのもあり、決心した感じですかね。
──そこから、俳優業やモデル業、最近ではYouTubeも開設したりと、いろんなジャンルで活躍されています。新しく何かを始めるときは、怖さもあれば、ワクワクしすぎて空回りしてしまうこともありますが、宇垣さん自身はどんな心持ちでやっていますか?
収集癖があるんですよね。つまり、「あれもやった」「これだってできた」っていう私の中の引き出しを増やしたいんです。増やしていくことで、どこでだって生きていけるって思えるじゃないですか。それは私の精神衛生上すごくいいことなので、ダメだったことも全然ありますが、“軽率に”トライするようにしています。初めてのことで空回りや失敗をすることはあっても、やり直しがきかないことってほとんどない。やりたいんだったら挑戦すればいいし、失敗したら失敗しただけの学びが絶対にあるから、それを次に生かせばいいと思います。
──「もちろん挑戦した分の学びがあることはわかっている……けどやっぱり怖い」というフレッシャーズに向けて、もう一声掛けるとしたらいかがですか?
よく就活の面接や仕事でのプレゼンなどを「コントだと思ってやる」という人がいるじゃないですか。それに近いんですが、私は修学旅行みたいな気持ちなんですよね(笑)。旅行=その場所に腰を据えるわけではないし、でも行ってみてよかったらそこに住んでもいい。ここで失敗したらもうあとがない!なんてことは基本ないから、もうちょっとラフに考えていいんじゃないかなと思います。
“幸せになれるトリガー”を自分で準備しておく
──お手紙の中で、特に過去の自分に伝えたい言葉を選んでもらいたいです。
後半かな。「先に進むために、あえてぬかるみに足を踏み出さなきゃならないこともある」。これでいいのかな?って思いながら進むこともあるんですけど、その一歩がないと次の一歩は踏み出せなかったり、新しい場所にたどり着けなかったりすることが必ずある。私は何かを選ばなきゃいけないときに、必ず大変なほう、選んだらかっこいいほうにすることにしています。その分たまに険しい山道や泥道に遭遇することもあるんですが、結果的に今の私として後悔したことは一度もない。あとは「我武者羅に進み続けて辿り着いたこの場所は存外、居心地がいいものです」というのも伝えたいですね。ここに来なきゃよかったって思うこと自体に意味がないし、どの道を選んだとしても基本的には超ハッピーだから大丈夫だよ!って思います。
先に進むために、あえてぬかるみに足を踏み出さねばならないこともあるのだと、険しい道と分かっていても進みたくなることが人生にはあるのだと、今は思っています。
人生は取捨選択の連続で、あったかもしれない未来を想像するときりがない。けれど、何度も選んで、捨てて、ここまでやってきた。私の足元にはIFの自分の骸が山積みです。打ち捨てた人生への責任は、選んだ人生と真摯に向き合うことでしか果たせない。だから前へ、前へ。
<宇垣美里の手紙抜粋(「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」supported by FRISK より)>
──未来の自分からそう言われると、すごく勇気付けられます。
そうするしかないですしね!
──では実際、失敗に直面した瞬間はどう乗り越えているんでしょうか。気持ちを切り替えるためのリフレッシュ方法や考え方があれば教えてください。
次の日の朝に持ち越さないようにしています。それ以上考えてもしょうがない。もちろん失敗したその日は「ああすればよかった」ってすっごい考えるし次に絶対生かす!ってメモも取るんですけど、それ以上は悩んでも仕方がない!と考えるようにしています。
──改善策などを書き込んだそのメモはどこかで見返しているんですか?
頻繁には見返さないんですけど、「3年日記」に書いているものだと「私、去年こんな呪詛の言葉を!?」みたいなことはあります(笑)。同じ状況になったときに改善できていて「根付いてるじゃん!」ということも、同じ失敗を繰り返していることもあるんですけど、とにかく寝たら終わり。あとは友達と会うとか、犬と遊ぶとか、強制的にぱっと気持ちが切り替わることをできるだけ定期的に生活に取り入れられたらいいなと思います。
──意識的にコントロールされているんですね。
そうですね。もちろん友達には会いたいから会うんですけど、“幸せになれるトリガー”みたいなものは、自分でちゃんと把握していくつも準備しておくべきだなと思っています。
──これから新生活を始める人の中には、新しい土地で友達もゼロからという方も多いと思います。
新しい友達を作るのってすごく大変ですよね。がんばればできるわけでもないし。それよりもっと簡単に摂取できるものがいいと思う。週末には必ず実家の犬の写真を送ってもらうよう親に頼むとか、先の映画や舞台のチケットを取っちゃうとか。スイーツを買って冷蔵庫に入れておいて、それで1日を乗り切るのもいい。気軽に取れるものをたくさん準備して毎日を積み重ねていけば、1年ぐらいはあっという間に経つと思います。
何かを成し遂げようと思う必要はない
──コロナ禍で学生時代を過ごした人やこれから社会人になる人たちにとって今は、アフターコロナのポジティブな雰囲気がある一方で、個人の気持ちとしては不安もいっぱいだと思います。宇垣さんはコロナ禍を経た今の空気感をどんなふうに捉えていますか?
コロナ前・コロナ後で基本的に社会が変容したと思っていて。例えばリモートでのミーティングは海外とかじゃない限りなかったと思うんですけど、今はそれが普通になっている。人が密集することへの恐怖はもう染み付いてしまっているし、変えられない。ただ、悪いことばかりではないとも思います。遠隔地の人と連絡を取ることが苦じゃないことに気付いたし、別に都心に住まなくてもいいよねという風潮も強まりました。あと私は旅がすごく好きなんですけど、あの頃急にハードルが高いものになってしまったからこそ、今はその1回1回をありがたいと感じられるようになっています。10年後なのか100年後なのかはわからないけれど、今後も絶対に(未曾有の事態は)ある。でもなんとか人間って乗り越えていくしかないんだろうなと思えました。
──今回の企画もそうですが、FRISKはリフレッシュメントを通して誰かの背中を押すことをずっと掲げているブランドです。FRISKの商品自体への印象や、この企画で過去の自分に手紙を書いてみた感想をお聞きしたいです。
私は声を出す前に口を1回リセットしたいんですけど、そういうときにパッとFRISKを食べて「はい、今から本番!」と自分のスイッチの入れ替えを助けてもらっています。また、あの頃の自分に手紙を届けることはできないけど、書いたことでこれまでの数年間を振り返ることができて豊かな時間だったなと思うし、ほかの方の手紙を見るのもすごく楽しみです。私が就職するときなどにすごく勇気をもらったのは、エッセイ。転職する人や、上京する人のエッセイを読むのがすごく好きでした。私だけじゃない、この人もそうだったんだって思うとすごくほっとする。そういう気持ちになる人が1人でもいたら、私も手紙を書いたかいがあったんじゃないかなと思います。
──最後に、10年後どんな自分になっていたいですか?
具体的にはないんですけど、楽しかったらいいなと思います。私は今30代ですが、20代のときの自分に「マジで30代最高!」って言ってあげたいんですよ。たぶん40歳になっても超楽しいと思うし、そう言える大人の女性ってかっこよくないですか? 私は10年後、「今の私のこと大好きだし、人生すっごく楽しい」ってケラケラ笑いながら言うようなファンキーなおばさんになりたいなって思います(笑)。
獣道を切り拓いた先に見える景色、振り返ればそこにある軌跡こそが私の生きた証。自分を嫌いになるようなことだけはしたくないと、我武者羅に進み続けて辿り着いたこの場所は存外、居心地がいいものです。だからどうか、負けないで。
<宇垣美里の手紙抜粋(「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」supported by FRISK より)>
──宇垣さんのように現実的かつ前向きに考えられるのはとっても理想です。一方でこの質問に気後れしてしまう人もいると思います。「10年後、何者かになれているかな?」という不安を抱えた新社会人もいると思うんですが、彼らに向けての言葉もあれば教えてください。
何者か……あなたはもうすでに何者かです! ほかの誰にもなれないし、あなたは結局あなたなので、そんなに何かを成し遂げようと思う必要はないと私は思っています。1つひとつ積み重ねていくことで、あとから振り返ったときに、自分の後ろに道ができているはず。それは自分がここまで過ごしてきた時間の証だと思うし、これからも自分を支えてくれる。それをまた未来の自分にプレゼントしようという気持ちで生きると楽かも。横を見ると大変だし、比べたらきりがないので、闘うのは常に過去の自分と未来の自分……ですかね!
FRISK「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」
新たな一歩やチャレンジを前向きに踏み出すことを応援するFRISK「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」では、11組のアーティストやタレント、クリエイターが「あの頃」の自分に宛てた手紙を執筆。手紙の内容について、CINRA、J-WAVE、me and you、ナタリー、NiEW、QJWebでインタビューやトークをお届け。直筆の手紙全文は4月10日(木)から東京・下北沢BONUS TRACKで開催されるFRISK「#あの頃のジブンに届けたいコトバ展」で展示される。
プロフィール
宇垣美里(ウガキミサト)
1991年4月16日生まれ、兵庫県出身。2014年4月にTBSに入社。アナウンサーとして数々の番組に出演し、2019年3月に同社を退社した。現在はフリーアナウンサー・俳優としてドラマやラジオ、雑誌、舞台出演のほか執筆業も行うなど幅広く活躍している。ドラマ出演作に「明日、私は誰かのカノジョ」「シンデレラ・コンプレックス」「1122 いいふうふ」「財閥復讐~兄嫁になった元嫁へ~」など。TBSラジオ「アフター6ジャンクション2」水曜パートナー、ニッポン放送Podcast番組「宇垣美里のスタートアップニッポン powered byオールナイトニッポン」パーソナリティを担当している。
宇垣美里マネージャー (@ugakimisato.mg) | Instagram