「インランド・エンパイア」裕木奈江、デヴィッド・リンチとの特別な日々を懐かしむ

デヴィッド・リンチにとって最後の長編監督作「インランド・エンパイア」4K版のメインビジュアルが解禁。あわせて同作に出演した俳優・裕木奈江からコメントが届いた。

2006年に製作された同作は、ローラ・ダーン演じるハリウッド女優ニッキー・グレースが主人公の物語。未完だったポーランド映画「47」のリメイク作「暗い明日の空の上で」への出演が決まった彼女は、やがて共演者のデヴォン・バークと映画さながらに不倫関係に陥る。そして映画の物語と自身の人生が交錯し始めたことで、ニッキーは現実と虚構の境界を失い、精神崩壊へと追い込まれていく。

メインビジュアルに切り取られたのは、強い光に照らされたニッキーの姿と、彼女の前に突如現れる判別不能な崩れた文字列「AXX°NN,」が記された壁面。「悪夢は終わらない」というコピーが添えられている。

裕木は当初エキストラとして参加する予定だったが、現場で彼女の存在に強い印象を受けたリンチが、セリフ付きの“Street Woman”役で起用することを決めたそう。裕木は「とても思い出深く、特別なものです」と同作への思いを明かしつつリンチと過ごした日々を振り返る。そして「これからも監督の作品が愛され、語り継がれていくことを願っております」とつづった。

「インランド・エンパイア 4K」は、1月9日より東京・新宿ピカデリーほか全国で順次ロードショー。ジェレミー・アイアンズ、ジャスティン・セロー、ハリー・ディーン・スタントン、ウィリアム・H・メイシー、ジュリア・オーモンド、ローラ・ハリング、ナスターシャ・キンスキー、ナオミ・ワッツも出演に名を連ねる。

裕木奈江 コメント

この度、リンチ監督の「Inland Empire」が再上映されること、心よりお祝い申し上げます。
私にとってこの作品はとても思い出深く、特別なものです。
リンチ監督のファンだった私はロサンゼルスでエキストラ募集があると聞き、撮影現場へ向かいました。現場は熱気と活気に満ちていて、本当にエキサイティングな体験でした。
撮影終了後、監督にご挨拶に伺ったところ、「また別の役があったらやってみたい？」と声をかけていただき、驚きと興奮で「もちろん！」と即答したのを覚えています。それからしばらくご連絡をいただけなかったのでもう撮影は終わったものと思っていましたが、ある日連絡が入り、ファックスで長い英語のセリフが送られてきました。
当時の私はまだ英語の勉強を始めたばかりでしたので、「私には無理だと思う」とお伝えしたのですが、監督は「アクセントが面白いからやって欲しい。とにかく全部覚えて一生懸命喋ってみて」と。巨匠に言われては仕方がないので、あの摩訶不思議なセリフを黙々と覚えました。
当時、スタッフさんからは「Web公開用の短編になる予定です」と伺っていたので、まさか3時間もの長編大作として劇場公開された時には心底驚きました。
劇場で鑑賞してさらに驚いたのは、エキストラとして参加したシーンに、一瞬ですが映り込んでいたことです。よかったら探してみてください。
日本での再上映、本当に嬉しいです。
これからも監督の作品が愛され、語り継がれていくことを願っております。

映画「インランド・エンパイア 4K」予告編