日本で“蒸発”と呼ばれる現象に迫ったドキュメンタリー映画「
統計では毎年およそ8万人が失踪している日本。その多くは帰宅するが、数千人は完全に姿を消してしまうという。失踪する理由は家庭環境や人間関係のトラブル、借金苦、ヤクザからの脅迫などさまざま。彼らは蒸発者と呼ばれ、中にはすべてのしがらみを捨て、どこか別の場所で、新しい生活を始める人もいる。本作では失踪を手助けする夜逃げ屋の仕事、失踪者と残された人々の心の葛藤や和解の道のりを捉え、日本の“蒸発”と呼ばれる現象に迫った。
監督を務めたのはドイツ人映画作家のアンドレアス・ハートマンと、ベルリンと東京を拠点に活動する映像作家の森あらた。本作は世界40以上の国際映画祭で上映され、第39回ミュンヘン国際ドキュメンタリー映画祭では最優秀作品賞を受賞した。ドイツ国内では50館以上のアートハウスで上映され話題を呼んだ。
ハートマンは「日本特有の社会現象を記録するにとどまらず、人間の心理に迫る普遍的な試みでもあります。私たちはあえてセンセーショナルな表現を避け、人々の声に静かに耳を傾ける姿勢で制作に臨みました」とコメント。森は「複雑で周縁的でありながら同時にどこにでも存在する、目に見えないブラックホールのような世界を描いています。そこで私たちが気づいたのは、蒸発者が新たな地で探しているのは、自由や安全だけでなく『自分自身』だということです」と語っている。
配給はアギィが担当。予告編はYouTubeで公開中だ。なお本作は出演者たちの身元を保護する目的で、AI技術を用いて一部の顔や音声が加工されている。
アンドレアス・ハートマン コメント
10年ほど前、日本滞在中に「蒸発」という現象、そして人生をやり直す手助けをする「夜逃げ屋」の存在を知りました。自らの意思で姿を消すという選択の裏にある、深い喪失感と可能性に強く惹かれました。
外国人である私の視点と、長年日本を離れて暮らしてきた共同監督・森あらた氏の視点が重なり合うことで、日本社会の中ではしばしば見えにくい「隠された世界」への扉が開かれました。本作は、日本特有の社会現象を記録するにとどまらず、人間の心理に迫る普遍的な試みでもあります。私たちはあえてセンセーショナルな表現を避け、人々の声に静かに耳を傾ける姿勢で制作に臨みました。
この作品が、社会的規範、家族や職業といった日本社会の構造について、判断や非難を加えることなく、注意深く、そして敬意をもって考えるきっかけとなることを願っています。
森あらた コメント
人生の半分を欧州で暮らしてきた私にとって、生まれ育った日本は半ば遠い国でした。しかし本作を通じ、この国の新たな側面、そして日本人としての自分自身を再発見することができました。
「蒸発」は広く知られながらも、日本社会の暗黙のタブーです。制作を通して驚かされたのは、この言葉にまつわる個人的な物語を、一見普通の人々が誰もが一つは抱えているという事実でした。本作では、複雑で周縁的でありながら同時にどこにでも存在する、目に見えないブラックホールのような世界を描いています。そこで私たちが気づいたのは、蒸発者が新たな地で探しているのは、自由や安全だけでなく「自分自身」だということです。
世界各地で上映されてきた本作が、ついに日本で配給されることを光栄に思います。この記録が、皆さんの心に秘めた物語とどこかで重なることを願っています。
映画「蒸発」予告編
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ハングマンかと思った…これは見に行こう。 https://t.co/G0GeLN2Jrn