伊藤詩織「Black Box Diaries」の編集を回想、「性暴力被害者としての自分と闘った」

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映画「Black Box Diaries」の公開記念舞台挨拶が本日12月12日に東京のT・ジョイ PRINCE 品川で行われ、監督の伊藤詩織、プロデューサーのエリック・ニアリとハナ・アクヴィリンが登壇した。

映画「Black Box Diaries」公開記念舞台挨拶に登壇した伊藤詩織

映画「Black Box Diaries」公開記念舞台挨拶に登壇した伊藤詩織

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T・ジョイ PRINCE 品川で上映中の本作は性暴力の被害を受けた伊藤が、自身に起きた事実を記録しながら、社会の壁を少しずつ打ち壊すさまをたどったドキュメンタリー。2015年4月3日、ジャーナリストを目指していた当時25歳の伊藤は、ある日突然、思いもよらない性暴力被害を受ける。彼女は実名を公表し、事件に立ち向かうことを決意。しかし、そこから伊藤の世界は一変する。「新聞記者」「月」などで知られるスターサンズが製作として参加。8年にわたる製作期間を経て映画が完成した。

「Black Box Diaries」メインビジュアル

「Black Box Diaries」メインビジュアル [高画質で見る]

伊藤は「この映画は日本へのラブレターだと思って作りました。性暴力の被害から本当にいろいろなことがありましたが、制作チームとさまざまなことを乗り越え、皆さんにお届けできてうれしく思っています」と語りかける。ニアリは「この作品をやっと日本で公開できる。意味があることですし、感謝しています。何より、詩織さんが日本に戻ってライフワークを続けられることを心から期待しています」とコメント。アクヴィリンは「予算のない頃から、私と詩織さんとでカメラを回していました。詩織さんを助けたい、彼女の物語を伝えなければいけないというふうに感じたんです。詩織さんが経験したことは世界中で起きている問題です。真実が語られるべき、沈黙してはいけないと、改めて感じました」と言葉に力を込めた。

伊藤詩織

伊藤詩織 [高画質で見る]

制作の過程を「葛藤の嵐、葛藤しかなかった」と振り返る伊藤。「『Black Box』という本も出版させていただいたんですが、書いていた当時はまだ民事訴訟も始まっておらず、検察審査会にもう一度事件として捜査をしてほしいと願っているときでした。自分の感情は一切入れずに、できる限りジャーナリストとして書いたんです。だからこそ、ちょっとした距離があって、自分に起きていることやトラウマから逃げられていました」と述べ、「ただそれに気付いたとき、当事者として映画の中で伝えられることはないか? 自分の内面、感情、向き合いたくないものに向き合って作ってみたい、当事者が語る映画を観てみたいと思ったんです。それが本作を製作するきっかけでした」と明かす。続けて「ジャーナリストが自分のことを語るなんてタブーです。これまで信じてきたこと、習ってきたことを一度置いて、ドキュメンタリーを学び直しました。とても苦しいことですが、450時間の映像素材があって、トラウマになっていたこと、向き合いたくないことにひたすら向き合わされました。そしてある意味整理ができたんです。自分自身が語っていく尊さをもっともっと、皆さんに届けたいと感じています」と言及する。

監督として映像を記録後、編集作業の段階ではかなり苦労したそう。「ジャーナリストとしての自分、被害者としての自分とバチバチに闘いながら、監督として1つひとつ積み上げていきました。当事者として入れたくない映像、母に見せたくないシーンもありました。でも個人としては使用したくない映像でも、監督として使用すべきかどうか判断し、編集していきました」と思い返す。そして「できたら私の名前や私が経験したことであるということを忘れていただいて、自分や大切な人に当てはめて、こんなことがあったら自分はどう動くんだろうと想像してほしいです」と呼びかけた。

映画「Black Box Diaries」公開記念舞台挨拶の様子。左からエリック・ニアリ、伊藤詩織、ハナ・アクヴィリン

映画「Black Box Diaries」公開記念舞台挨拶の様子。左からエリック・ニアリ、伊藤詩織、ハナ・アクヴィリン [高画質で見る]

なお本作は、2025年3月開催の第97回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたが、映像の無断使用をめぐって物議を醸し、これまで日本での公開は実現していなかった。伊藤は昨日12月11日に元代理人である弁護士・西廣陽子氏が映画の公開にあたり、「法的な問題は解決されていない」といった内容のコメントを発表したことに触れ、「これまでお世話になってきて、尊敬している西広弁護士や元弁護団からいろいろなご意見がありました。事実とは違うことが報道されてしまったり、一方的な情報が出回ることもありました。私は正面から対立するような形でお話はしたくないと避けてきたんです。しかし、事実ではないことは正していかなくてはいけないと思いました。どういった部分が日本バージョンで変わったのか、詳しくステートメントに書いていますので、公式サイトを参照していただけたらと思います」と伝えた。

「Black Box Diaries」日本公開にあたり2025年12月12日に公開された資料

1. 当事者として語ること「Black Box Diaries」監督ステートメント
2. 西廣陽子弁護士のステートメントについての伊藤詩織の見解
3. 防犯カメラ映像等の使用をめぐる経緯(タイムライン)
4.「Black Box Diaries(日本公開版)」に関するご報告と修正・配慮事項のご説明

Shiori Ito Official Site | Journalist

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©Star Sands , Cineric Creative , Hanashi Films

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映画ナタリー @eiga_natalie

伊藤詩織「Black Box Diaries」の編集を回想、「性暴力被害者としての自分と闘った」
https://t.co/pITfP9A9oL

彼女は舞台挨拶にて「防犯カメラ映像等の使用をめぐる経緯」など4つの資料を公式サイトで公開したこと発表した

#伊藤詩織 #BlackBoxDiaries https://t.co/w6EHMmcDjU

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